改めてカジノ解禁に反対するとともに特定複合観光施設区域整備計画認定手続において公正かつ厳格な審査を求める会長声明

改めてカジノ解禁に反対するとともに特定複合観光施設区域整備計画認定手続において公正かつ厳格な審査を求める会長声明

 当会は、これまで、カジノ解禁には暴力団対策上の問題、マネー・ロンダリング対策の問題、ギャンブル依存症患者の拡大、多重債務問題再燃の危険性、青少年の健全育成への悪影響等、多数の弊害があること等を理由に一貫してカジノ解禁ひいては特定複合観光施設区域整備法(以下「カジノ解禁実施法」という。)について反対意見を表明してきた。
 カジノ解禁実施法施行後に定められたカジノ管理委員会規則等の規定の制定などによっても、上記各懸念が払拭されているとは到底言い難い。また、カジノ解禁実施法施行後もカジノ解禁を懸念する声は依然として大きい。
 令和4年4月27日、カジノ解禁実施法に基づき大阪府から国土交通省に対し、特定複合観光施設区域整備計画(以下「整備計画」という。)が提出された。
 大阪府の整備計画については、府議会・市会の議決を経て提出されたものではあるものの、市民からは、前述の各懸念に加えて、立地する土壌問題に起因して発生が見込まれる自治体の多額の費用負担をはじめ想定されている計画の実現可能性等様々な点から疑問が示されている状況である。
 実際大阪府においては、かかる状況を反映し、カジノ解禁の是非について住民投票条例の制定を求める直接請求の署名が法定数を超え、同直接請求がなされた。しかし、府議会は住民投票の実施に関する条例案を否決し、住民投票は実施されないことになった。そのため、前述の各懸念を払拭して住民の合意が得られることはもはやなくなったと言える。
 カジノ解禁の弊害の大きさを考えれば、国土交通省が行う整備計画の認定手続においては、認定ありきで審査するのではなく、整備計画につき懸念する意見を十分に踏まえつつ、慎重かつ透明性を担保した審査が求められる。
 しかるに、政府が定めた特定複合観光施設区域の整備のための基本的な方針(以下「基本的な方針」という。)によれば、認定審査にあたっては、有識者により構成される審査委員会を設置して審査を行うとしつつ、会議は非公開とされ、審査委員会における認定審査の結果及び評価の過程については、整備計画の認定後にしか公表されないとされている。しかし、仮に会議そのものを公開しないとしても、いかなる審議経過であったかが認定結果が出るまで全く公表されないとなれば、それは慎重かつ透明性を担保した審査手続とは言い難く、少なくとも会議の開催日やその審理の対象等可能な限り審査状況を適宜公開しながら審査がなされるべきである。
 また、基本的な方針によれば、要求基準(認定を受けるために必ず適合していなければならない基準)と評価基準(整備計画が優れたものであるかを公平かつ公正に審査するための基準)を定めて審査するとされているが、整備計画については、資金調達や計画の実現性など両基準該当性の観点からも疑問を示す声が大きい。そこで、整備計画について懸念する意見についてもヒアリングを行うなどして、審査に反映させることが必要である。
 よって、当会は、カジノ解禁そのものについて改めて反対の意見を表明するとともに、整備計画について審査する国土交通大臣及び審査委員会においては、提出された整備計画が要求基準に適合しかつ評価基準からして優れた計画であるかについて、整備計画に関し懸念する声も適切に反映させつつ、その懸念が払拭される整備計画となっているかどうか、公正かつ厳格に審査するよう求めるものである。

2022年(令和4年)8月4日
          大阪弁護士会      
          会長 福 田 健 次

ページトップへ
ページトップへ