「新たな訴訟手続」の新設に反対する会長声明

「新たな訴訟手続」の新設に反対する会長声明

「新たな訴訟手続」の新設に反対する会長声明

1 法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会(以下「法制審部会」という。)は、令和3年2月に発表した中間試案において、「新たな訴訟手続」について甲案、乙案の制度案と、いずれの制度も新設しないとする丙案を提案した。当会は、令和3年4月30日付「『民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案』に関する意見募集に対する意見書」(以下「当会意見書」という。)において、いずれの制度も設けないとする丙案に賛成する旨の意見を表明した。
2 法制審部会は、令和3年10月15日に新たな制度案(以下「本制度案」という。)を提案した。
 本制度案は、当事者双方が新たな訴訟手続の申述(又は同意)をして裁判所が決定をしたときは、2週間以内に最初の期日を指定し、そこから6か月(又はそれより短い期間)で審理を終結する訴訟手続としている。
 本制度案についても以下に述べるとおりの問題があり、当会は、あらためて、「新たな訴訟手続」の新設に反対する。
3 本制度案は、一定の事件類型や手持ち証拠が既に十分な事案を想定するが、当会意見書においても指摘したように、そのような事案は現行法の下でも比較的短期間で解決が可能であり、本制度を新設するニーズ自体にそもそも疑問がある。
以上のほか、本制度案は、とりわけ以下の点について、大きな問題があるといわざるを得ない。
 (1) 審理期間を6ヶ月以内と法定するものであり、これにより、主張、証拠の提出機会が事実上制限される事案が生じることが想定され、相当でない。
 (2) いわゆる本人訴訟においても、この手続の利用を認めるが、訴訟制度の知識、経験のない本人が、主張や立証が事実上制限される新たな訴訟手続の選択や遂行を適切に行うことは困難であり、不利益をうける当事者が現れることが想定され、司法に対する信頼も失墜しかねない。
 (3) 判決書には、事実の要点及び主要な争点についての理由を記載するとして、判決書を簡略化することとなっている。非訟手続の場合は判決に比べて簡略なものでよいとされるが、本制度は訴訟手続であるから、迅速化を理由として判決書を簡略化することは認められない。
4 裁判の迅速化は重要な課題であるが、そのためには、情報や証拠の収集方法の拡充こそが求められるべきであって、民事裁判のIT化と直接の関係がない訴訟制度が拙速に新設されるようなことがあってはならない。
5 以上より、当会は、「新たな訴訟手続」の新設の提案に反対するものである。
                               

 2021年(令和3年)12月7日
       大阪弁護士会      
         会長 田中  宏

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