刑事法廷内における手錠・腰縄使用の改善を歓迎しつつ、被疑者・被告人の手錠・腰縄が刑事法廷内で原則として使用されないことを求める会長声明

刑事法廷内における手錠・腰縄使用の改善を歓迎しつつ、被疑者・被告人の手錠・腰縄が刑事法廷内で原則として使用されないことを求める会長声明

 現在、身体拘束を受けている被疑者・被告人(以下、「被告人等」という。)は、手錠・腰縄を施されたままの姿で刑事法廷に入退廷させられ、その姿を傍聴人をはじめ、裁判官を含めた法廷内の全ての人に晒されることを余儀なくされている。
 このことは、個人の尊厳の保持、無罪推定の権利等、憲法及び国際人権条約からして極めて問題であり、当会は、2015年(平成27年)に大阪地方裁判所に対して、柔軟な対応を行うように是正を求め、他会に先駆けて問題提起し、2018年(平成30年)9月28日には、「刑事法廷内での手錠・腰縄使用問題国賠請求訴訟判決についての会長声明」を発出した。2024年(令和6年)10月4日の人権大会では、日本弁護士連合会が「刑事法廷内における入退廷時に被疑者・被告人に対して手錠・腰縄を使用しないことを求める決議」を採択し、当会及び他の地方単位会でも同様の決議・会長声明が続いた。
 2026年(令和8年)1月26日、最高裁判所事務総局刑事局は、「刑事裁判の法廷における被告人の戒護について(事務連絡)」を各高等裁判所及び地方裁判所に発出した。この事務連絡により、今後は、刑事法廷内の被告人出入り口付近に衝立を設置し、当該衝立内で、被告人の手錠及び腰縄を解錠・施錠する取り扱いに改められることになる。これにより、刑事法廷において被告人の手錠・腰縄姿が、傍聴人に晒されてきた現在の運用は、原則として改められる。
 当会は、裁判所が、刑事法廷内に衝立を設置し、その中で被告人等の手錠・腰縄を解錠・施錠する措置をとることを歓迎する。
 もっとも、新しい運用開始後に、刑事裁判において審理を主宰し判断を下す当事者である裁判官が、被告人等の手錠・腰縄を目視することになるのであれば、なお問題は残ることになる。被告人等の手錠・腰縄を裁判官が目視することは、被告人等の無罪推定の権利、防御権を侵害する。また、刑事訴訟法第287条の定める身体不拘束原則は、身体拘束されたまま刑事法廷に入退廷することになる被告人等の心理面への影響の軽減のみならず、裁判の公正に対する信頼確保を目的としているところ、被告人等の手錠・腰縄を裁判官が目視することは、刑事訴訟法の趣旨も損ないかねない。類似の刑事訴訟法がある韓国では、被告人等は、刑事法廷外で手錠を外され、裁判官が被告人等の拘束されている姿を見ることはない。
 当会は、被告人等の人権保障及び裁判の信頼確保の観点から、裁判所に対して、刑事法廷内において衝立を設置し、衝立内で被告人等の手錠・腰縄を解錠・施錠する際には、裁判官が、被告人等の手錠・腰縄を目視できないように衝立を設置することを求める。また、将来的には、被告人等に逃亡、暴行等の具体的・現実的おそれがない限り、被告人等の手錠・腰縄が法廷外で解錠・施錠され、被告人等が拘束されずに刑事法廷に入退廷する運用となることを求める。

2026年(令和8年)3月25日
          大 阪 弁 護 士 会      
          会長 森 本  宏

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