最低賃金の大幅な引上げを求める会長声明

最低賃金の大幅な引上げを求める会長声明

1 2018年(平成30年)7月26日、中央最低賃金審議会は、厚生労働大臣に対し、2018年度の地域別最低賃金額改定の目安について意見の一致をみるに至らず、全国平均で26円の引上げ(大阪府の場合27円の引上げ)を目安とする公益委員見解及び中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告を地方最低賃金審議会に提示することを内容とする答申を行った。
この公益委員見解による目安を前提にするならば、最低賃金額の全国平均は現在の848円から874円となり、大阪府の場合は、現在の909円から936円となる。

2 しかし、最低賃金を936円としても、労働者が週休2日で1日8時間(年間約2080時間)稼働して得られる年収は194万円程度で、いわゆるワーキングプアの指標となる年収200万円を依然として下回っている。
かかる賃金水準では将来のための貯蓄はおろか、現在において生活を維持することすら困難である。
 政府は、2017年(平成29年)3月28日働き方改革実現会議決定の「働き方改革実行計画」において、年率3%程度を目途に最低賃金を引き上げ、全国加重平均1000円を目指すことを目標に掲げている。今回の引上げも、上昇率3.1%と、かかる目標を意識したものと思われる。
 しかし、2010年(平成22年)6月18日閣議決定「新成長戦略」において、当時の政府は、2020年までに最低賃金の全国平均を1000円にまで引き上げるとの目標を掲げていた。最低賃金額の改定幅が、来年以降も今回の引き上げ幅と同程度で推移した場合、2020年までに全国平均1000円を達成することは不可能であるから、今回の中央最低賃金審議会答申で提示された公益委員見解による目安に縛られない最低賃金額の大幅な引上げが要求される。

3 また、日本の最低賃金額は先進諸外国と比較しても低い。例えば、オーストラリアやフランス、オランダの最低賃金は1000円を超えている。加えて、隣国の韓国においても、本年7月14日、来年の最低賃金を10.9%増の時給8350ウォン(約835円)に引き上げるとの決定が同国最低賃金委員会によってなされた。同国の最低賃金は、2010年時点での4110ウォン(約410円)からこの8年間で倍増しており、近い将来、日本の水準を上回る勢いにある。
 したがって、日本が現在のペースでしか最低賃金の引上げを行わないならば、先進諸国との差は縮まらないどころか、現状より一層広がるおそれも否定できない。

4 以上のとおり、最低賃金額の大幅な引上げは喫緊の課題であることから、大阪地方最低賃金審議会は、中央最低賃金審議会で提示された公益委員見解による目安に縛られず、大阪府の地域別最低賃金を大幅に引き上げるべきである。

2018年(平成30年)7月31日
     大阪弁護士会      
      会長 竹 岡  富 美 男

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