外国籍会員の調停委員任命を求める会長声明

外国籍会員の調停委員任命を求める会長声明

 当会は、大阪家庭裁判所からの推薦依頼を受けて、2013年(平成25年)11月1日、1名の大韓民国籍会員を含む当会会員52名を同家庭裁判所本庁勤務の家事調停委員に推薦した。これに対し、同年12月12日、同家庭裁判所は当会に対し、外国籍であることのみを理由として大韓民国籍会員につき最高裁判所に任命上申を行わない旨の通知をした。当会は、2007年(平成19年)から4回にわたり、外国籍会員を家事調停委員に推薦したが、いずれも大阪家庭裁判所から外国籍であることのみを理由として任命上申を拒絶され、今回で5回目の拒絶となったもので極めて遺憾である。
 ところで、最高裁判所は、地方公務員に関して、住民の権利義務を直接形成し、その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い、若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い、又はこれらに参画することを職務とするもの(以下「公権力行使等地方公務員」という。)については、国民主権の原理に基づき、原則として日本国籍を有する者が就任することが想定されていると見るべきであり、外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは、本来我が国の法体系の想定するところではないとしている(2005年(平成17年)1月26日大法廷判決)。
 しかしながら、調停委員の役割は、当事者双方の話合いの中で法律的な観点から助言や斡旋、解決案の提示を行い、合意を促して紛争の解決にあたるというものであって、単独で公権的判断を行う裁判官のそれとは同一でない。また、調停委員は、調停委員会の一員として決議に参加するが、これは調停制度による紛争解決の実行性を確保するための付随的なものにすぎず、その職務の性質上、当事者の権利を制約することは想定されていない。このような職務の性質及び内容に鑑みても、調停委員の職務が「公権力の行使等」に当たると解することはできない。
 また、弁護士については、調停委員として具体的な専門等が問題とされておらず、当然に法的紛争の解決に必要な専門的知識を有する者と位置付けられており、しかも過去に採用実例があることからしても、国籍が問題となる余地はない。最高裁判所が制定した民事調停委員及び家事調停委員規則第1条においても、「弁護士となる資格を有する者」等の中から調停委員を任命すると定めているのみで、日本国籍を有することを任命の要件とはしていない。
 従って、調停委員について、日本国籍を有しないことのみを理由として任命上申を拒絶することは、法律に定めのない事項を理由とするものであり、法治主義に反すると同時に、憲法第14条にも違反するものと言わざるを得ない。
 よって、当会は、大阪家庭裁判所に対して外国籍会員の調停委員任命上申の拒絶を取り消して任用を行うよう、また、最高裁判所に対して外国籍会員を調停委員に任命するよう強く求める。

2014年(平成26年)3月11日

大阪弁護士会
会長 福 原 哲 晃

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