堺市立児童自立支援施設基本計画に基づく施設整備の中断に対して再考等を求める会長声明

堺市立児童自立支援施設基本計画に基づく施設整備の中断に対して再考等を求める会長声明

 堺市は、堺市立児童自立支援施設基本構想(2012年3月)のもと、用地を取得し、堺市立児童自立支援施設基本計画(2019年1月)を策定し、造成も始まろうとしていたにもかかわらず、同年8月22日、整備費用及び運営費を理由に児童自立支援施設設置基本計画の中断を発表した。
 政令指定都市である堺市には児童自立支援施設の設置義務がある(児童福祉法第35条、同44条、同59条の4第1項、地方自治法施行令第174条の26第1項)。堺市が事務委託をしている大阪府の児童自立支援施設「大阪府立修徳学院」に、入所定員のため、堺市の子どもがすぐに入所できない状況にあり、堺市が児童自立支援施設を早期に設置する必要性が繰り返し指摘されてきた。大阪府立修徳学院に入所できない場合、堺市の子どもが、他府県市の児童自立支援施設や別種の施設(児童養護施設等)に措置される場合もある。他府県市の児童自立支援施設へ措置された場合、子どもの家庭やケースを担当する児童相談所と物理的な距離が生じるため、家庭との調整や、児童相談所の担当職員との連携が不十分となる恐れがある。別種の施設に措置された場合、施設の特性に合わない子どもの入所は、その子どもに対する適切な福祉的措置が保障できないばかりか、施設運営上の負担が生じる結果、他の子どもへの悪影響も否定できない。
 このような状況下での堺市の中断は、①児童福祉法が定める児童自立支援施設設置義務の履行を後退させ、②十分な児童の入所可能体制が確保できないまま改善策の実行を中断する判断といいうる。
 また、児童自立支援施設は、生育環境に問題がある子どもに、寮長・寮母と呼ばれる男女ペアの職員を中心とした疑似家庭的な小規模寮での生活を通じて、普遍的な家庭的経験をさせ、育ち直しや立ち直り、社会的自立に向けた支援を実施する施設であり、近時の児童虐待の認知・対応件数の増加に伴い、その重要性は高まっている。それにもかかわらず、児童自立支援施設が設置されず入所できないことになれば、生育環境に問題のある子どもが、育ち直しの機会を逸することにより、将来に渡り、子ども自身及びその周囲へ及ぶ影響が出現することになるのであり、コスト計算による判断は本質を見誤る危惧がある。2019年8月22日の堺市長の会見では、児童虐待問題に対応するため、児童福祉司等の人員配置の増加にも触れられたが、そうであれば、虐待され、保護された子どもの受入れ・養育の体制も同時に整える必要がある。
 そこで当会は、地方公共団体が子どもの育成において重要な責任を負っていること(児童福祉法第2条3項)を改めて指摘し、堺市に対し、児童自立支援施設設置計画の中断に対する再考及び子どもの受入体制の改善策の早期検討・実施を求める。

2019年 (令和元年) 11月19日
       大阪弁護士会      
        会長 今川  忠

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