国籍を問わず調停委員、司法委員及び参与員の任命を求める会長声明

国籍を問わず調停委員、司法委員及び参与員の任命を求める会長声明

 当会は、大阪家庭裁判所から依頼を受け、2025年(令和7年)9月26日付けで47名の家事調停委員及び18名の参与員の候補者を推薦し、大阪地方裁判所から依頼を受け、同年10月3日付けで126名の民事調停委員及び94名の司法委員の候補者を推薦したが、そのうち韓国籍の弁護士各1名、計4名のみが、書類選考の結果、選任されなかった。
 いずれも、当該職務が公権力の行使又は国家意思の形成に関与すること等から、日本国籍を要すると解するのが相当であるとの理由によるものであった。
 これまでも、日本国籍を有しないことのみを理由として外国籍の弁護士につき任命上申の対象外とする取扱いが繰り返されてきたことに対し、当会は、再三にわたりその不当性を指摘し、改善を求めてきた。にもかかわらず、再び上記のとおり4名の推薦に対し同様の取扱いがなされたことは極めて遺憾であり、強く抗議するものである。
 そもそも、法令上、外国籍の者が調停委員、司法委員及び参与員(以下「調停委員等」という。)になることができないと定める規定は存在しない。
調停委員の職務は、裁判官のように公権的判断を行うことではなく、裁判官または調停官と共に調停委員会のメンバーとして、当事者双方の話合いの中で法律的な観点からの助言や斡旋、解決案の提示を行い、合意を促して紛争の解決にあたるというものである。
 また、参与員の職務は、家庭裁判所で行われる名の変更、戸籍訂正、未成年者の養子縁組などの家事審判事件の手続の際に、審判に立ち会ったり、離婚訴訟などの人事訴訟事件の証拠調べや和解の試みなどに立ち会い、率直な意見を裁判官に述べるなどして紛争の解決に導くというものである。
 さらに、司法委員の職務は、簡易裁判所の民事訴訟において、裁判官が和解を試みるときにその補助をしたり、審理に立ち会って、裁判官に、参考となる意見を述べたりするというものである。
かかる職務内容に照らしても、国籍のみを理由として採否を判断する合理性は認められない。
 とりわけ、特別永住者は、歴史的経緯に基づき、日本社会への恒久的帰属を前提として在留と生活を保障されている法的地位にある。にもかかわらず、形式的に日本国籍を有しないという一点のみをもって、調停委員等の職務から一律に排除することは、著しく不合理な差別的取扱いである。
 むしろ、現に多くの外国籍者が生活しており、事件当事者となる場合もあることからすれば、外国籍の調停委員等が関与することは、実情に即した合意や紛争の早期解決のために極めて有意義である。現に過去には外国籍の当会会員が民事調停委員として任命され、14年余りにわたり紛争解決に尽力し、大阪地方裁判所長より表彰を受けた実例もある。
 しかも、この度推薦した会員は、いずれも弁護士経験豊富であり、資質も申し分なく、調停委員等を務めるに相応しいと考えて当会が自信を持って推薦した人物である。採用されていれば、調停委員等として、各人の識見及び経験を活かして奮闘し、紛争解決に貢献したはずである。にもかかわらず、明確な法的根拠なくその推薦を無にする対応には到底納得できるものではない。
 形式的に日本国籍を有しないという点のみを理由とする不採用は、憲法第14条、自由権規約第26条及び人種差別撤廃条約第5条の平等原則に反する不合理な差別である。また、この点については、国連人種差別撤廃委員会からも過去に繰り返し懸念が表明され、是正が勧告されているところである。
 以上のとおり、調停委員等の採用にあたり、外国籍者を差別する運用が長期にわたり行われ、この度も当会の韓国籍会員が調停委員等の採用から除外されたことに対し、当会は、強く抗議するとともに、大阪家庭裁判所、大阪地方裁判所及び最高裁判所に対し、国籍を問わず当会の推薦する調停委員等を任命することを求めるものである。

2026年(令和8年)1月23日
          大 阪 弁 護 士 会      
          会長 森 本  宏

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