国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用の抜本的改善を求める声明
・国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用の抜本的改善を求める声明
国選弁護制度は、憲法第37条第3項が保障する刑事被告人の弁護人依頼権を実質化し、適正な刑事手続を確保するための不可欠な制度である。また、被疑者段階における国選弁護制度も、身体拘束を受けた被疑者の防御権を保障し、冤罪を防止するために極めて重要な役割を果たしている。
しかしながら、現行の国選弁護報酬は、とりわけ基礎報酬が著しく低額である。私選弁護報酬との間に著しい格差があり、弁護士の専門性や国選弁護活動に十分な時間と労力を投入するには見合わない水準に据え置かれている。
国選弁護報酬は長年にわたりほとんど改善されていない一方で、物価は大幅に上昇している。総務省統計局の消費者物価指数(大阪市、2020年=100)によれば、2024年は106.4となっており、近年の物価上昇は著しく、大阪府内の事務所賃料、光熱費、人件費等の固定費が上昇するなど、弁護士の事務所運営コストも大幅に増加している。しかし、国選弁護報酬にはこうした物価上昇が全く反映されておらず、実質的な報酬は年々目減りしている状況にある。公判期日や接見等に要する時間に対する日当も、実際の時間的拘束や労力に見合わない水準であるため、弁護士が自己負担を強いられる状況にある。そのため、弁護士、とりわけ若手弁護士にとっては、国選弁護事件を受任することの経済的負担は重い。
また、近時の大阪地方裁判所管内における国選弁護事件数は高水準で、かつ増加傾向で推移しており、弁護士一人当たりの負担が増大している。しかしながら、国選弁護人への登録は減少傾向にあり、登録者も当会会員の約20パーセント程度と低迷しているため、弁護士一人あたりの負担(時間と労力)は一層大きくなっている。特に被疑者国選事件については、迅速な対応が求められ、弁護士の負担は極めて大きい。大阪では国選弁護を引き受ける弁護士の確保が深刻な問題となっている。
以上から、国選弁護報酬の抜本的な改善がなされないまま推移するなら、国選弁護を担う弁護士の減少を招き、制度の持続可能性そのものが危うくなる。国選弁護事件は、特に若手弁護士が刑事弁護に取り組んで経験を積む重要な機会であり、このことは刑事弁護の質の維持と国選弁護制度の継続的な担い手の育成・確保に繋がるものであるが、国選弁護報酬の低さが刑事弁護の質の維持と制度の継続的な担い手の育成・確保を阻害する要因になっている。今や国選弁護制度は、国選弁護事件を受任する一部弁護士の献身的努力により辛うじて維持されているのが実情であるが、このような事態は異常といわざるをえない。
国選弁護制度は、刑事司法制度の根幹をなすものであり、その充実は国の責務である。適正な刑事手続を確保し、冤罪を防止するためには、国選弁護人が十分な時間と労力を投入できる環境を整備することが不可欠である。そのためには、抜本的な改善策として、国選弁護の基礎報酬の大幅な引き上げ、及び接見交通費等の実費、日当等の各種弁護費用の適切な補償を実施する必要があり、喫緊の課題である。
よって、当会は、国に対し、国選弁護制度における基礎報酬及び各種弁護費用について、大幅な増額に向けての、抜本的な改善を行うことを強く求める。
大 阪 弁 護 士 会
会長 森 本 宏