特定少年の実名等の公表及び推知報道を控えることを求める会長声明

特定少年の実名等の公表及び推知報道を控えることを求める会長声明

1 「少年法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第47号。以下「改正法」という。)が2022年4月1日に施行され、18歳以上の少年(以下「特定少年」という。)について公判請求(起訴)された場合に、少年の氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真の出版物への掲載(以下「推知報道」という。)の禁止が解除され、その後、多くの報道機関により少年の推知報道がなされた。
 そして、本年4月28日、大阪府内で特定少年が起こしたとされる事件(以下「本件」という。)について和歌山家庭裁判所が検察官送致決定をした。そのため、今後、本件について大阪地方裁判所に公判請求される可能性が高く、その場合、特定少年の推知報道が可能となる。

2 当会は、2020年9月30日付「少年法適用年齢問題にかかる法制審議会少年法・刑事法部会の取りまとめに反対する会長声明」において、推知報道禁止の一部解除を認める法案には反対の立場を表明している。また、当会は、改正法施行後も、2022年4月20日「改正少年法における特定少年の実名等の公表及び報道に関する会長声明」において、実名報道は当該少年の社会復帰や更生の決定的な妨げとなること、ひいては、結果として再犯可能性を高めることになりかねず、社会にとっても不利益に働く面があることなどから、報道機関に対し、少年の推知報道についての慎重な判断を求めてきた。

3 少年法第1条は、少年が成長途中の未成熟な存在であることに鑑み、「健全育成」すなわち少年の成長発達権保障の理念を掲げている。そのため、改正前の少年法第61条において、少年の推知報道が一律に禁止されてきたものである。「特定少年」であっても、少年法の適用を受ける少年である以上、少年法に掲げられている成長発達権は保障されなければならず、少年法第1条の趣旨が妥当する。
 特に、現代においては、一度推知報道がなされると、インターネットやSNSなどを通じて情報が拡散され、半永久的に情報が消えることはなく、少年が長期間にわたって社会から疎外され、周囲からの援助の機会を失い、ひいては少年の社会復帰が著しく困難になるおそれがあり、成長発達権を阻害しかねない。改正法における衆参両院の附帯決議でも、特定少年のとき犯した罪についての事件広報にあたっては、インターネットでの掲載により情報が半永久的に閲覧可能となることを踏まえ、推知報道については少年の健全育成及び更生の妨げとならないよう十分配慮されなければならないとされている。

4 そこで、今般、前述の検察官送致決定がなされたことを受け、当会は、検察庁に対して、特定少年に関する事件広報において、少年の健全育成及び更生に対する影響の大きさから実名等の公表を控えるように求めるとともに、報道機関に対して、仮に公判請求後に検察庁により特定少年の実名公表がなされた場合にも、推知報道を控えるように求める。

2023年(令和5年)4月28日
          大阪弁護士会      
          会長 三 木 秀 夫

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