物価の上昇に応じた大幅な最低賃金の引上げを求める会長声明

物価の上昇に応じた大幅な最低賃金の引上げを求める会長声明

1 本年7月頃、中央最低賃金審議会は、厚生労働大臣に対し、2025年度(令和7年度)地域別最低賃金額改定の目安について答申を行う予定である。毎年、同審議会の答申に基づき、全国の地域別最低賃金審議会が地域別最低賃金の改定額を答申し、これを受けて都道府県労働局長が地域別最低賃金の改定額を決定する。

2 大阪府における最低賃金は、昨年10月1日に、前年度より50円引き上げられ時給1,114円とされた。1,114円で1日8時間、1週40時間、年52週働いたとしても、月収約19万3,100円、年収約231万円にしかならない。
 しかし、物価の高騰が続いており、特に米の価格高騰など食料品の高騰も続いている中で、賃金の上昇が追いついておらず、大阪府の実質賃金は3年連続で減少を続けている(令和6年平均結果速報 大阪の賃金、労働時間及び雇用の動き 毎月勤労統計調査地方調査)。
 このような物価の上昇による実質賃金の下落状況からすれば、大阪府における最低賃金は、物価の高騰が続く中で労働者が安定した生活を送るために必要な水準を満たしているとはいえない。労働者の生活を守るためには、最低賃金を大幅に引き上げることにより、全ての労働者の実質賃金を上昇又は維持する必要がある。
 また、一般に低所得者世帯であるほど消費支出に占める食料の比重が高く、米をはじめとした食料の長引く価格の高騰により、これらの世帯が深刻な影響を受けている。同世帯の家計を支える者の中には非正規労働者を含む最低賃金近傍の労働者が少なくないことを踏まえれば、同世帯の生活を守るためにも、喫緊に、物価の上昇に応じた大幅な最低賃金の引上げを実施する必要がある。

3 政府は2024年11月22日に「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」を閣議決定し、「2020年代に全国平均1,500円という高い目標の達成に向け、たゆまぬ努力を継続する」としている。大阪府において2020年代1,500円を実現するためには、毎年77.2円の引き上げが必要となり、さらに全国平均1,500円を達成するためにはそれ以上の引き上げが必要となる。

4 他方で、物価高騰は消費者のみならず中小企業にも大きな打撃を与えている。最低賃金引上げのためには、中小企業の健全な経営が可能となる基盤の形成が必要である。そこで、社会保険料の事業者負担の軽減・免除、消費者に転嫁しない形での原材料費等の価格上昇を取引に正しく反映させることを可能にするなど中小企業への支援強化は不可欠である。したがって、国は、中小企業支援策の実現にも引き続き取り組むべきである。

5 以上のとおり、当会は、本年の最低賃金の改定にあたり、中央最低賃金審議会に対し、物価の上昇に対応すべく大幅な最低賃金額の引上げを内容とする答申を行うこと、大阪地方最低賃金審議会に対し、中央最低賃金審議会の提示する目安に縛られることなく大阪府の最低賃金の大幅な引上げを実施することを求めるとともに、国においても、最低賃金引き上げのため、引き続き中小企業支援することを求める。

2025年(令和7年)6月4日
          大 阪 弁 護 士 会      
          会長 森 本  宏

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