岐阜市で発生した少年事件の実名等報道に関する会長声明

岐阜市で発生した少年事件の実名等報道に関する会長声明

 株式会社新潮社は、今年6月に起きた岐阜市の陸上自衛隊射撃場で男性隊員3人が撃たれた小銃発射事件に関し、「週刊新潮」(2023年6月29日号)で、被疑者とされる18歳の少年の実名、顔写真及び成育歴などを掲載した。
 これは、少年の犯行について、氏名、年齢、容ぼう等によりその者が当該事件の本人と推知できるような記事又は写真の出版物への掲載(以下「推知報道」という。)を禁止した少年法第61条に反する行為であり、誠に遺憾である。
 少年法第1条は、少年が成長途中の未成熟な存在であることに鑑み、「健全育成」すなわち少年の成長発達権保障の理念を掲げ、その理念実現のため、同法第61条において、少年の推知報道を禁止している。
 また、「少年法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第47号。以下「改正法」という。)が2022年4月1日に施行され、18歳以上の少年(以下「特定少年」という。)について公判請求(起訴)された場合に、推知報道の禁止が解除されたが、現時点では、未だ被疑者段階にあるため、許容される余地はない。
 上記週刊新潮の記事は、現行少年法においても起訴前には氏名が公表されないとしながら、事件や結果の重大性に鑑(かんが)みるなら、その素性(中略)は速やかに詳報されて然るべきなどと独自の見解を述べて、事件に関連しない事項や、少年及び少年の家族のプライバシーに関する事項についても報道している。このような報道は、明らかに違法であって許されるものではなく、また、上記記事が興味本位や商業主義に陥った報道であるという誹りを免れ得ない。
 当会は、週刊新潮を発行する株式会社新潮社に対し、2017年3月14日付「名古屋市内で発生した少年事件の実名等報道に関する会長声明」、2018年4月24日付「滋賀県彦根市内で発生した少年事件の実名等報道に関する会長声明」を発出してきたほか、2021年6月24日付「立川市内で発生した少年事件の実名等報道に関する会長声明」及び同年11月4日付「甲府市内で発生した少年事件の実名等報道に関する会長声明」においても、少年法第61条を遵守するよう重ねて強く要請してきたところである。それにもかかわらず、違法行為が繰り返されたことは極めて遺憾であり、厳重に抗議する。
 そこで、当会は、改めて株式会社新潮社に対し、少年法の理念である少年の健全育成及び更生に資するという社会的使命を果たすという視点のもと少年事件の報道に取り組むこと及び今後同様の実名報道及び写真掲載を行わないことを強く要請するとともに、仮に公判請求後に検察庁により特定少年の実名公表がなされた場合にも、推知報道を控えるように求める。

2023年(令和5年)6月27日
          大阪弁護士会      
          会長 三 木 秀 夫

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