法制審議会刑事法(再審関係)部会の審議の進め方に厳重に抗議し、改めて議員立法による再審法改正の実現を強く求める会長声明
・法制審議会刑事法(再審関係)部会の審議の進め方に厳重に抗議し、改めて議員立法による再審法改正の実現を強く求める会長声明
2025年(令和7年)6月18日、党派を超えた国会議員の過半数が加盟する「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」が作成した「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」(以下「議員立法案」という。)が衆議院に提出され、現在、継続審議となっている。他方、法務大臣の諮問を受けた法制審議会刑事法(再審関係)部会(以下「再審部会」という。)においても同様に、再審法改正に向けた審議が進められている。
当会は、同年7月18日付会長声明及び同年10月1日付会長声明において、再審部会の事務当局を法務省刑事局が務めていることなどから、同部会の議論の実態は、検察官主導の姿勢が色濃く反映されており、えん罪救済に向けた本質的な改革を阻む構造的問題があることを指摘してきた。そして、①再審請求審における検察官保管証拠等の開示命令、②再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止、③再審請求審等における裁判官の除斥及び忌避、④再審請求審における手続規定を定めるなど、えん罪救済に資する根幹部分の改正を定める議員立法案が、速やかに審議・可決されることを強く求めてきた。
ところが、同年12月16日に開催された再審部会第13回会議にて提出された再審部会事務当局作成の「今後の議論のための検討資料」(以下「検討資料」という。)では、再審部会第4回会議で示された論点整理(案)に盛り込まれ審議対象とされてきた14項目の論点のうち、8項目もの論点が大項目ごと除外されており、大項目を残しつつ小項目が除外された論点が3項目も存在した。例えば、当初論点とされていた「裁判所不提出記録・証拠物の保存・管理」や「国選弁護制度」など、再審制度の根幹に関わる論点が除外された。また、検討資料は、内容についても再審部会のこれまでの審議状況を忠実に整理・反映したものとは到底いえないものであるが、再審部会の委員・幹事への事前提示や意見聴取を経ずに、「意見の集約に向けたたたき台(案)」との標題を付して報道機関に配布され、記者に対する説明が行われた。
このように、検討資料は、議事運営を補佐すべき立場に過ぎない事務当局が、恣意的に論点の抽出・整理を行った上で、その内容を再審部会の委員・幹事に先んじて報道機関に公表することで既成事実化し、再審部会の審議の方向性を誘導する意図で作成されたものと言わざるを得ない。
また、検討資料には、裁判所が再審請求書やその添付資料等を調査し、再審の請求が理由のないものと認めるときは、証拠開示や事実の取調べを経ずに、直ちに再審請求を棄却することを義務づける案が明記されている。かかる案は、再審法改正の目的であるえん罪被害者の速やかな救済に資するものとは到底言い難く、かえって裁判所による拙速な判断によりえん罪被害者の救済の道を閉ざすことに繋がりかねない。
このような検討資料が「事務当局において部会長の了承の下に作成した」ものであれば、部会長の責任もまた重大と言うほかない。
当会は、これまで、再審部会には、公正性、中立性に疑問があり、再審法改正の内容が骨抜きにされる懸念があることなどを再三指摘してきたが、今回の事務当局の一連の行動は、まさにこれが現実化したものである。このような再審法改正では、えん罪被害者の救済を今まで以上に困難にする「改悪」を生むことになりかねない。
再審部会の審議状況に対する深い憂慮は、当会からの指摘にとどまらず、刑事法研究者4名の連名による「再審法の改正に関する意見」や、刑事法研究者135名による「再審法改正議論のあり方に関する刑事法研究者の声明」、さらには元裁判官63名による「再審法改正に関する元裁判官の共同声明」が相次いで公表されている。これらの意見・声明は、再審における証拠開示の範囲を限定し、再審開始決定に対する検察官の不服申立て(検察官抗告)の禁止にも踏み込まないなどといった再審部会での審議内容に対して、えん罪被害者の速やかな救済という再審法改正の目的に反すると厳しく批判している。
上記をふまえ、当会は、再審部会に対し、自らが公正性・中立性に強い疑問を持たれていることを自覚した上で、謙虚かつ真摯な姿勢で、元裁判官や刑事法研究者の上記意見、全地方議会の半数にも迫る各議会から提出された意見書、各市民団体の声明、日弁連をはじめとする各弁護士会の会長声明など、再審法改正を求める多数の声に耳を傾け、その審理方法を改善し、真にえん罪救済のための実効性のある再審法改正となるよう、十分な議論を尽くすことを強く求める。
また国会に対しては、議員立法案が、元裁判官、刑事法研究者、各市民団体、日弁連を始めとする各弁護士会から支持され、市民からも期待されている事実を受け止め、今後も起こりうる、えん罪被害の救済のため、強い思いを持って、速やかに審議に入り、これを可決することを求める。
以上のとおり、当会は、再審部会の審議の進め方に厳重に抗議し、改めて議員立法による再審法改正の実現を強く求めるものである。
大 阪 弁 護 士 会
会長 森 本 宏