東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故から3年を迎え あらためて「人間の復興」をめざす会長声明

東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故から3年を迎え あらためて「人間の復興」をめざす会長声明

 本日、東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故から3年を迎えた。
 震災復興は今なお途上であり、とりわけ原発事故による関連死は1000人を超えると報道されているし、福島県からの県外避難者は5万人近くに及んでいる。原発事故の事後対応なかでも汚染水問題は、安倍首相が東京オリンピック招致の場で「状況はコントロールされている」と発言したにもかかわらず、未だ収束の目途が立たっていない。
 国は、年間20ミリシーベルト以下の放射線量では健康に影響はないとして、避難区域の指定解除の方針を打ち出した。しかし、この数値を裏付ける医学的根拠はなく、多くの人たちが放射能被曝から避難することを余儀なくされている。また、放射能汚染地域に滞在する人たちは、日々放射能被曝による健康被害の不安の中での生活を強いられている。特に放射能の影響を受けやすい子どもたちは、従前のような自然とふれあいながらの生活を奪われている。また、避難した人たちにとっても、自らの故郷を失い、多くの友人や恩師、そして、母子避難では父親との別離を強いられている。
 憲法第13条は個人の尊厳を基本理念として幸福追求権を保障し、憲法第25条は生存権を保障しており、国はこれらの権利を実現する責務を負っている。また、子どもの権利条約によって、子どもの生存及び発達を可能な最大限の範囲で確保する責務がある。さらに、国連人権委員会による「国内強制移動に関する指導原理」に従って、国内避難民に対して、すべての段階における恒久的解決を促進する責務を負っている。一昨年6月に「子ども被災者支援法」が成立し、昨年10月には「基本方針」が策定されたが、被災者の意見が十分に反映されたものではなく、健康被害に対する対策も具体化されているとはいえない。
 当会は、国に対し、東日本大震災の復興支援に全力を尽くすとともに、物理的・外形的な復旧・復興に止まらず一人ひとりを尊重した「人間の復興」をめざすよう、あらためて強く要求するものである。
当会も、人権擁護と社会正義の実現という弁護士の使命に基づき、東日本大震災の復興支援に協力を惜しまないとともに、とりわけ原発事故から避難した人も、残った人も、また帰還した人も原発事故前の「ふつうの暮らし」を取り戻し、「人間の復興」が実現するよう今後とも全力を尽くす所存である。

                            

2014年(平成26年)3月11日

大阪弁護士会
会長 福 原 哲 晃

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