関西電力大飯原発の設置変更許可処分取消判決に対する会長声明

関西電力大飯原発の設置変更許可処分取消判決に対する会長声明

 本年12月4日、大阪地方裁判所第2民事部は、原子力規制委員会が行った関西電力大飯発電所3号機及び4号機(以下「大飯原発」という。)の設置変更許可処分を取り消す判決(以下「本判決」という。)を言い渡した。
 本判決は、伊方原発訴訟の最高裁判決(1992年10月29日)の判断枠組みに依拠して、東京電力福島第一原子力発電所の事故(以下「東電原発事故」という。)後に改定された新規制基準に基づく大飯原発の設置変更許可について、骨子、以下のように判断したものである。
 事業者である関西電力は、大飯原発の設置変更許可申請において、原発の耐震性判断に必要な地震を想定する際、地質調査結果等に基づき設定した震源断層面積を経験式に当てはめて計算した平均値としての地震規模をそのまま用いたが、新規制基準は、経験式による想定を超える規模の地震が発生し得ることを考慮しなければならないとしていたから、新規制基準に基づき基準となる地震動を想定する際には、少なくとも経験式による想定に上乗せする必要があるか否かを検討する必要があった。ところが、処分庁である原子力規制委員会は、そのような要否自体を検討することなく、上記申請を許可した。このような原子力規制委員会の調査審議及び判断過程には、看過し難い過誤、欠落があると認められるから、原子力規制委員会の判断に不合理な点があるものとして、その判断に基づく許可処分は違法である。
 当会は、これまでにも大飯原発の再稼働や運転に反対する旨の会長声明を発出してきた(2012年4月24日付「関西電力大飯原子力発電所の拙速な再稼働に反対する会長声明」、2013年4月16日付「関西電力大飯原子力発電所の運転差止め仮処分決定に対する会長声明」など)。本判決は、東電原発事故後に改定された新規制基準に基づく原子力規制委員会の審査を違法と判断し、原発設置許可を取り消す初めての司法判断であり、前述のとおり、過誤、欠落のある調査審議の結果、設置が許可された大飯原発の安全性に対して重大な疑問を突きつけるものである。原子力規制委員会は、本判決を深刻かつ真摯に受け入れるべきである。
 当会は、原子力規制委員会に対して、大飯原発に関する基準地震動に関する審査内容を、本判決が指摘した点を踏まえて全面的に見直すと共に、その見直しがなされるまでは、大飯原発の設置変更許可の効力を職権にて停止することを求める。また、政府に対しては、現状点検のために停止している大飯原発について、本判決の趣旨を踏まえて引き続き停止することを強く求める。

2020年 (令和2年)12月25日
        大阪弁護士会      
         会長 川下  清

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