公益通報者保護法改正案に対する会長声明

公益通報者保護法改正案に対する会長声明

 公益通報者保護制度の見直しに関し、当会においては、平成15年8月から同31年3月までに6件の意見書を発出してきたところであるが、令和2年3月6日、公益通報者保護法(以下「本法」という。)の改正案(以下「本改正案」という。)が今国会に提出され、現在審議中である。
 本改正案は、次の点において一定の評価をすることができる。すなわち、保護される通報者の範囲に退職者及び役員を含めた点、保護される通報対象の範囲に行政罰の対象となる違法行為を追加した点、本法第3条第1項2号に定める通報の要件をいわゆる「真実相当性」がない場合も保護するとした点、同項3号に定める通報の要件として、同項1号の通報をすれば通報者の特定につながる情報を故意に漏らすと信じるに足る相当の理由がある場合や個人の財産に対する損害の発生やその発生する急迫した危険があると信じるに足る相当な理由がある場合を追加した点、内部通報体制整備を義務付け、その実効性を担保するため事業者に対する行政措置を講じるとした点、公益通報対応業務従事者に対し罰則付きの守秘義務を課した点、通報者に対し通報を理由とした損害賠償責任を負わせないとした点等について、本法の実効性をより高める改正内容であると評価しうる。
 他方で、本法の実効性をさらに確固たるものとして、事業者の法令遵守を一層推進し、国民の安全・安心を確保するためには、本改正案において、今国会を含め今後なおも検討されなければならない課題が残っている。すなわち、本改正案においては通報を理由として通報者に不利益取扱いをした事業者に対する行政措置の導入をしなかったこと、通報者として保護される退職者に限定を加えたこと、通報者として保護される役員に調査是正措置の前置を義務付けたこと、通報者の範囲に取引先事業者等を含めなかったこと、通報対象事実を広く「法令違反行為」としなかったこと、解雇その他の不利益取扱いが公益通報とは別の理由でなされたことに関する立証責任を事業者側に負わせることにしなかったこと等の点である。
 よって、当会は、上記指摘した本改正案においてなおも残る課題につき、今国会を含め引き続き審議・検討されることを前提として、本改正案が早期に成立することを期待するものである。

2020年 (令和2年) 3月27日
       大阪弁護士会      
        会長 今川  忠

ページトップへ
ページトップへ