保釈を取り消された被告人の逃走に関する会長声明

保釈を取り消された被告人の逃走に関する会長声明

 2019年10月30日および11月9日に大阪地方裁判所岸和田支部に起訴されている被告人が保釈取消決定に基づく検察庁の収容手続中に逃走する事案が発生した。
 いずれも由々しき事態であり、当会は大阪地方検察庁に対し、適切かつ即時の情報開示、厳正な検証と再発防止策の構築を求める。
 同時にこれらの事案により、保釈制度が誤解され、方向性を誤った議論がされてはならないことから、当会は本声明を発する。
 そもそも、人は無罪の推定を受けるのであり、有罪が宣告されるまで、自宅等、自己が選択した場所で自由に過ごす権利を有し、身体を拘束されるのは、例外的な場合に限られる。
 従って、人が嫌疑を受けて逮捕・勾留後、起訴された場合は、保釈請求ができる。
 裁判所は、証拠隠滅をすると疑うに足りる相当な理由がある等、法の挙げる特別な理由がない限り、保釈を認めなければならない(刑事訴訟法89条。権利保釈)。
 今回の被告人らも、証拠隠滅をすると疑うに足りる相当な理由等もなく、例外的に身体拘束される理由がないため、裁判所は刑事訴訟法に従い、保釈を認めた。
 その後、今回の被告人らは、正当な理由なく公判期日に出頭しなかったことから保釈が取り消され(刑事訴訟法96条)、保釈取消決定に基づく検察庁の収容手続中に、被告人らは逃走した。
 今般、逃亡事案が相次いだことで批判的に検証されるべきは、収容手続中に逃走を許した検察庁の態勢である。
 身体拘束は例外的な不利益処分であるにもかかわらず、わが国では長らく原則と例外が逆転し、被疑者・被告人の長期身体拘束が常態化していた。
 刑事裁判に一般市民が関わる裁判員裁判の導入から10年余を経て、近年、ようやく身体拘束の度合いが低下しつつあったところである。
 今回の逃走は、保釈決定取消後の逃走であり、今回の逃走を理由に、刑事訴訟法に従ってなされた裁判所の保釈決定が批判されてはならない。
 保釈の考慮要素に再犯可能性を加えて、戦前の保安処分のように、嫌疑事件についても未だ有罪とされたわけでもない人の身体を拘束することもあってはならない。
 今回の逃走により、保釈の在り方について、被疑者・被告人の権利を制限する方向で見直しを求める考え方があるとすれば、保釈制度を誤解し、方向性を誤った許されない議論であることを明らかにすべく、本声明を発するものである。

2019年 (令和元年) 11月19日
       大阪弁護士会      
        会長 今川  忠

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