子どもの権利条例の制定及び子どもの相談救済機関の設置を求める会長声明
・子どもの権利条例の制定及び子どもの相談救済機関の設置を求める会長声明
今年は、1989年(平成元年)11月20日に子どもの権利条約(政府訳「児童の権利に関する条約」)が採択されてから35年、1994年(平成6年)4月22日に日本が批准してから30年となる記念すべき年です。
この間、国は、子どもをめぐる様々な課題に対し、既存の法律を運用するほか、個別に法律を制定したり、改正したりしてきましたが、子どもを取り巻く環境は30年前に比べて改善したとは言えず、むしろ深刻化、複雑化しています。大阪府内では、児童虐待相談対応件数、いじめの認知件数、不登校の児童生徒数など、いずれも全国平均と比べて非常に多く、家庭や学校で子どもたちが安心して学び、遊び、成長発達する権利が守られているとは言い難い状況が続いています。
2023年(令和5年)4月に「こども基本法」が施行され、こども家庭庁が設置され、同年12月にはこども大綱が閣議決定されるなど、国は「こどもまんなか社会」の実現を唱えています。その実現のためには、国において実効性のある施策の実行が求められることに加え、子どもが日々の生活を送るうえで身近な存在となる地方自治体においても、子どもの権利条例を制定し、子どもの権利条約の内容を推進する必要があります。
各自治体が子どもの権利条例を制定するにあたっては、⑴子どもが権利主体であることを明記して、子どもは指導や管理の対象ではなく、大人と対等な関係で意見や気持ちを共有しながら、同じ時代を生きる社会のパートナーであることの理解を促進すること、⑵子どもの権利は子どもが成長発達するために必要不可欠なものであり、義務や責任の対価として与えられるものではなく、子どもの権利に対して義務や責任を負うのは大人であることに留意すること、⑶選挙権のない子どもの声を聴き、条例の制定や施策を決定する際に子どもが参加できる仕組みを作ること、⑷子どものあらゆる権利侵害に対応することができる公正中立な第三者機関として、オンブズパーソン等の子どものための相談救済機関を設置することが必要です。
特に、オンブズパーソン等の相談救済機関の設置については、こども大綱においても、国が取組みを後押しする重要事項の一つとされており、全国では約50の自治体で設置されていますが、大阪府内では現段階では1つも設置されていません。
子どもの権利侵害の要因は複合的であるため、児童虐待やいじめ等個別の事象のみに対応する機関では十分ではありません。
また、子どもの相談救済機関は、子どもが利用しやすいものでなければなりません。そして、子どもに関する相談、救済の申立てを受け、又は自ら調査する権限を有し、関係者の調整や勧告、意見表明等をする機能を持つこと、子どもの権利について理解を深めるための普及啓発を行う機能を持つこと、公的機関だけではなく、民間の機関に対しても意見や提言をし、連携して権利擁護を図ることのできる機関であることが必要です。
世界こどもの日を迎え、当会は、大阪府内の自治体に対し、子どもの権利条例を制定し、子どもの相談救済機関を設置することを強く求めます。当会においても、条例を制定する際の助言や子どもの権利を普及啓発する活動等を通じ、ともに子どもの権利擁護活動に取り組んでいく所存です。
大 阪 弁 護 士 会
会長 大 砂 裕 幸