「消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律」、「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」の成立に関する会長声明

「消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律」、「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」の成立に関する会長声明

 2022年(令和4年)12月10日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)などによる被害相談が相次いだことを背景として、消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律(以下「改正消費者契約法」という。)及び法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律(以下「不当勧誘寄附防止法」という。)が成立し、2023年(令和5年)1月5日に施行された。

 改正消費者契約法は、取消権の対象範囲を拡大することなどによりいわゆる霊感商法に対する被害救済を図ろうとするものである。
 しかし、改正消費者契約法第4条第3項第6号は、取消対象について「当該消費者に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、当該消費者又はその親族の生命、身体、財産その他の重要な事項について、そのままでは現在生じ、若しくは将来生じ得る重大な不利益を回避することができないとの不安をあおり、又はそのような不安を抱いていることに乗じて、その重大な不利益を回避するためには、当該消費者契約を締結することが必要不可欠である旨を告げること」とし、「必要不可欠」性を要件とした。そのため、同要件の解釈によっては、現行法より適用範囲が狭められるおそれがある。また、消費者が期待をあおられた場合や消費者の期待に乗じた場合は対象外となるおそれもある。このように、被害救済の範囲が限定的である。
 そもそも、霊感商法を含む消費者被害に対して抜本的かつ実効的に対応するためには、個別被害実態へ適用される取消権の要件をその都度定立したり、見直したりするだけでは、救済のすき間事案が生じやすく、十分ではない。これまで当会が、再三にわたって求めてきたように、知識・経験・判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して、事業者が消費者を勧誘し契約を締結させた場合における消費者の取消権(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)を創設することが必要である(2022年(令和4年)3月11日付け「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案」に対する会長声明、2021年(令和3年)10月13日付け「消費者契約に関する検討会報告書」に関する意見募集(パブリックコメント)に対する意見書、2018年(平成30年)8月2日付け「消費者契約法の一部を改正する法律」の成立に対する会長声明、2017年(平成29年)12月7日付け「消費者契約法専門調査会報告書」に関する意見書、2017年(平成29年)7月25日付け「消費者契約法改正」に関する意見書、2015年(平成27年)7月17日付け「消費者契約法改正」に関する意見書)。

 次に、不当勧誘寄附防止法は、寄附行為が消費者契約には当たらない可能性があることを念頭に、宗教法人をはじめとする法人等による不当な寄附の勧誘を禁止し、行政措置や罰則を定めることによって、今後の被害の予防と救済を図ろうとするものである。
 しかし、取消対象とされた禁止行為(同法第4条各号)は、消費者契約法の規定とほぼ重なっていることから、被害救済の範囲は限定的である。また、同法第3条は、個人の自由な意思を抑圧し、その勧誘を受ける個人が寄付をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥ることのないようにすること(同条第1号)といった、勧誘現場で最も起こり得る典型的行為を禁止行為ではなく、単に配慮義務に止まるものとしている点でも問題がある。さらに、家族被害については、債権者代位権行使の特例(同法第10条)が規定されているが、債権者代位権の要件として寄附者である債務者の無資力を必要とするうえ、被保全債権が扶養義務等に係る定期金債権に限定されていることから、要件も取消範囲も狭く、家族被害の救済として不十分である。

 そこで、当会は、政府・国会に対し、今回成立した改正消費者契約法及び不当勧誘寄附防止法について、上記の不十分な点を見直し、より実効的な被害救済に向けた法改正作業に直ちに着手するよう求める。

2023年(令和5年)3月9日
          大阪弁護士会      
          会長 福 田 健 次

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