死刑執行に抗議し、死刑制度の廃止を求める会長声明

死刑執行に抗議し、死刑制度の廃止を求める会長声明

 本日、東京拘置所において2名、大阪拘置所において1名(合計3名)の死刑が執行された。
 今回の執行は、2021年10月に古川禎久法務大臣が就任してからわずか2か月余りしか経過していない段階での執行であり、岸田内閣としては初めての執行がなされたことになる。また、2019年12月に1名の死刑が執行されて以降2年ぶりの執行である。
 これまでも死刑の執行がなされる度に、当会は、死刑執行に抗議する声明を発表し、死刑執行の停止とともに死刑制度についての全社会的議論の場を設けること等を求めていたものであり、大臣就任2か月余りしか経過していない段階での今回の執行は極めて遺憾である。
 当会は、死刑制度廃止の実現に向けて会内でも議論を重ねるとともに、シンポジウムを開催する等市民とともに死刑制度の問題点を検討し、死刑制度について全社会的議論を呼びかけ、死刑制度廃止の実現に向けた取り組みを進めている。また、2019年12月9日には、すべての人には生命に対する権利が保障される必要があり、また、えん罪により死刑が執行されてしまうと取り返しがつかないことから死刑制度は廃止されるべきであるとの理由で、政府と国会に対し、(1)死刑制度を廃止すること(2)死刑制度の廃止までの間、死刑の執行を停止することを求める総会決議を行ったところである。
 日弁連においても、死刑制度を存続させれば死刑判決を下すか否かを人が判断する以上えん罪による処刑を避けることができないこと等を理由に、2016年10月7日に開催された第59回人権擁護大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、その中で死刑制度を廃止すること等を国に求めた。
 死刑廃止は、国際的な趨勢であり、世界で死刑を廃止し、または停止している国は、144か国となっており、全世界の3分の2以上を占めている。2018年12月17日、国連総会は、死刑廃止を視野に入れた死刑執行停止を求める決議案を賛成121か国、反対35か国(日本を含む)、棄権32か国の圧倒的多数決で採択した。国連の決議は今回で7度目であり、支持国は着実に増えている。さらに、日本は、国連の自由権規約委員会の最終見解(1993年、1998年、2008年、2014年)及び拷問禁止委員会の最終見解(2007年、2013年)や人権理事会によるUPR(普遍的・定期的レビュー)(2008年、2012年、2017年)において、死刑執行を停止し、死刑廃止を前向きに検討するべきである等との勧告を受け続けており、国際的に孤立しつつある。政府は、死刑廃止国が増加し、執行する国も減少し続けている国際的な潮流に反するとともに、国連の勧告や決議を無視して執行し続けていることになる。
 当会は、政府に対し、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、改めて死刑執行を停止し、死刑に関する情報を広く公開することを要請するのみならず、すべての人には生命に対する権利が保障されるべきであり、えん罪によって誤って生命がはく奪されることを防止するために、死刑制度を廃止することを求めるものである。

 2021年(令和3年)12月21日
       大阪弁護士会      
         会長 田中  宏

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