大阪府下のすべての地方議会において、再審法改正を求める意見書が採択されたことを受け、改めて、臨時国会での再審法改正を一刻も早く実現することを求める会長声明
・大阪府下のすべての地方議会において、再審法改正を求める意見書が採択されたことを受け、改めて、臨時国会での再審法改正を一刻も早く実現することを求める会長声明
当会は、再審法(刑事訴訟法第4編再審)の改正を重要課題の一つに掲げ、その一環として、これまで、各市民団体とも協力し、大阪府下の地方議会に対し、再審法改正を求める意見書採択をすすめる運動に取り組んできた。そして、この度、大阪府下の全ての地方議会(大阪府議会及び43市町村議会)において、かかる意見書が採択された。これは、大阪府全体として、えん罪という国家による究極の人権侵害の救済とその根絶のために、再審法改正が急務であることを確認し、改正を強力に推し進める決意をしたことを示すものである。当会は、大阪府下の各地方議会及び所属議員が、当会及び各市民団体の上記運動に応えて、かかる問題の深刻さを受け止め、全ての地方議会から、このような意思表明がなされたことを高く評価し、深く感謝する。
本年6月18日、衆議院に「刑事訴訟法の一部を改正する法律案(以下「本法案」という。)」が議員立法として衆議院に提出され、その後、衆議院法務委員会に付託され、閉会中審査となっている。本法案は、①再審請求審における検察官保管証拠等の開示命令、②再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止、③再審請求審等における裁判官の除斥及び忌避、④再審請求審における手続規定を定めるものであり、2025年(令和7年)7月18日付け会長声明において述べたとおり、当会は、本法案を支持する。
他方で、再審法改正に関しては、本年4月21日以降、法制審議会刑事法(再審関係)部会(以下「法制審部会」という。)において審議が行われ、本法案を含め、14項目が審議対象になっている。しかしながら、法務省刑事局の中枢を占めるのは検察官であり、検察庁は、上記4項目のうち、主な改革対象ともいえる立場にある。法務省が主導する法制審議会において、検察官による証拠開示や、再審開始決定に対する検察官による不服申立ての禁止など、必要な改正が速やかになされることは、およそ考えがたい。現に、法制審部会では、著名えん罪事件を通じて明らかになった再審法の不備を指摘して法改正を求める意見がある一方で、再審手続が、「非常」救済手続であることを殊更に強調し、証拠開示の範囲を新証拠及びそれに基づく主張に関連する限度にとどめようとする意見や、検察官による再審開始決定に対する不服申立を禁止することに消極的な意見も根強く見受けられるところであり、法制審議会の答申は、本法案に比べて、極めて不十分なものになることが想定される。このとおり、法制審部会における議論の実態は、検察官主導の姿勢が色濃く反映されており、えん罪救済に向けた本質的な改革を阻む構造的問題が露呈しているといわざるを得ない。再審制度は、市民の権利擁護を目的とした制度設計に向けて抜本的改革がなされなければならず、検察官の意向に左右されるべきではない。
法制審部会による審議が再審法改正の停滞を招いている現状に鑑みれば、これを打破するためには、民主主義の力が最大限に発揮されるべきである。すなわち、国民の声を直接反映できる議員立法こそが、えん罪救済という人権課題に対して迅速かつ的確に応える唯一の道である。
このような状況に照らせば、まずは、「唯一の立法機関」である国会において、本法案を成立させ、速やかにあるべき再審法改正の方向性を示さなければならない。そして、法制審議会では、その方向性に沿って、残された論点も含めて、審議を尽くす役割を果たすべきである。
以上より、当会は、この度、大阪府下の全ての地方議会で、再審法改正を求める意見書が採択されたことを受け、改めて、臨時国会において、再審法改正の実現を強く求めるものである。
大 阪 弁 護 士 会
会長 森 本 宏