「日野町事件」において、検察官の特別抗告を棄却し再審開始を維持した最高裁決定についての会長声明
・「日野町事件」において、検察官の特別抗告を棄却し再審開始を維持した最高裁決定についての会長声明
2026年(令和8年)2月24日、最高裁判所第二小法廷(岡村和美裁判長)は、いわゆる日野町事件第2次再審請求事件の検察官による特別抗告の棄却を決定し、2018年(平成30年)7月11日の大津地方裁判所による再審開始決定が確定した。
日野町事件は、1984年(昭和59年)12月、滋賀県蒲生郡日野町で発生したとされる強盗殺人事件である。阪原弘氏(以下「阪原氏」という。)は、1988年(昭和63年)3月に逮捕され、捜査段階において自白調書が作成されたものの、起訴後一貫して無罪を訴えてきたが、第一審で無期懲役の有罪判決を受けた。その後の控訴・上告ともに棄却され、2000年(平成12年)9月に有罪判決が確定した。
本件の犯人性を裏付ける直接の証拠は、捜査段階で作成された自白調書以外には存在しない。第一審は、その自白調書の信用性を否定しながら、間接事実の積み重ねによって有罪判決を認定した。これに対し、控訴審では、間接事実のみでは有罪を維持できないとしたものの、自白調書の任意性及び信用性を認め、有罪認定は揺るがないと結論付けた。
このように、本件は、第一審と控訴審とで証拠構造が相反する、まさに脆弱な証拠構造を特徴とする自白依存型の事件といえる。
2001年(平成13年)11月に阪原氏が請求人となり申し立てた第1次再審請求では、その即時抗告審の審理途中の2011年(平成23年)3月に、阪原氏が病気のためこの世を去り、手続きが終了してしまった。
そして、2012年(平成24年)3月、遺族が請求人となり第2次再審請求を申し立て、2018年(平成30年)7月に大津地方裁判所が再審開始を決定した。
しかし、この決定に対して検察官が即時抗告を申し立てたものの、2023年(令和5年)2月27日には大阪高等裁判所がこれを棄却し、再審開始を維持したが、検察官はさらにこれに特別抗告を申し立てたため、最高裁判所にて審理されていた。
今回の決定は、検察官による特別抗告を棄却し、再審開始の確定をもって長らく続いた本件の再審請求手続に終止符を打つものであり、当会としても、これを高く評価するものである。
しかしながら、大津地方裁判所による2018年に出された再審開始決定から約8年もの歳月が経過しており、再審の開始に至るまでに相当長期の期間を要したことは極めて問題である。その原因の大きな要因は、検察官の2度にわたる不服申立てによるものであり、早急にこれを禁止する法改正が必要である。先の法制審議会で採択された再審法改正の要綱(骨子)では、検察官の不服申立て禁止が盛り込まれなかったが、今回の決定に至る経緯は、不服申立て禁止が必要であることを明確に示している。
また、本件では、第二次再審請求において、警察が検察官に送致していなかった引当捜査時の写真のネガが開示されたことで、被害品(金庫)発見現場までの案内経過の写真の入れ替えや、死体遺棄状況の再現を繰り返し練習させていたことなどの違法・不当な捜査の実態が明らかとなった。これにより、確定審において阪原氏の犯人性を根拠づけた事実認定が大きく揺らぎ、再審開始の判断へとつながった。このことは、捜査機関が裁判所に提出することなく保管している証拠までも開示させることが、えん罪被害者を救済するためにいかに重要であるかを示している。この点でも要綱(骨子)の証拠開示は当該再審の請求の理由との関連性を要求するなど、限定的に過ぎると言わざるを得ない。検察官の不服申立て禁止と併せて、国会の法案審議において、修正されなければならない。
当会は、阪原氏の無罪が確定するまで引き続き支援を行うとともに、えん罪被害者が適正かつ迅速に救済されるよう、刑事再審法改正の早期実現に向けて、不断の努力を続けていく所存である。
大 阪 弁 護 士 会
会長 森 本 宏