物価の上昇に応じた最低賃金の引上げを求める会長声明

物価の上昇に応じた最低賃金の引上げを求める会長声明

1 本年7月頃、中央最低賃金審議会は、厚生労働大臣に対し、2023年度(令和5年度)地域別最低賃金額改定の目安について答申を行う予定である。毎年、同審議会の答申に基づき、全国の地域別最低賃金審議会が地域別最低賃金の改定額を答申し、これを受けて都道府県労働局長が地域別最低賃金の改定額を決定する。

2 新型コロナウイルス感染症拡大の長期化やロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー費の高騰などにより、食料品など生活必需品の価格が高騰を続ける中、大阪府内、例えば、大阪市においては、2023年5月の物価は2020年比で5%上昇、前年同月比で3.6%上昇しており、特に食料品の物価は2020年比で12%、前年同月比でも9%以上上昇している(2023年5月26日公表の2020年基準大阪市消費者物価指数)。
 他方で、生活の糧となる労働者の賃金の上昇は物価の上昇に追いついておらず、実質賃金は減少を続けている。大阪府においては、2023年3月の実質賃金は前年同月比0.4%減少しており、6ヶ月間連続して前年同月比で減少している(2023年5月31日公表の大阪府毎月勤労統計調査地方調査月報(2023年3月分))。

3 大阪府における最低賃金は、昨年10月1日に、前年度より31円引き上げられ時給1023円とされた。大阪府において初めて1000円を上回った点は評価できるものの、物価の上昇による実質賃金の下落状況からすれば、十分とは言えない。
 大幅な物価上昇が続いている中で労働者の生活を守るためには、大企業だけでなく中小・零細企業も含めた全ての労働者の名目賃金を物価の上昇率以上に上昇させ、実質賃金を上昇又は維持する必要がある。
 また、一般に低所得者世帯であるほど消費支出に占める生活必需品の比重が高く、上記生活必需品の値上がりは、これらの世帯により深刻な影響を及ぼしている。これらの世帯の家計を支える者の多くが非正規労働者を含む最低賃金近傍の労働者であることからすれば、その生活を守るためにも、喫緊に、物価の上昇に応じた最低賃金の引上げを実施する必要がある。

4 他方で、物価高騰は消費者のみならず中小企業にも大きな打撃を与えている。最低賃金の引上げの環境整備のためには、社会保険料の事業者負担の免除・軽減や原材料費等の価格上昇を取引に正しく反映させることを可能にするよう、法規制など中小企業への支援強化も不可欠であることから、政府は、中小企業へのきめ細かな支援や取引適正化等にも取り組むべきことは言うまでもない。

5 以上から、当会は、本年の最低賃金の改定にあたり、中央最低賃金審議会に対し、物価の上昇に対応すべく、例年以上の最低賃金額の引上げを内容とする答申を行うことを求めるとともに、大阪地方最低賃金審議会に対しても、中央最低賃金審議会の提示する目安に縛られず、大阪府の最低賃金の例年以上の引上げを実施することを求める。

2023年(令和5年)6月28日
          大阪弁護士会      
          会長 三 木 秀 夫

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