「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案」に対する会長声明

「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案」に対する会長声明

 2022年(令和4年)3月1日、消費者契約法等の一部を改正する標記の法律案(以下「本改正案」という。)について閣議決定がなされた。
 本改正案のうち、消費者契約法の改正に関する部分は、超高齢者社会の益々の進展やオンライン取引の急速な拡大など環境の変化を背景として、2018年(平成30年)の消費者契約法改正の前提となった消費者委員会の答申(2017年(平成29年)8月)に付言された喫緊の課題や、同改正に際しての衆議院・参議院の消費者問題に関する特別委員会における附帯決議に具体的に応えるために、消費者契約に関する検討会(以下「本検討会」という。)が約1年9か月、合計23回の検討を経て2021年(令和3年)9月に取りまとめた報告書(以下「検討会報告書」という。)を受けたものである。
 しかし、本改正案には、検討会報告書が法制化を求めた、困惑類型の受け皿となる脱法防止規定や、高齢者、若年成人、障がい者等の知識・経験・判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して、事業者が消費者を勧誘した場合における取消権の規定(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)は盛り込まれていない。また、検討会報告書では、無効となる契約条項として、いわゆるサルベージ条項により消費者の賠償請求を抑制するおそれがある不明確な免責条項、所有権を放棄することとみなす条項、及び、消費者の解約権を制限する条項の3つが提案されていたが、本改正案には、これらのうち消費者の賠償請求を抑制するおそれがある不明確な免責条項を無効とする旨の規定のみが盛り込まれたにすぎない。さらに、平均的損害についての立証責任の負担軽減策についても、検討会報告書が求めた積極否認の特則の導入が見送られているなど、本改正案は本検討会の役割や存在意義を軽視するものである。
 また、当会においても、最低限、検討会報告書で提案されていた規定を設けることを求めていたところであるが(2021年(令和3年)10月13日付け「消費者契約に関する検討会報告書」に関する意見募集(パブリックコメント)に対する意見書)、高齢者、若年成人、障がい者等の消費者被害の現状に照らせば、本改正案では不十分というほかはない。
 本改正案の国会審議にあたっては、検討会報告書及び当会の意見の趣旨を十分に踏まえた審議・改正をされるよう求める。

2022年(令和4年)3月11日
          大阪弁護士会      
           会長 田中  宏

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