旧優生保護法被害最高裁判決を踏まえ、すべての被害者に対する全面的解決を求める会長声明
・旧優生保護法被害最高裁判決を踏まえ、すべての被害者に対する全面的解決を求める会長声明
2024年(令和6年)7月3日、最高裁判所大法廷は、旧優生保護法の規定は憲法13条及び14条1項に違反するものと明示し、国会議員の立法行為が国家賠償法の適用上違法であるとして国の責任を認めた。加えて除斥期間に関する平成元年の最高裁判所判例を変更し、原告らの損害賠償請求権の行使に対して国が除斥期間の主張をすることは、信義則に反し、権利の濫用として許されないと判示した。
国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白であった強制不妊手術の規定を国会が作り、内閣が執行した。その国の責任を時の経過でもって免責することは、著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することはできないとしたものである。最高裁判所が、まさに、人権保障の最後の砦としての司法府の核心的役割をここに示した判決と高く評価できる。加えて、大阪在住の聴覚障害のある夫婦が、旧優生保護法に基づき不妊手術を強制的に受けさせられたとして国を訴え、本年1月26日大阪高等裁判所が国に賠償を命じる判決を出した裁判についても、7月4日、最高裁判所は国の上告を受理しない旨の決定を出し、原告側勝訴判決が確定した。
今後は、国会及び内閣が、最高裁判所が示した判断を真摯に重く受け止め、早期に旧優生保護法被害の全面解決に向けて、それぞれの責務を果たすべきである。
他方、旧優生保護法に基づく強制不妊手術の被害者はおよそ25,000人と推定される。2019年(平成31年)4月に旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律(一時金支給法)が成立したが、一時金の請求件数は2024年6月2日現在1,331件、認定件数は2024年5月末現在1,110件にとどまっている。
かかる請求状況から、障害特性から被害に気づいていなかったり、声を上げられなかったりした被害者がまだかなりいるものと思われる。また、被害者らの多くは、現在でもなお、差別や偏見等を解消するための十分な措置が執られているとは言い難い社会情勢の中で、申請の前提となる情報や相談機会へのアクセスが著しく困難な状況にあることが考えられる。
よって、国に対し、すべての旧優生保護法による被害を償うに足りる十分な補償を実施するための立法的措置を講ずるとともに、被害者に対して十分な情報や相談機会へのアクセスを保障するための迅速かつ積極的な措置を講じることを求める。
当会としても、旧優生保護法の被害にあった人たちが誰一人取り残されることなく十分な補償を受けられるよう、情報の提供や相談機会を確保するための電話相談を実施するなど、今後も全力で取り組む所存である。
大 阪 弁 護 士 会
会長 大 砂 裕 幸
※当会は日本弁護士連合会と共に次のとおり「全国一斉旧優生保護法相談会」を開催する。
2024年7月16日(火)10時~16時
TEL 0570-07-0016 FAX 022‐726‐2545
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