イスラエルおよびハマス双方に即時停戦を求め、日本政府に対して即時停戦等を働きかける外交を強力に展開することを求める会長声明

イスラエルおよびハマス双方に即時停戦を求め、日本政府に対して即時停戦等を働きかける外交を強力に展開することを求める会長声明

1 2023年(令和5年)10月7日にパレスチナ・ガザ地区からのハマスのミサイル攻撃をきっかけに、イスラエル軍が220万人の住民のいるガザ地区への大規模な軍事攻撃をしかけ、国連総会をはじめとする国際社会の多くの停戦要求にもかかわらず、半年経過した現在に至るも、ガザ地区に対する軍事攻撃が継続している。
 さらに、2024年(令和6年)4月14日にはイランがイスラエルに向けてドローンとミサイルを発射するなど、ガザ地区での戦闘に加え、中東情勢はさらに緊迫した状況となっている。

2 イスラエルとハマスの武力紛争はガザ地区を実効支配するハマス側の攻撃からはじまったものであり、イスラエル側に約1250人の死者、約6200人の負傷者が生じ、約250人が人質として連れ去られたといわれており、いまなおその多くが解放されていない。しかし、イスラエル軍の反撃は、当初ガザ地区北部に対して、その後北部からの避難者が集中する南部に拡大し、ガザ地区の死者は3万3000人を超えたといわれており、その多くが子ども、女性、高齢者を含む民間人である。加えて、イスラエル軍はガザ地区を封鎖した状態で攻撃を加え、住居はもちろん、水道・電気などのインフラ設備、医療機関、学校にも大きな被害が出ており、ガザ地区住民は栄養不良・感染症による生命の危機に瀕している。

3 パレスチナでの紛争は、長く複雑な歴史的・民族的・宗教的背景があり、2023年(令和5年)の武力紛争について、国連憲章をはじめとする国際法違反がいずれにあるのか断定することは困難である。しかし、たとえ戦時であっても1949年(昭和24年)のジュネーブ条約およびその後の追加議定書など国連を中心とする国際会議で合意された国際人道法に基づいて、戦時における文民等は保護されなければならない。
2023年(令和5年)10月から始まったパレスチナ・ガザ地区での武力紛争では、以下の点で国際人道法違反が生じている。
 (1) 2023年(令和5年)10月7日にハマスが数千発のロケット弾攻撃に加えイスラエル領内に侵入し、イスラエル側市民900人以上が殺害されたことおよび約250人の人質が連れ去られたこと(軍事目標主義、文民保護の義務、人質の禁止に違反する。)
 (2) 2023年(令和5年)10月以降現在に至るまで、イスラエル軍により、学校、病院、難民キャンプ、モスクが攻撃され、女性、子ども、医療関係者、国連要員に死者が生じたこと(軍事目標主義、文民保護の義務に違反する。)
 (3) 2023年(令和5年)10月に、イスラエル軍が、ガザ地区とレバノン国境付近で白リン弾を使用した疑いがあること(不必要な苦痛をもたらす兵器の使用禁止に違反する。)

4 また、イスラエル軍がガザ地区北部を制圧したころからジェノサイドの危険が生じており、2024年(令和6年)1月26日、国際司法裁判所は、南アフリカ共和国が集団殺害の疑いでイスラエルを提訴したジェノサイド条約適用事件において、イスラエルに対し以下の点の暫定措置命令を発出した。
 (1) ジェノサイド条約で定義されたジェノサイド行為の防止のためにあらゆる措置を講じること
 (2) イスラエル軍がジェノサイド行為を行わないことを直ちに保証すること
 (3) ジェノサイドの公然たる扇動を防止し、処罰するためにあらゆる措置をとること
 (4) 人道支援の提供を可能にする即時かつ効果的な措置を講じること
 (5) ジェノサイド行為の証拠となりうるものの破壊を防止し、その保全を確保するための効果的な措置を講じること
 (6) 1か月以内に、命令に基づき取られた措置について報告すること

5 パレスチナでは、武力攻撃により日々市民の直接的な犠牲が生じ、また、周囲を封鎖された地域でインフラが破壊されることによっても生存の危機が生じている。当会は、日本国憲法の恒久平和主義の理念にのっとり、いかなる国の市民であっても人権が尊重され、平和のうちに生存する権利が保障されなければならないと考える。
 当会は、紛争当事者に対しては、これ以上の犠牲を出さないように、即時停戦するとともに、国際人道法を厳に尊重することを求める。また、国際司法裁判所の暫定措置命令が発出されたことは重大であり、イスラエルがこの命令に従うことを求めるものである。
 一方、ハマスは未だ100人前後の人質を解放しておらず、これについても早急に解決されなければならない。
 日本政府は、紛争当事者に対し、即時停戦と国際人道法の尊重を訴えるとともに、各国に対して、即時停戦、国際人道法の尊重およびジェノサイド防止を働きかける外交を強力に展開すべきである。それが、「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と憲法前文に掲げ、国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄した日本のとるべき道である。

2024年(令和6年)4月16日
          大阪弁護士会      
          会長 大 砂 裕 幸

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