いわゆる「預託商法」について抜本的な法制度の見直しを求める意見書

いわゆる「預託商法」について抜本的な法制度の見直しを求める意見書

2018年(平成30年)11月27日

内閣府特命担当大臣(金融)   麻 生 太 郎  殿
内閣府特命担当大臣      宮 腰 光 寛  殿
 (消費者及び食品安全)
金融庁長官          遠 藤 俊 英  殿
消費者庁長官         岡 村 和 美  殿
内閣府消費者委員会委員長   高     巌  殿

  大阪弁護士会      
  会長 竹 岡 富美男

いわゆる「預託商法」について抜本的な法制度の見直しを求める意見書


第1 意見の趣旨
    事業者による物品の販売と、販売業者またはその関連会社が収益の配当を約して当該物品の預託を受けることが一体的に行われている形態の取引については、金融商品取引法にいう「集団投資スキーム」に該当すること並びに登録制及び行為規制の適用対象となることを明確にするよう、金融商品取引法及び関係法令を改正すべきである。

第2 意見の理由
 1預託商法規制立法の必要性
 (1)預託商法とは
   消費者が購入した商品を、販売業者またはその関連会社に預託して運用を委託し、運用に基づく配当その他の経済的利益を受ける取引である、いわゆる「預託商法」による消費者被害が続出している。
和牛、健康食品または自動販売機などを商材とした預託商法の消費者被害はこれまでにも発生しているが、近年では、回胴式遊技機、太陽光発電パネル、コンテナ、カード決済端末機などを商材とした預託商法が確認されている。
 (2)具体的被害実態
  ア 安愚楽牧場事件
    株式会社安愚楽牧場(以下「安愚楽牧場」という。)の和牛預託商法は、消費者(オーナー)が安愚楽牧場から繁殖牛を購入し、同時に、購入した繁殖牛の飼育を安愚楽牧場に預託する、毎年、購入額の3~8パーセントの利益金を受け取る、預託期間が満了すれば安愚楽牧場がオーナーから繁殖牛を購入価格と同額で買い戻すというものであった。2011年(平成23年)以降、安愚楽牧場による利益金の支払いが滞り、同社には、2011年(平成23年)12月9日に破産手続開始決定がなされた。報道によると、被害者数は約7万3000人、被害金額は約4200億円に及ぶ。
  イ ジャパンライフ事件
    ジャパンライフ株式会社(以下「ジャパンライフ」という)の「レンタルオーナー制度」は、消費者が磁気治療機器商品等を購入し、購入した消費者が購入商品を同社に預託した上で、ジャパンライフが第三者(レンタルユーザー)に賃貸することによって、消費者に賃貸料が支払われる取引であった。
    ジャパンライフは、約1年の間に4回の行政処分を受けたにもかかわらず事業を継続させたところ、2017年(平成29年)12月26日に銀行取引停止処分を受け、債権者申立てにより、2018年(平成30年)3月1日、破産手続開始決定を受けた。
    報道によれば、被害者は約7000人、被害総額は約2400億円とされている。
 (3)預託商法の危険性
  ア ペーパー商法になる危険性
安愚楽牧場事件では、消費者庁の調査により、遅くとも2007年(平成19年)3月以降、安愚楽牧場が飼養する繁殖牛の全頭数は、オーナーの持分及び共有持分を合計した数値に比して過少(比率55.9パーセントから69.5パーセント)であることが判明した。
    また、ジャパンライフ事件においては、消費者庁の調査により、ジャパンライフが預託を受けていたはずの商品の個数2万2441個のうち第三者にレンタルしていた商品の個数は2749個で、その差1万9692個はジャパンライフに存在するはずが、実際には95個しか保管されていなかったことが判明した。
    預託商法では商品を現実に引き渡さなくても売買及び預託取引が成立するため、このように、購入した商品が実在していなかったり、運用する事業の実態を欠いていたりする場合がほとんどである。すなわち、預託商法には、ペーパー商法(契約書や預かり証の交付だけで消費者に金銭を支払わせる商法)になる危険性が本来的にある。
  イ 被害の重大性
    安愚楽牧場の被害額は約4200億円、ジャパンライフの被害額は約2400億円である。
    そして、特定商品等の預託等取引契約に関する法律(以下「預託法」という)制定の契機となった豊田商事事件における破産債権額は約1100億円と言われており、いずれも1000億円を超える被害を発生させている。
    預託商法では、事業者が、預託期間の満了時に、預託物を最初の売買価格で買い戻すことを約束するのが通常であり、消費者にとっては元本保証の様相を呈する。それゆえ、消費者にとっては利回りのよい投資に映り、低金利時代にあって多くの消費者を惹き付け、甚大な被害を招いている。
 2 現行の法制度の問題点
 (1)預託法
