被災者生活再建支援法施行令第1条の改正等を求める意見書

被災者生活再建支援法施行令第1条の改正等を求める意見書

2019年(平成31年)1月29日


内閣総理大臣  安 倍 晋 三  殿


  大阪弁護士会      
  会長 竹 岡 富美男


被災者生活再建支援法施行令第1条の改正等を求める意見書


第1 意見の趣旨
 被災者生活再建支援法を、同一の自然災害で被害を受けた被災者に平等に適用できるように、都道府県や市町村単位の被害発生の程度を適用基準としている同法施行令第1条を速やかに改正するよう求める。

第2 意見の理由
 1 被災者生活再建支援法施行令
  被災者生活再建支援制度(以下「本制度」という。)は、阪神・淡路大震災等の過去の災害から得た、住家を失った被災者への必要最小限の経済的支援がなければ生活再建と復興が困難であるとの教訓を受けて、平成10年に制定された被災者生活再建支援法に基づく制度である。その趣旨は、自然災害によりその生活基盤たる住家に著しい被害を受けた者に対し、都道府県が拠出した基金を活用して、被災者生活再建支援金を支給する措置を定めることにより、その生活の再建を支援しようとするものである。
  ところで、本制度は、その支援の対象を「政令で定める自然災害」の被災世帯とし(同法第2条第2号)、これを受けた同法施行令第1条は、都道府県や市町村単位における全壊した住宅の数等を基準に同法の適用範囲の有無を決定するという仕組みを採用している。例えば、同法施行令第1条第2号は、「自然災害により十以上の世帯の住宅が全壊する被害が発生した市町村」に同法が適用されると定めている。つまり、10世帯以上の住宅が全壊した市町村では同法が適用されるが、全壊した住宅が9世帯以下の市町村では同法が適用されないことになる。その場合、後者の市町村の被災者は、仮にその自然災害で自宅が全壊となっても本制度の支援が受けられないのである。
 2 同施行令の問題
  しかし本制度の趣旨は、上記のとおり、大規模な災害の影響を受けた個々の被災者の生活再建の支援にあるのだから、その適用は、適用の必要な大規模災害が発生した以上、全ての被災者に平等になされるべきである。現在の同法施行令の基準によれば、上記のようにその住家の存する市町村や都道府県により支援を受けられるかどうかがわかれることになるが、この差は当該地方自治体の地方自治の観点からの判断ではなく、同法施行令の技術的な定め方による「行政区画ごとの被害世帯の数」というまさに偶発的な事情によって生じているのであり、それには何の合理的な理由も存在しない。
 3 近時の災害での適用例
  実際に昨年わが国で発生した大規模災害においても、本制度の適用基準の矛盾が露呈した。
  平成30年6月18日に生じた大阪府北部地震では、大阪府の発表によると、平成30年11月2日時点での全壊の住家の数は、高槻市11棟、茨木市3棟、豊中市3棟、枚方市1棟であった。当初は高槻市の全壊住家数も10棟に満たなかったため、同地震が災害救助法の適用市町村が11にのぼる大規模災害であったにもかかわらず、本制度の適用はなされなかった。高槻市については、昨年10月23日、ようやく全壊の住宅が10棟以上となったことにより、被災者生活再建支援法の適用を受けることになったが、茨木市、豊中市及び枚方市については、全壊の住宅がこれに満たないということで同法は適用されていない。そうすると、高槻市の被災者には被災者生活再建支援金が支給されるが、茨木市、豊中市及び枚方市の被災者には支給されないことになる。被災者生活再建支援金は、住宅が全壊した場合、基礎支援金として最大100万円、加算支援金として最大200万円の給付となる。同じ大阪府北部地震の被災者であるのに、高槻市内の被災者と茨木市、豊中市及び枚方市内の被災者とで、このような格差が生じることは不平等で不合理なものであり、被災者一人一人の生活再建と復興を置き去りにするものと言わざるを得ない。
  また、平成30年7月豪雨災害において住宅全壊の被害を受けた被災者についても、大阪府下に住家があったために、本制度の適用が受けられない事態が生じている。平成30年9月26日時点において、岡山県全域、広島県全域、愛媛県全域をはじめ12府県内の88市町村で本制度が適用されているが、大阪府においても全壊1世帯の被害が生じているが(内閣府発表、平成30年10月9日時点)、同一市町村内に1世帯しかないために適用されていない。
  大阪府は、大阪府北部地震について高槻市だけに被災者生活再建支援法が適用されることになった後、同法の適用がない自治体の住民に対し、同法と同水準の支援金を支給する独自支援制度を設けることを明らかにした。しかし、国が被災者に平等に支給を行うべき制度の欠缺を地方自治体が独自制度で補うことは、その趣旨に合致しない。今後発生する災害についても常に同じ問題が生じ得るのであるから、根本的に本制度の適用範囲を見直すことによりこの問題を解決するべきであることに変わりはない。
 4 広域に被害を及ぼす災害
  近年、平成30年7月豪雨災害のような広域にわたる災害も多数発生している。広域にわたる災害が発生した場合、市町村や都道府県をまたいで被害が発生するところ、現行の被災者生活再建支援法施行令第1条の基準に基づく地方自治体間の本制度の適用の格差はさらに生じやすくなる。被災者の生活再建と復興のためには、同じ災害で同じ程度の被害を受けているのに受ける支援が異なるという事態をできる限り避けなくてはならない。これを許せば災害の被害に遭って辛い思いをしている被災者が更なる不公平感を抱くことにもなりかねないのであり、公平かつ平等な制度への改正が急務である。
 5 まとめ
  以上のことから、国は、被災者生活再建支援法に基づく本制度の適用についての同法施行令第1条を改正し、同一の自然災害で被害を受けた全ての被災者に平等に本制度を適用するように求める次第である。
  なお、同法施行令第1条を改正する際には、大阪府北部地震及び平成30年7月豪雨災害の被災者にも遡って同法を適用し、平等な支援を実現するべきである。
以 上

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