物価の上昇に応じた大幅な最低賃金の引上げを求める会長声明
1 本年7月頃、中央最低賃金審議会は、厚生労働大臣に対し、2025年度(令和7年度)地域別最低賃金額改定の目安について答申を行う予定である。毎年、同審議会の答申に基づき、全国の地域別最低賃金審議会が地域別最低賃金の改定額を答申し、これを受けて都道府県労働局長が地域別最低賃金の改定額を決定する。
2 大阪府における最低賃金は、昨年10月16日に、前年度より63円引き上げられ時給1,177円とされた。大阪府における労働者の生計費の観点からすれば、今年度において前年度の引き上げ率を上回る大幅な引き上げが必要である。
まず、1,177円で1日8時間、1週40時間、年52週働いたとしても、月収約20万4000円、年収約244万円にしかならない。この点、労働組合の全国組織が研究者(中澤秀一准教授)と協力して調査した結果によれば、若者が自立し人間らしく生活するために最低必要な生計費は大阪市において月27万4021円となっている。
また、大阪市の2025年の消費者物価指数は前年比3.2%増(2024年は前年比2.8%増)、食料品は前年比6.3%増(2024年は前年比4%増)となっており、2024年よりもさらに物価上昇の割合が大きくなっている。さらに、食料品の中でも主食となる穀類は前年比21.1%増(2024年は前年比8.2%増)となっており、大幅な上昇となっている。
このような大幅な物価上昇の状況の中で労働者の生活を守るためには、最低賃金を少なくとも前年の引き上げ率を上回る割合で大幅に引き上げ、全ての労働者の賃金を上昇させる必要がある。加えて、一般に低所得者世帯であるほど消費支出に占める食料の比重が高く、主食となる穀物をはじめとした食料の長引く価格の高騰により、これらの世帯が深刻な影響を受けている。同世帯の家計を支える者の中には非正規労働者を含む最低賃金近傍の労働者が少なくないことを踏まえれば、同世帯の生活を守るためにも、喫緊に、物価の上昇に応じた大幅な最低賃金の引上げを実施する必要がある。
3 他方、大阪府における賃金及び通常の事業の賃金支払能力の観点からしても、2026年度の大阪府内の春闘賃上げ妥結状況における妥結額が前年度よりも高く、賃上げ率が加重平均5%を超えていることからすれば、前年度の引き上げ率を上回る大幅な引き上げを行うことができないとはいえない。
もっとも、長引く物価高騰は消費者のみならず中小企業にも大きな打撃を与えている。最低賃金引上げのためには、中小企業の健全な経営が可能となる基盤の形成が必要である。そこで、独占禁止法や中小受託取引適正化法をこれまで以上に積極的に運用して消費者に転嫁しない形で原材料費等の価格上昇が適正に取引価格に転嫁されるようにし、従来の業務改善助成金に加えて社会保険料の事業者負担の減免などの中小企業支援が必要不可欠である。したがって、国は、これらの抜本的な中小企業支援策の実現にも引き続き取り組むべきである。
4 以上のとおり、当会は、本年の最低賃金の改定にあたり、中央最低賃金審議会に対し、物価の上昇に対応すべく大幅な最低賃金額の引上げを内容とする答申を行うこと、大阪地方最低賃金審議会に対し、中央最低賃金審議会の提示する目安に縛られることなく大阪府の最低賃金の大幅な引上げを実施することを求めるとともに、国においても、最低賃金引き上げのため、引き続き中小企業支援を行うことを求める。
大 阪 弁 護 士 会
会 長 中 井 洋 恵