公文書改ざんと隠蔽の再発防止及び公文書等の管理に関する法律の改正を求める会長声明

「公文書改ざんと隠蔽の再発防止及び公文書等の管理に関する法律の改正を求める会長声明」

 森友学園に対する国有地売却が記録された公文書の改ざん問題等を捜査していた大阪地検特捜部は、本年5月31日、前国税庁長官らを不起訴とした。
 その後、6月4日に財務省は森友学園問題に関する省内調査結果を公表し、前国税庁長官を中心とする20名を処分するとした。
 しかしながら、公文書改ざん等をめぐる一連の問題は、一官僚や一部局の責任に限定されるものではなく、公文書の重要性を軽視する行政府全体の体質を象徴するものとして、非難されるべきである。
 フランス人権宣言第15条は、「社会は、すべての官公吏に対してその行政についての報告を求める権利を有する。」と定め、アメリカ国立公文書記録管理局本館の彫像には、「過去の遺産は将来の実りをもたらす種子」と刻まれている。
 平成21年に制定された公文書等の管理に関する法律(以下「公文書管理法」という。)第1条も、公文書は「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」であって、国は「その諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務」を負うと規定している。
 公文書の改ざんや隠蔽は、国民が共有する知的資源の破壊であり、行政府の国民に対する説明責任の不履行であって、民主主義の否定と言って過言でない。
 また、今般明らかになった一連の事態を防止できなかったことは、現行公文書管理法の限界を示すとともに、改正の必要性を意味するものである。
 公文書等の管理に関する法律施行令は、第8条2項3号で、同令別表に列挙された文書以外の保管期間の指定を各行政機関の判断に委ね、同令第12条、公文書管理法第7条1項但書は、保管期間1年未満の文書について、行政文書ファイル管理簿への記載義務を免除している。その結果、多くの重要な文書が保管期間1年未満の文書に指定され、廃棄されたか否かの調査が困難となっている。また、公文書の改ざんや、改ざんされた公文書の行使を禁止する規定は、現行公文書管理法に設けられていない。
 よって、当会は、今回のような問題が二度と起こることのないよう、徹底した原因究明をふまえ、公文書管理法を改正し、1年未満保存文書を原則として廃止するとともに、同法に基づき設置された公文書管理委員会の権限を強化し、公文書保管と管理体制の指導、標準文書保存期間及び廃棄の審査、改ざん防止のための監査等に関する強い権限を与えるよう求める。

2018年(平成30年)6月5日
   大阪弁護士会      
   会長 竹 岡  富 美 男

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