公益通報者保護法の一部を改正する法律案についての会長声明
令和6年12月、消費者庁・公益通報者保護制度検討会の報告書が取りまとめられ、令和7年3月4日、第217回通常国会に公益通報者保護法(以下「本法」という。)の一部を改正する法律案(以下「本改正案」という。)が提出され、現在審議中である。
当会は、本法の在り方及び見直しについて平成15年8月から令和3年5月までに合計7件の意見書及び1件の会長声明を発出してきた。
本改正案は、公益通報を理由とする解雇及び懲戒処分に対する刑事罰の導入、通報後1年以内の解雇又は懲戒について公益通報を理由としてされたものと推定する制度の導入、保護すべき公益通報者にフリーランスを加えていること、公益通報対応業務従事者指定義務違反への是正命令及び同命令違反時の刑事罰の導入、公益通報者を探索する行為及び公益通報を妨害する行為の禁止、一般職の国家公務員等について公益通報をしたことを理由とする不利益な取扱いを禁止し、これに違反して分限免職又は懲戒処分した者に対し直罰制度を新設する等、本法の実効性を高めるために必要な内容が盛り込まれており、評価することができる。
この点、令和7年3月19日付兵庫県「文書問題に関する第三者調査委員会」調査報告書が、利害関係者が公益通報対応業務に関与していたことが極めて不当で、通報者を探索した行為が違法であることを指摘していることからも、通報者保護の観点から、本改正案を早急に実現する必要性は高い。
他方、本改正案では、①配置転換や人事権行使としての降格について公益通報を理由としてされたものと推定する立証責任転換の規定、②公益通報をするために必要な資料収集や持出行為に対する民事・刑事上の免責規定、③解雇・懲戒処分以外の不利益取扱いに対する刑事罰の導入、④公益通報対応業務従事者指定義務以外の体制整備義務違反に対する是正命令及び同命令違反時の刑事罰の導入、及び⑤フリーランス以外の取引先事業者等を保護すべき公益通報者に加える規定等が盛り込まれていない。
よって、当会は、本改正案に盛り込まれなかった上記5点についても、本改正案の審議において検討することを求める。
大 阪 弁 護 士 会
会長 大 砂 裕 幸