「飯塚事件」第2次再審請求即時抗告棄却決定に関する会長声明

「飯塚事件」第2次再審請求即時抗告棄却決定に関する会長声明

 2026年(令和8年)2月16日、福岡高等裁判所第1刑事部は、いわゆる「飯塚事件」に関する第2次再審請求事件につき、2024年(令和6年)6月5日に再審請求を棄却した福岡地方裁判所の原決定を是認し、即時抗告を棄却する決定をした。

 1 本件は、1992年(平成4年)2月20日、福岡県飯塚市において、小学校1年生の女児2名(いずれも当時7歳)が登校途中に失踪し、翌21日に、福岡県甘木市内の山中で遺体が発見された事件である。事件発生から、2年以上経過した後、久間三千年氏が、略取誘拐、殺人、死体遺棄の容疑で逮捕・起訴された。久間氏は一貫して本件への関与を全面的に否認したが、1999年(平成11年)9月29日、福岡地方裁判所は死刑判決を言い渡し、その後、控訴・上告も棄却され、2006年(平成18年)10月8日、死刑判決が確定した。久間氏はその後も無実を訴えていたが、死刑判決の確定からわずか2年後の2008年(平成20年)10月28日、久間氏(当時70歳)に対し死刑が執行された。そのため、久間氏の遺族は、誤った刑事手続によって命を奪われたとして、2009年(平成21年)10月28日に第1次再審請求を申し立て、これが棄却されたことから、2021年(令和3年)7月9日に第2次再審請求を申し立てたものである。

 2 本件では、久間氏と犯行とを結びつける直接証拠は存在せず、情況証拠のみによって有罪認定が行われた。そこで、第1次再審請求においては、情況証拠の一つとされた「MCT118型DNA鑑定」(同じ頃に発生し、再審無罪となったいわゆる足利事件においても証拠とされていた)等が全く信用できないとする筑波大学法医学教室の本田克也教授の鑑定書や、もう一つの情況証拠の柱とされた目撃証言に関し、供述心理学ないし実験心理学に基づき、その信用性に疑問を呈した日本大学心理学研究室の厳島行雄教授の鑑定書を新証拠として提出し、本件における証拠構造の脆弱性を明らかにした。
 また第2次再審請求では、証人尋問が実施され、被害女児の目撃者の供述調書が、警察官の強引な誘導により作成されたもので、被害女児を目撃したのは事件当日のことではないこと、犯行使用車両と思われる車の運転者も久間氏ではなく、車両の特徴も久間氏の所有車両とは異なることが明らかにされていた。

 3 しかしながら、この度の決定は、新たな証言について、その信用性をいずれも否定し、即時抗告を棄却した。本決定は、新証拠の評価及び新旧全証拠の総合評価を適切に行ったとは言えず、白鳥・財田川決定にも違反する判断であると言わざるを得ない。

 4 なお本件においては、以下の問題点についても、明らかになった。
 第一に、証拠開示の問題である。すなわち、第2次再審請求における請求審での審理において、弁護団から、目撃証人の初期供述の証拠開示勧告の申立てがなされ、福岡地方裁判所が検察官に対し証拠リストの開示を文書で勧告したところ、検察官は、裁判所にはこのような勧告をする権限はないとして、その開示を拒否した。即時抗告審では、裁判所が裁判所だけに証拠リストを提示するインカメラ審理に応じるよう勧告し、検察官もこれに応じたことから実施には至ったものの、結局、裁判所は検察官に対し、弁護団に対する証拠リストの開示を勧告することはなかった。
このような検察官や、裁判所の対応は、えん罪救済の途を容易に阻むものであり、到底許し難い。今後、このような対応がなされないよう、再審請求審における幅広い証拠の開示を義務づける規定の創設が強く求められる。
 第二に、久間氏に対して死刑が執行された点である。当会は、2019年(令和元年)12月9日、政府及び国に対し、死刑制度を廃止すること、死刑制度の廃止までの間、死刑の執行を停止すること等の死刑制度の廃止に関する決議をしている。死刑を廃止すべき重要な根拠の一つは、万が一死刑判決が誤判であった場合に、これが執行されてしまうと取り返しがつかないということにある。飯塚事件は、えん罪の疑いが極めて濃い事案であったにもかかわらず、死刑が執行されたことは、断じて許すことができない。

 5 当会は、改めて、えん罪の適正かつ迅速な救済のための再審法改正及び死刑制度の廃止、並びに直ちに死刑確定者に対する死刑の執行を停止することを求めるとともに、本件の再審請求について、引き続き注視していく所存である。

2026年(令和8年)2月24日
          大 阪 弁 護 士 会      
          会長 森 本  宏

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