大阪府地域別最低賃金の引上げを求める会長声明

大阪府地域別最低賃金の引上げを求める会長声明

1 本年7月22日、中央最低賃金審議会は、厚生労働大臣に対し、2020年度地域別最低賃金額改定の目安については、その金額について意見の一致をみるに至らなかったと答申した。同審議会の目安に関する小委員会の公益委員は、新型コロナウイルス感染症拡大による現下の経済・雇用・労働者の生活への影響、中小企業・小規模事業者が置かれている厳しい状況、今後の感染症の動向の不透明さ、こうした中でも雇用の維持が最優先であること等を踏まえ、引上げ額の目安を示すことは困難であり、現行水準を維持することが適当との見解を公表した。同審議会が引上げ額の目安を示さなかったのは、世界規模の金融危機が生じた直後の2009年度以来である。
2 新型コロナウイルス感染症拡大により経営難に直面している事業者もあり、今後も感染者の数が再び増加し、営業自粛や事業の縮小等を余儀なくされるおそれもあるため、特に、中小企業において最低賃金の引上げについて不安が存在することは否定できない。
 しかし、最低賃金の引上げは、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与するという最低賃金法の立法目的から検討すべきであり、中小企業の経営対策と二者択一的に論じる問題ではない。新型コロナウイルス感染症拡大の影響は、中小企業に限らず労働者にも及んでおり、多くの労働者が職を失い、日々の生活に窮している。労働者の生活苦の背景には、これまでの低水準な賃金では今回のような事態に備えるだけの十分な貯蓄を形成できなかったという事実が存在する。
 よって、減税や各種補助金制度の拡充等により中小企業の支援を図り雇用を維持させるだけでなく、最低賃金の引上げによって、賃金水準を改善し、労働者の生活の安定も図るべきであり、そのためにも、各都道府県の地方最低賃金審議会は、中央最低賃金審議会の答申に縛られず、各地域の実情を踏まえた上で、最低賃金の引上げを検討するべきである。
3 大阪府においては、現行の大阪府最低賃金(時給964円)ではフルタイム(1日8時間、1月約173時間、1年約2076時間)で稼働しても、月収約16万円、年収約200万円にしかならない。この賃金水準では、生活を維持していくのは困難であり、大阪府において最低賃金引上げによる生活水準改善の必要性は大きい。新型コロナウイルス感染症の脅威下であっても、最低賃金の引上げは喫緊の課題であることから、当会は大阪地方最低賃金審議会に対し、地域別最低賃金の引上げを求めるものである。

2020年 (令和2年) 8月3日
        大阪弁護士会      
         会長 川下  清

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