今国会において議員立法による再審法改正の早期実現を求める会長声明
・今国会において議員立法による再審法改正の早期実現を求める会長声明
1 昨年、静岡4人強盗殺人・放火事件(いわゆる「袴田事件」)の再審無罪判決が確定し、同事件において犯人とされた袴田巌氏は、実に58年の長きにわたる歳月を経てようやく自らのえん罪を晴らすことができた。かかる事件の審理を通じて、現行刑事訴訟法における再審に関する定め(以下「再審法」という。)において、証拠開示制度が定められていないこと、再審請求審において、検察官による不服申立てが認められていることなど、再審法の不備が浮き彫りにされ、これが事件報道などによって、広く社会に認知されることになった。また、昨年は、この他にもえん罪事件とされる福井女子中学生殺人事件について再審手続が開始されるなど、複数の再審事件について大きな動きがあった。そして、そのことから、えん罪被害者が極めて長期間、えん罪を晴らすことができず、その間、想像を絶する精神的苦痛を抱えながら生活している状況が数多く報道され、速やかな再審法改正を求める市民の声もかつてないほどに高まりを見せるに至っている。
当会においても、会長声明(2024年(令和6年)5月22日付け会長声明及び同年9月26日付け会長声明)を繰り返し発出するとともに、市民集会の開催や日本弁護士連合会の再審法改正全国キャラバンの共催などを通じて、再審法改正の一刻も早い実現を訴え続けてきた。
2 他方、最高検察庁は、2024年(令和6年)12月26日付けで再審手続及び捜査・公判に関する検証結果を記載した報告書を公表したが、同報告書の内容によっても現行の再審法に不備があり、速やかな再審法改正の必要性とその具体的内容は明らかとなっている。
3 このようななか、「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟(以下「再審法改正議連」という。)」は、2025年(令和7年)1月28日、実務者協議会を開き、今国会(第217回国会)で、刑事再審に関する刑事訴訟法の一部を改正する法律案(以下「再審法改正案」という。)を議員立法で提出し、成立を目指す方針であることを明らかにした。また、同年2月26日には、議連総会を開催し、再審法改正案の取りまとめを行うとともに、かかる方針を再確認した。
今回、再審法改正議連が取りまとめた再審法改正案は、①再審請求審における証拠の開示命令、②再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止、③再審請求審等における裁判官の除斥及び忌避、④再審請求審における手続規定の整備を内容とするものであり、いずれも改正の緊急性・必要性の高い事項である。なお、再審法改正議連は、同年2月14日時点で、全国会議員の過半数を超えて373名に上る国会議員が参加しており、世論に応えるべく責任ある行動をとっている。かかる再審法改正議連の行動を、当会としても高く評価するものである。
4 一方、これまで一貫して、再審法改正に消極的な態度を示してきた法務省が、2025年(令和7年)2月7日、再審制度の見直しを法制審議会に諮問する方針を表明し、今月にも正式に諮問がなされる見通しである。
しかしながら、法制審議会で再審法改正案が検討される場合、結論が出るまでに年単位の時間を要することが見込まれ、その間、えん罪被害者の速やかな救済の道が断たれることになる。えん罪は、国家による最大の人権侵害であり、過ちは速やかに正されなければならない。
このような観点からみれば、今国会において、上記①ないし④の再審法改正の根幹部分について、まずは上記議員立法による再審法改正を早期に実現することが必要である。
5 よって、当会は、今国会において、上記議員立法による再審法改正の早期実現を強く求めるものである。
大 阪 弁 護 士 会
会長 大 砂 裕 幸