骨太の方針2025を踏まえ、「谷間世代」への一律給付に値する国による是正措置(基金制度)の早期実現を求める会長声明

骨太の方針2025を踏まえ、「谷間世代」への一律給付に値する国による是正措置(基金制度)の早期実現を求める会長声明

 1 本来、法曹は三権の一翼である司法を担う重要な人的基盤であり、公費により養成されなければならない。だからこそ、終戦直後の1947年(昭和22年)から60年以上にわたり、司法修習生には「修習専念義務」の下、公務員に準じた給与(給費)が支払われてきた。
 
 2 ところが、新第65期の司法修習生(2011年(平成23年)11月採用)から給費制が廃止され、無給の司法修習(最高裁判所が司法修習生の申請により司法修習期間中の生活費を貸し付ける「貸与制」)となった。
 当会は、2010年(平成22年)4月以来、司法修習生に対する給費制廃止によって生じる問題の解決に取り組んできており、2017年(平成29年)には司法修習給付金制度が創設され第71期以降に適用されるようになったが、新第65期から第70期の司法修習終了者(いわゆる「谷間世代」)は、制度変更の谷間に陥ってしまった。
 
 3 谷間世代法曹は、約1.1万人もいて、法曹となってから8年目ないし13年目の中堅へと成長し、司法の中核を担う立場となった。一方で、無給での司法修習を余儀なくされて重い経済的負担を負ったことに対する公的な是正措置はなされず、他の世代とは異なる不公平・不平等な取扱いを受けたまま長く放置され、それが経済的・精神的足かせとなっている。
 2019年(令和元年)5月30日には、給費制廃止違憲訴訟(新第65期)の名古屋高等裁判所控訴審判決において、「例えば谷間世代の者に対しても一律に何らかの給付をするなどの事後的救済措置を行うことは、立法政策として十分考慮に値するのではないかと感じられる」との付言がなされるなど、立法府による解決が期待されている。
 上記のような制度的不備、いわゆる「谷間世代問題」を決して未解決のままにはできない。当会は、日弁連、全国の弁護士会、ビギナーズ・ネット等とともに、抜本的な解決を求めて活動してきた。近年では2023年(令和5年)3月27日に、当会は「『谷間世代』への一律給付の立法措置を求める会長声明」を発している。そして現在は、谷間世代への修習給付金と同額の一律給付による解決または実質的に谷間世代への一律給付と異ならないような基金制度の創設を目指して取り組んでいる。
 2025年(令和7年)6月、いわゆる政府の骨太の方針2025には「法曹人材の確保等の人的・物的基盤の整備を進める」との文言及びその注記で「法教育の推進、公益的活動を担う若手・中堅法曹の活動領域の拡大に向けた必要な支援の検討を含む」ことが明記された。まさに上記基金制度の創設の趣旨に合致するものである。
 また、日弁連が目指す基金制度の実現によって、谷間世代の経済的負担や不公平感を軽減し、谷間世代が様々な活動・業務・諸課題により一層広く深く、積極的に取り組めるようになることは、国民の権利利益の保護に有益である。
 
 4 本年の夏から秋にかけて、日弁連が目指す基金制度の実現を目指し、「谷間世代への基金創設実現のための全国リレー集会」が全国7つのブロックで企画され、近畿においても実施される。
 当会は、一時的に公費による法曹養成が途絶え谷間世代問題を生んだ制度的不備を解消するため一層の活動を行う決意であり、国及び関係機関に対し、「谷間世代」への一律給付による解決又は一律給付と異ならないような国による是正措置(基金制度)の早期実現を求め、全国の弁護士会及び日弁連と共に、力を尽くすものである。

2025年(令和7年)10月6日
          大 阪 弁 護 士 会      
          会長 森 本  宏

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