旧優生保護法国家賠償請求訴訟東京高等裁判所判決を踏まえ、改めて被害者の全面的救済を求める会長声明

旧優生保護法国家賠償請求訴訟東京高等裁判所判決を踏まえ、改めて被害者の全面的救済を求める会長声明

 2022年(令和4年)3月11日、東京高等裁判所第12民事部は、旧優生保護法に基づいてなされた優生手術等に対する国家賠償請求の控訴審で、原判決を変更し、控訴人に対し、損害賠償を命ずる判決(以下、「本判決」)を言い渡した。
 先日の大阪高等裁判所での判決に続いて、時の経過という一事をもって、国が賠償責任を免れ、被害者の権利を消滅させることは、被害者に生じた被害の重大性に照らしても、著しく正義・公平の理念に反するとして、優生手術の実施による不法行為に基づく損害賠償請求については、除斥期間の適用を制限し、国の損害賠償責任を認めたものである。さらに本判決は、一時金支給法の施行日である平成31年4月24日から5年間が経過するまでは、除斥期間の効果が生じないものとしており、少数弱者の人権を擁護し被害者の救済をはかるという司法府としての責務を果たすために、さらに一歩踏み込んだ判決と高く評価できる。
 国としては、損害賠償を命ずる司法府の連続した判断を真摯に重く受け止め、今こそ、立法府・行政府としての責務を果たすべきである。
 国に対しては、本判決について上告をせず、速やかに確定させること、及び全国で係属している同種訴訟においても、本判決の判断を尊重しての早期解決を図ることを求める。
 併せて、旧優生保護法による被害者らの多くが、現在でもなお、差別や偏見等を解消するための十分な措置が執られているとは言い難い社会情勢の中で、訴訟提起の前提となる情報や相談機会へのアクセスが著しく困難な状況にあることを踏まえ、すべての旧優生保護法による被害者への十分な救済を図るための立法的措置を講ずるとともに、十分な情報や相談機会へのアクセスを保障するための迅速かつ積極的な措置を講じることを求める。
 当会としても、旧優生保護法の被害にあった人たちが、誰一人取り残されることなく十分な救済が受けられるよう、情報の提供や相談機会を確保するなど、今後も全力で取り組む所存である。

以上


2022年(令和4年)3月15日
          大阪弁護士会      
           会長 田中  宏

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