物価の上昇に応じた大幅な最低賃金の引上げを求める会長声明
1 本年7月頃、中央最低賃金審議会は、厚生労働大臣に対し、2024年度(令和6年度)地域別最低賃金額改定の目安について答申を行う予定である。毎年、同審議会の答申に基づき、全国の地域別最低賃金審議会が地域別最低賃金の改定額を答申し、これを受けて都道府県労働局長が地域別最低賃金の改定額を決定する。
2 大阪府における最低賃金は、昨年10月1日に、前年度より41円引き上げられ時給1,064円とされた。1,064円で1日8時間、1週40時間、年52週働いたとしても、月収約18万4000円、年収約221万円にしかならない。
そして、今なお続く物価の高騰に賃金の上昇が追いついておらず、実質賃金は減少を続けている。すなわち、大阪市における2024年5月の物価指数は、2020年比で107.9(特に食料は116.3)であり、前年前月比2.7%の上昇となっている(「2020年基準 大阪市消費者物価指数 2024年(令和6年)5月速報」)。他方で、大阪府内の2024年3月の実質賃金指数は2020年比88.9であり、前年前月比1.6%の減少となっている(「大阪府 大阪の賃金、労働時間及び雇用の動き(月報)毎月勤労統計調査地方調査月報(2024年3月分)」2024年5月31日公表)。
このような物価の上昇による実質賃金の減少状況からすれば、大阪府における最低賃金は、労働者が安定した生活を送るために必要な水準を満たしているとはいえない。殊に低所得者世帯であるほど消費支出に占める食料品の比重が高く、同品目の値上がりにより、これらの世帯は深刻な影響を受けている。労働者が安定した生活を送るために、最低賃金を大幅に引き上げることにより、全ての労働者の実質賃金を引き上げる必要がある。
3 他方で、物価高騰は消費者のみならず中小企業にも大きな打撃を与えている。最低賃金引上げのためには、中小企業の健全な経営が可能となる基盤の形成が必要である。そこで、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)や下請代金支払遅延等防止法(昭和31年6月1日法律第120号)をこれまで以上に積極的に運用し、中小企業とその取引先企業との間で公正な取引が確保されるようにするとともに、社会保険料の事業者負担の軽減・免除をするなど中小企業への支援強化を図ることは不可欠である。したがって、国は、中小企業支援策の実現にも引き続き取り組むべきである。
4 以上のとおり、当会は、本年の最低賃金の改定にあたり、中央最低賃金審議会に対し、物価の上昇に対応すべく大幅な最低賃金額の引上げを内容とする答申を行うこと、大阪地方最低賃金審議会に対し、中央最低賃金審議会の提示する目安に縛られることなく大阪府の最低賃金の大幅な引上げを実施することを求めるとともに、国においても、最低賃金引き上げのため、引き続き中小企業支援策に取り組むことを求める。
大 阪 弁 護 士 会
会長 大 砂 裕 幸