死刑執行に強く抗議し、死刑制度の廃止を求める会長声明

死刑執行に強く抗議し、死刑制度の廃止を求める会長声明

 昨日、東京拘置所において1名の死刑が執行された。
 今回の執行は、2021年12月に3名の死刑が執行されて以降、岸田内閣における古川禎久法務大臣のもとでは2度目の執行である。
 これまでも死刑の執行がなされる度に、当会は、死刑執行に抗議する声明を発表し、死刑執行の停止とともに死刑制度についての全社会的議論の場を設けること等を求めていたものであり、今回の執行は極めて遺憾である。
 当会は、死刑制度廃止の実現に向けて会内でも議論を重ねるとともに、シンポジウムを開催する等市民とともに死刑制度の問題点を検討し、死刑制度について全社会的議論を呼びかけ、死刑制度廃止の実現に向けた取り組みを進めている。また、2019年12月9日には、すべての人には生命に対する権利が保障される必要があり、また、えん罪により死刑が執行されてしまうと取り返しがつかないことから死刑制度は廃止されるべきであるとの理由で、政府と国会に対し、(1)死刑制度を廃止すること(2)死刑制度の廃止までの間、死刑の執行を停止することを求める総会決議を行ったところである。
 日弁連においても、死刑判決を下すか否かを人が判断する以上、死刑制度を存続させればえん罪による処刑を避けることができないこと等を理由に、2016年10月7日に開催された第59回人権擁護大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、その中で死刑制度を廃止すること等を国に求めている。
 死刑廃止は、国際的な趨勢であり、世界で死刑を廃止し、または停止している国は144か国となっており、これは全世界の3分の2以上を占めている。2020年12月16日、国連総会は、死刑廃止を視野に入れた死刑執行停止を求める決議案を賛成123か国、反対38か国(日本を含む)の圧倒的多数決で採択した。国連の決議は2007年以降2年に1度の間隔でなされており、支持国は着実に増えているが、日本は一貫して決議に反対をし続けている。さらに、日本は、国連の自由権規約委員会の最終見解及び拷問禁止委員会の最終見解や人権理事会によるUPR(普遍的・定期的レビュー)において、死刑執行を停止し、死刑廃止を前向きに検討するべきである等との勧告を何回も受け続けている。政府は、死刑廃止国が増加し、執行する国も減少し続けている国際的な潮流に反するとともに、国連の勧告や決議を無視して死刑を執行し続けていることになり、日本は国際的に孤立しつつある。
 当会は、政府に対し、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、改めて死刑執行を停止し、死刑に関する情報を広く公開することを要請するのみならず、すべての人には生命に対する権利が保障されるべきであり、えん罪によって誤って生命がはく奪されることを防止するために、死刑制度を廃止することを求めるものである。

2022年(令和4年)7月27日
          大阪弁護士会      
          会長 福 田 健 次

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