    預託法は、豊田商事事件を契機に、当時の通商産業大臣からの「いわゆる『現物まがい商法』による被害の再発防止策のあり方いかん」との諮問に応える形で、昭和61年に制定された。
    しかしながら、預託法制定後も、安愚楽牧場事件、ジャパンライフ事件など、預託商法による大規模消費者被害事件が発生しており、預託法がこれを抑止できておらず、もはや法制度として機能しているとは言い難い。
   ア 預託法は、政令指定商品について、3か月以上の期間にわたり、政令指定商品の預託及び当該預託に関し財産上の利益を供与することを約し、契約者(消費者)がこれに応じて当該商品を預託することを約する契約を預託等取引契約と定めている。その上で、同法は、預託等取引契約に対し、①正確な情報提供(書面交付義務、業務・財務書類閲覧等)、②契約離脱権(クーリング・オフ、中途解約権)、③行為規制(不当行為の禁止)を定めているほか、行政権限として、指示対象行為の規制(同法第5条)、報告徴収・立入検査権(同法第10条)、業務停止命令・指示処分(同法第7条)といった規制を定めている。
   イ しかしながら、預託法による規制は、政令指定商品にしか及ばないことから、業者が指定商品以外の商品を利用して預託商法を行った場合には、預託法が適用されないことになる。また、登録制などの参入規制も導入されておらず、主務官庁に対する業者の定期的な報告義務等も定められていないことから、どのような業者でも預託商法を行うことができ、主務官庁が当該業者の情報を持ち合わせていないため、被害実態を把握することが困難である。
   さらに、主務官庁は、立入検査を行い、業務停止命令等を行うことができるものの、預託商法においては、消費者への配当が続いている間は、消費者は取引の実態に疑問を持つことはなく問題が顕在化しないことから、検査の端緒を掴みにくく、その結果、被害が益々増大することになる。
(2)金融商品取引法
   預託商法の実態は、消費者が事業者に出資し当該事業の収益からの配当を受領する、という投資契約であることから、金融商品取引法上の「集団投資スキーム」に該当するかが問題となる。
   「集団投資スキーム」とは、①契約形式を問わず、出資者から「金銭」又は「金銭に類するもの」(有価証券、手形、拠出した金銭の全部を充てて取得した物品)の出資・拠出を受け、②その財産を用いて事業・投資を行い、③当該事業・投資から生じる収益などを出資者に分配する仕組み(集団投資スキーム)であり、かかる仕組みに関する権利(集団投資スキーム持分)を有価証券として扱う旨定義されている(金融商品取引法第2条第2項第5号、金融商品取引法施行令第1条の3第4号、金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令第5条)。
   類型としては、金銭拠出型集団投資スキーム(出資を受けた金銭を用いて各種事業を行うもの)、有価証券拠出型集団投資スキーム(金銭の代わりに有価証券を拠出するもの)(金融商品取引法施行令第1条の3第1号から第3号)、購入物品拠出型集団投資スキーム(顧客が金銭を拠出し、事業者が顧客のために対象物品を購入し、顧客が所有する対象物品を用いて事業を行い配当する取引)(金融商品取引法施行令第1条の3第4号)が挙げられている。
   預託商法は、法形式上では、顧客が事業者から商品を購入し、これを事業者に預託するという形態であるため、上記の購入物品拠出型集団投資スキームに該当することとなる。
   しかし、現行法令では、購入物品拠出型集団投資スキームの対象として、競走用馬のみが指定されている(金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令第5条)にとどまり、これ以外の物品については規制が及んでいない。したがって、形式的に条文を解釈する限りにおいては、競走馬以外の物品を対象とする預託商法は、集団投資スキームの規制対象に該当しないことになる。
 3 具体的な方策
上記のような法の不備がある以上、一刻も早く立法措置を講じなければならない。そこで、預託商法を規制する最も簡便かつ効果的な方法として、事業者による物品の販売と、販売業者またはその関連会社が収益の配当を約して当該物品の預託を受けることが一体的に行われている形態の取引について、包括的に金融商品取引法の「集団投資スキーム」として規制し、その旨を明確化する法改正を求める。
  これは、何よりも、現在の預託商法が投資取引となっているという実態に即している上、金融商品取引法において既に整備されている各規制・制度をそのまま活用できるからである。また、法執行の強化という点で、現行の預託法の枠組みにおける規制よりも実効性が期待できる。
具体的には以下の通りである。
 (1)登録制
預託商法業者は、集団投資スキーム持分の自己募集を行う者として、第二種金融商品取引業の登録を要することとなる(金融商品取引法第29条)。
