最低賃金の大幅な引上げを求める会長声明

最低賃金の大幅な引上げを求める会長声明

1 本年7月頃、中央最低賃金審議会は、厚生労働大臣に対し、2021年度(令和3年度)地域別最低賃金額改定の目安について答申を行う予定である。毎年、同審議会の答申に基づき、全国の地域別最低賃金審議会が地域別最低賃金の改定額を答申し、これを受けて都道府県労働局長が改定額を決定する。昨年7月21日、中央最低賃金審議会は、「その金額に関し意見の一致をみるに至らなかった」とし、世界的規模の金融危機が生じた直後の2009年度(平成21年度)と同様に、最低賃金の引上げ額の目安を示さなかった。その結果、昨年度の各地域別最低賃金は、1円ないし3円の範囲内での少額の引上げに留まり、大阪府を含む7都道府県については、地域別最低賃金額の引上げ自体が行われなかった。

2 昨年、中央最低賃金審議会が引上げ額の目安を示さなかった背景には、新型コロナウイルス感染症拡大が続く中での今後の経済の見通しの不透明さや、中小企業・小規模事業者が置かれている厳しい状況等を考慮して、小委員会の公益委員が「引上げ額の目安を示すことは困難であり、現行水準を維持することが適当」との見解を公表したという事情が存在する。

3 しかし、コロナ禍においては、労働者の多くが、勤務先の休業や失職により日々の生活に窮しており、仮に就労できたとしても、現在の低水準な賃金では、その状況から脱することも困難であるという事情も看過できない。特に、社会機能の維持に必要な医療・生産・物流等に従事する「エッセンシャルワーカー」の中には、最低賃金に近い水準で働く者も少なくなく、当該労働者の待遇を改善し人材不足の問題を解消することは、社会全体の利益という観点からも急務といえる。

4 現在、ワクチン接種が急速に進められるなど、コロナ禍の収束に向けた具体的取組みが始まっており、先行きの不透明さから中央最低賃金審議会が引上げ額の目安を示さなかった昨年度とは、前提とする事情が異なる。
したがって、政府が、令和3年6月18日付閣議決定「経済財政運営と改革の基本方針2021」で示すように、生産性向上等に取り組む中小企業への支援強化、下請取引の適正化、金融支援等に一層取り組んだ上で、より早期に全国加重平均1000円を実現するために、最低賃金の大幅な引上げを行うべきである。

5 以上のとおり、コロナ禍においても、最低賃金引上げは喫緊の課題であることから、当会は、中央最低賃金審議会に対し、全国加重平均1000円を実現できるよう大幅な引上げを内容とする答申をすることを求めるとともに、大阪地方最低賃金審議会に対しても、中央最低賃金審議会の提示する目安に縛られず、大阪府の最低賃金を大幅に引き上げることを求める。

 2021年 (令和3年) 7月6日
       大阪弁護士会      
         会長 田中  宏

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