令和3年12月17日大阪市北区曽根崎新地で発生した放火事件の報道に関する会長声明

令和3年12月17日大阪市北区曽根崎新地で発生した放火事件の報道に関する会長声明

 本年12月17日午前、大阪市北区曽根崎新地所在のビル内で、24人の方が死亡される放火事件が発生しました。
 突然命を奪われた被害者の方々の御冥福をお祈りし、ご遺族の方々に心より哀悼の意を表するとともに、身体や心に深い傷を負われた被害者の方々に心よりお見舞いを申し上げます。

 本件においては、これまでに一部報道において、一部の被害者の方々の実名が公表されました。
 この度の突然の事件に遭遇し、巻き込まれ、亡くなられた被害者の無念は想像を絶するものであり、遺族は、突然家族を亡くすという事態に直面し、混乱し、現実を受け入れることが困難な状況にあると思われます。さらに、現在も医療機関で治療中の被害者もおられ、その家族も被害者の回復だけを祈っている状況です。
 報道機関におかれては、このような被害者及びその遺族・家族の置かれた状況に十分に配慮し、被害者の実名の報道及びSNS上の被害者に関する情報と被害者を結びつけるような報道を差し控えるとともに、被害者及びその遺族・家族に直接接触する方法での取材及び自宅の近隣や職場への取材については、時期や態様等に慎重な配慮をされるよう要請します。

 もちろん、報道の自由、国民の知る権利は日本国憲法で保障された重要な自由・権利です。
 しかしながら、そのような自由・権利の実現も無制限に許されるものではなく、とりわけ被害者の実名の報道や被害者及びその遺族・家族への取材は、被害者及びその遺族・家族の名誉や生活の平穏、プライバシーを侵害し、回復困難な二次被害を招来するおそれが高いものです。
 平成16年に成立した犯罪被害者等基本法は、前文において、「犯罪被害者等の多くは、これまでその権利が尊重されてきたとは言い難いばかりか、十分な支援を受けられず、社会において孤立することを余儀なくされてきた。」、「犯罪等による直接的な被害にとどまらず、その後も副次的な被害に苦しめられることも少なくなかった。」と定めています。これは、犯罪被害者が、十分な支援を受けることができない上、被害直後から、報道機関からの取材攻勢を受け、また、私的な事項を明らかにされることで、心身ともに疲弊してきた歴史を踏まえたものです。
 当会は、報道機関が、このような歴史的経緯及び犯罪被害者等基本法の精神を十分に尊重し、被害者及びその遺族・家族に対し、その名誉や生活の平穏、プライバシーを害することのないよう慎重な対応を求めます。

 2021年(令和3年)12月20日
       大阪弁護士会      
         会長 田中  宏

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