  登録審査に当たっては、当該スキームが、出資法以下の金融法制に照らし許容されるものか否かについても確認する仕組みとし、事業スキーム自体が出資法に抵触するおそれがあるような場合には登録を認めないという制度運用も可能である。悪質な預託商法では、スキーム自体が出資法に違反しており、このような商法・業者を入り口の段階で排除する運用の整備も視野に入れるべきである。
  無登録営業に対する罰則は5年以下の懲役、500万円以下の罰金(併科あり)であり、無登録で営業したということだけで摘発できるので、違反の場合は迅速な対応が可能である。
 (2)行為規制
    第二種金融商品取引業者には、顧客に対する誠実義務(金融商品取引法36条1項)、名義貸しの禁止(同法36条の3)、広告等の規制(同法第37条)、契約締結前の書面の交付(同法第37条の3)、契約締結時等の書面の交付(同法第37条の4)、断定的判断の提供の禁止(同法第38条第2号)、説明義務(同法第38条第6号、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1号)、内閣府令で定める行為の禁止(同法第38条第8号)、適合性の原則等(同法第40条)、分別管理が確保されていない場合の売買等の禁止(同法第40条の3)、金銭の流用が行われている場合の募集等の禁止(同法第40条の3の2)の各行為規制が課せられることから、被害拡大防止を期待することができる。
 (3)主務官庁による監督
    預託商法は、主務官庁による検査の端緒を掴みにくいことから、主務官庁が恒常的かつ継続的に監督していく必要がある。
    第二種金融商品取引業者に対しては、以下のとおりの監督権限が整備されていることから、主務官庁による恒常的かつ継続的な監督を行うことが可能となる。
  ア 事業年度ごとに事業報告書を提出(金融商品取引法第47条の2、金融商品取引業等に関する内閣府令第182条第1項)
第二種金融商品取引業者に対しては、少なくとも、事業年度ごとの事業報告書の提出が義務付けられており、恒常的な監督に服させることが可能となっている。なお、事業報告書の提出義務違反、虚偽の記載をした報告書の提出については、1年以下の懲役又は300万円以下の罰金(併科可能)が科せられている。
イ 報告の徴取及び検査(同法第56条の2)
本条に基づき、モニタリング調査票(①ファンド名、②業者区分、③取り扱う業務、④ファンドの形態、⑤運用期間に関する事項、⑥販売形態、⑦権利者に関する事項、⑧直近1年間の募集等の額、⑨運用財産額に関する事項、⑩純財産額に関する事項、⑪商品分類に関する事項、⑫投資対象に関する事項)の提出が求められている(金融商品取引業者向けの総合的な監督指針Ⅱ-1-1(4))
 (4)契約類型別によらない行政処分
    主務官庁による監督が機能し、金融商品取引法違反の事実が認められれば、主務官庁は、行政処分を検討することとなる。
    しかし、預託商法は、対象となる商品が多種多様であるだけでなく、形式的な契約形態も様々なものを用いることができることから、ある特定の契約形態について業務停止等の行政処分を受けたとしても、事業者は、形式上の契約形態を変更して、実質的に同じ預託商法を継続することができる(たとえば、ジャパンライフは、消費者庁から預託等取引契約や訪問販売に関して業務停止処分を受けると、形式的に契約形態を業務提供誘引販売契約に変更して預託商法を継続し、さらに、この業務提供誘引販売契約についても業務停止処分を受けると、今度は、「リース債権譲渡契約」なる名称で、同様の預託商法を継続した。)。
    預託法に基づいて契約類型別に行政処分を行うという枠組みでは、事業者が同様の事業を継続することを効果的に抑止することができない。
    預託商法を「集団投資スキーム」として金融商品取引法を適用できるのであれば、問題のある預託商法については、緊急禁止・停止命令(金融商品取引法第192条)にて一回的な処分による全面的な業務停止を行うことが可能になる。
 (5)破産申立権限
    主務官庁による検査の結果、事業者が多額の債務超過に陥っていることが判明したとしても、事業者による自己破産や債権者破産がなされなければ、事業継続及び被害の拡大を止めることが困難になる。
    預託商法が集団投資スキームに該当すれば、主務官庁による破産申立が可能となり(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第490条)、被害の拡大を防止できるほか、事業者の資産の散逸も防止することができる。
 4 結論
 よって、意見の趣旨のとおりの立法的措置が一刻も早くとられるべきである。
以上

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