新型コロナウイルス感染拡大によって生じた生活困窮を真に一時的なものとするための暫定的措置として、生活保護制度及び住居確保給付金制度の要件緩和と積極的活用を求める会長声明

新型コロナウイルス感染拡大によって生じた生活困窮を真に一時的なものとするための暫定的措置として、生活保護制度及び住居確保給付金制度の要件緩和と積極的活用を求める会長声明

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言と外出・営業の自粛要請がなされ、勤務先の休業等により仕事や収入を失った労働者、取引をキャンセルされたフリーランサー、廃業の危機に直面する自営業者など生活が困窮する人や家賃支払いが困難となる人が増加している。アルバイト収入や親からの仕送りの減少によって学業継続が困難となっている大学生・専門学校生、また、外国人技能実習生を含む外国人等も同じ問題に直面している。緊急事態宣言が終結しても引き続き外出・営業の自粛が求められるであろうことから、今後このような問題に苦しむ人が一層増えることも予想される。
 当会は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出・営業の自粛要請等により生活が困窮する人及び家賃支払いが困難となる人を支援するため、生活保護法に基づく生活保護制度及び生活困窮者自立支援法に基づく住居確保給付金制度の要件・運用を緩和し、両制度の積極的活用を求めるものである。

1 生活保護制度の積極的活用
 生活保護法は、生活困窮者が利用しうる資産・能力などを活用しても最低生活を維持することができない場合に生活保護制度を利用でき、その基準は厚生労働大臣が定めるとし、法律上、社会的状況に応じた柔軟な運用が可能である。現在は厚生労働省の通知により厳しい資産要件や扶養義務者に対する調査等の高い障壁があるため、いったん生活保護を開始すると元の生活に戻ることは極めて困難である。しかし、新型コロナウイルス感染拡大による生活困窮者は一時的な保護さえあれば急場を凌ぐことができ、収束後は元の生活に戻ることが十分期待できる。
 また、平常時においても生活保護制度についての誤解や偏見のため、受給申請することに躊躇する人が少なくないところ、新型コロナウイルス感染拡大によって一時的な生活困窮状態に陥っている人にとっては生活保護申請に高い心理的障壁が存在すると思われる。
 現下の緊急事態においては、厚生労働省及び各地方自治体において、これらの誤解や偏見を排除し、心理的障壁を払拭し、生活保護制度の積極的利用を促すための広報に努めることが必要である。
 当会は、厚生労働大臣及び自治体に対し、これらの広報と申請者の心理的障壁を除去するよう努めることを求めるとともに、これらの生活困窮者を支援し、この生活困窮を真に一時的なものとするため、以下について生活保護制度の要件・運用を緩和し、同制度を積極に活用することを求める。
(1) 持続化給付金と同様、生活保護制度のウェブ申請を可能とすること。
(2) 緊急事態期間中及び終了後一定期間は生活保護法4条3項の「急迫した事由」が認められるとして収入基準の審査のみで保護開始の判定を行うこと。
(3) 保護開始時の現金・預貯金について少なくとも最低生活費3か月分までは保有を認めること。
(4) 住宅ローンや自動車保有に関しても感染拡大が収束するまでの期間は原則として保護開始を否定する要件としないこと。
(5) 一定の在留資格を有する外国人についてのみ生活保護法の準用を認める運用を改め、現在母国に容易に帰国できない状況に鑑み在留資格の有無・内容にかかわらず同法の準用を認めること。
(6) 扶養義務者の扶養能力調査は申請者からの聴取に基づき「明らかに扶養義務の履行が期待できる者」についてのみ調査を行うこととし、その他の者の調査は省略すること。
(7) 住居のない要保護者について、ケアセンター、無料・低額宿泊所等の個室のない集団施設に入所させる運用を改め、住居を確保して保護する居宅保護を行うこと。居宅確保までの一時的居場所としても生活困窮者自立支援法に基づく一時生活支援事業として契約ホテル等の個室を提供すること。

2 住居確保給付金制度の積極的活用
 生活困窮者自立支援法は、生活困窮者の家賃を支援するために住居確保給付金制度を設けている。同制度は極めて厳しい要件のため利用は低迷してきたが、2020年4月1日から65歳未満との要件が撤廃され、同月20日から離職後2年以内の者だけでなく収入が減少した者も支給対象とされ、同月30日からハローワークへの求職申込みという要件が外されるなど要件緩和がなされておりそれ自体は評価すべきである。しかし、現下の緊急事態に対しては不十分であり、また、要件審査の負担のため相談窓口がパンクするなど現場に過度の負担と混乱をもたらしている。このような状況に鑑み、当会は、新型コロナウイルス感染拡大によって家賃支払いが困難となる人を支援するため、以下について住居確保給付金制度の要件・運用を緩和し、同制度を積極的に活用することを求める。
(1) 現在の2年以内の離職又は減収という要件に関し、要件緩和に伴い窓口に相談者が殺到する一方、資料確保・提出や審査負担が以前より増加し給付金支給が遅滞している現状に鑑み、生活困窮者自立支援法3条3項の「離職又はこれに準ずるもの」、「就職を容易にするため」との要件及び厚生労働省令の「熱心に求職活動を行うこと」との要件の適用を暫定的に中止し、また、アルバイト収入や親からの仕送りの減少によって学業の継続が困難となっている大学生・専門学校生・外国人技能実習生を含む外国人等を明確に支援の対象とするため「離職等の前に主たる生計維持者であったこと」との要件の適用も暫定的に中止するべきである。
(2) 現在の収入基準は、大阪市の場合、単身世帯で12万4000円以下、2人世帯で17万8000円以下であり、緊急事態下で家賃支払いが困難となる人の大部分が対象から外れると考えられる。支給金額の上限も生活保護の住宅扶助特別基準と同額(例えば大阪市の場合、単身世帯で4万円、2人世帯で4万8000円)であり、家賃全額をまかなえないだけでなく、不足分を自力で用意できずに住居を失う世帯が多数生じることが想定される。収入基準及び支給上限は少なくとも現行の1.3倍以上とし、特に母子家庭、複数世帯の保護については更に拡充するべきである。
(3) 求職者支援法に基づく職業訓練受講給付金との併給を認めない厚生労働省令に関しては、新型コロナウイルス感染拡大の収束後、職業訓練によって新たな技能を身に着けより良い再就職を果たす機会を奪いかねないため、廃止するべきである。

2020年 (令和2年) 5月12日
       大阪弁護士会      
        会長 川下  清

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