改めて少年法の適用年齢の引下げに反対する会長声明

改めて少年法の適用年齢の引下げに反対する会長声明

 現在、法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会(以下「部会」という。)において、少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすること及び非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事法の整備の在り方が審議されている。
 平成30年11月2日に開催された部会第11回会議においては、少年法適用年齢引下げの是非が集中的に議論され、かかる改正を是とする意見が多数出された。
 しかし、少年法の適用年齢を20歳未満とする現行法は堅持すべきであり、当会は、少年法の適用年齢の引下げに反対する。
 少年法は、18歳及び19歳の少年を含め、少年の健全育成や再犯の防止に積極的な役割を果たしてきた。
 すなわち、現行の少年法のもとでの科学調査(家裁調査官による調査や調整、少年鑑別所における鑑別等)、家庭裁判所による審判手続、保護観察や少年院送致等の保護処分が、少年の健全育成、再犯防止に有効に機能していることは、多方面の専門家の意見も一致しているところであり、部会においても異論は出ていない。
 さらに、現代においては、全体として少年の自立が遅れる傾向にあり、18、19歳の若者の多くは親の扶養下にあり、高校卒業後に就職したり、大学に進学したりしていたとしても、真の意味で自立しているとは言い難い。18、19歳の非行少年の更生を少年法で支援する必要性は、むしろ高まっている。
 また、現行少年法のもとで、少年非行の数は近年大きく減少しており、凶悪化もしていないことは、統計的に見て明らかである。例えば、直近の非行のピークである平成15年以降、少年による一般刑法犯の検挙人員数は減少し続け、平成29年においては、平成15年と比較して、14歳から19歳の年齢層の人口比で約78.2%も減少している。
 部会において述べられた少年法適用年齢引下げ賛成論は、主として民法の成年年齢との整合性を理由とするものであるが、歴史的経緯を見ても、少年法の適用年齢と民法の成年年齢とが一致してきたわけではない。戦前の旧少年法は18歳未満を適用年齢としていたところ、戦後に施行された現行少年法は、適用年齢を20歳未満に引き上げた。他方、民法は明治29年に制定されて以来、20歳を成年年齢としていた。
 それぞれの法律において何歳から一定の保護から離れるとするのかという点は、それぞれの法律の趣旨に従って決められるべきである。例えば、労働法の分野においては、児童、年少者、未成年者、成人の四段階に細かく区分し、その年齢ごとの心身の発達状況に応じた規制を定めている。被選挙権の資格年齢は、25歳以上又は30歳以上とされている。飲酒、喫煙及び公営ギャンブルについても、民法の成年年齢の引下げ後も、20歳の年齢区分をそのまま維持されることとなっている。
 非行をした若者を何歳まで少年法に基づき処遇するのかということも、各年齢の成熟度に応じてどこまで健全育成を志向する保護主義の対象とするのが国による若者の更生や成長の支援として妥当なのか、そして刑事政策的に有効なのかという観点から、判断すべきである。趣旨目的の異なる民法の成年年齢と一致させねばならないというのは、あまりに浅薄な議論である。
部会では、少年法適用年齢引下げと合わせて保護観察の強化等の法改正を行えば、罪を犯した18、19歳の者が罰金や執行猶予で終わった場合でも再犯防止のために手厚い処遇が可能である等との意見も述べられている。しかし、そのような手当てがなされたとしても、現行の少年法に基づく緻密な調査及び処遇選択やきめ細かい専門的な保護処分の実施等の仕組みと比較すると、更生支援策として非常に劣るものにしかならない。
 また、部会では、少年法適用年齢引下げにより再犯防止効果が後退することを避けるために、罪を犯した18、19歳の者が不起訴となった場合、事件を家庭裁判所に送致し、社会調査をなし、審判を行って保護観察等の処分を課する等の「若年者に対する新たな処分」も有力に構想されている。しかし、少年非行の専門家ではない検察官が、18、19歳の者を家庭裁判所に送致するかどうかを判断している点等、かかる構想の再犯抑止効果につき、多大な疑問がある。さらに18、19歳の者を、いったん少年法の対象外としながら、結局は20歳以上の者と別異に扱って少年審判類似の手続を設けて処分を課そうとする仕組みは、一般国民にも理解し難いし、そもそも、不起訴に終わった犯罪に関してさらに新たな処分を課すのは、行為責任の範囲を超えるものと考えざるをえず、理論的にも正当化されえないと考えられる。
 以上のとおりであるから、当会は、少年法の適用年齢の引下げに、改めて、強く反対する。

2019年(平成31年)1月29日
     大阪弁護士会      
      会長 竹 岡  富 美 男

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