死刑執行に抗議する会長声明

死刑執行に抗議する会長声明

 本日、東京拘置所及び福岡拘置所において各1名の死刑が執行された。
 今回の執行は、2018年10月に山下貴司法務大臣が就任してから2回目の執行であり、第二次安倍内閣以降としては16回目、合計38名の執行がなされたことになる。
 山下法務大臣が昨年12月27日に死刑を執行したことに対し、当会は、同日、死刑執行に抗議する声明を発表し、死刑執行の停止とともに死刑制度についての全社会的議論の場を設けること等を求めていたものであり、今回の執行は極めて遺憾である。
 今回執行された者のうち少なくとも1名は再審請求中であることが明らかとなっている。法務大臣は、再審事由があるとして再審請求を行っている者に対して、裁判所の判断を待たずに、死刑執行を命じたことになる。
 しかしながら、死刑確定事件でありながら再審無罪が確定した4件の存在は、誤判・えん罪による死刑執行の危険性が具体的現実的に存在することを示している。特に免田事件においては、第6次再審請求でようやく再審開始が決定された。再審請求を重ねていく中で新たな証拠が発見されたり、科学技術の発展により、えん罪であると判明することもある。今回の再審請求中の死刑執行は、過去の反省に立つことなく再審の可能性を無にするもので、およそ是認できない。
 当会は、死刑制度廃止の実現に向けて会内でも議論を重ねるとともに、シンポジウムを開催する等市民とともに死刑制度の問題点を検討し、死刑制度について全社会的議論を呼びかけ、死刑制度廃止の実現に向けた取り組みを進めている。
 日弁連は、死刑制度を存続させれば死刑判決を下すか否かを人が判断する以上えん罪による処刑を避けることができないこと等を理由に、2016年10月7日に開催された第59回人権擁護大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、その中で2020年までに死刑制度を廃止すること等を国に求めた。
 死刑廃止は、国際的な趨勢であり、世界で死刑を廃止し、または停止している国は、142ヶ国となっており、全世界の3分の2以上を占めている。2014年7月23日には、国連人権(自由権)規約委員会が日本政府に対し、「死刑の廃止を十分に考慮すること」との勧告を行い、また、2016年12月19日には、国連総会において、すべての死刑存置国に対し、死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の停止を求める決議が採択されている。さらに、2017年11月16日には、国連人権理事会が、日本政府に対し、死刑の廃止や一時停止、死刑囚の待遇改善を求める勧告を行っている。政府は、死刑廃止国が増加し、執行する国も減少し続けている国際的な潮流に反するとともに、国連の勧告や決議を無視して執行し続けていることになる。
 当会は、政府に対し、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、改めて死刑執行を停止し、死刑に関する情報を広く公開することを要請するのみならず、死刑制度廃止の実現に向けた全社会的議論の喚起と刑罰制度全体の見直しを行うことを求めるものである。

2019年 (令和元年) 8月2日
       大阪弁護士会      
        会長 今川  忠

ページトップへ
ページトップへ