憲法記念日にあたっての会長談話

憲法記念日にあたっての会長談話

日本国憲法の施行から67年目の憲法記念日を迎えました。
憲法は、人権保障のために国家権力に縛りをかける最高法規です。憲法は、この立憲主義の基本理念の下で、戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認という恒久平和主義と平和的生存権の保障を基本原理として定めました(前文、9条)。
憲法9条と自衛権、自衛隊の関係をどのように理解するのかについては様々な考え方がありますが、政府は、長年にわたって、①わが国に対する急迫不正の侵害(武力攻撃)が存在すること、②この攻撃を排除するため、ほかに適当な手段がないこと、③自衛権行使の方法が、必要最小限度の実力行使にとどまること、という3つの要件に該当する場合に限り、自衛権(個別的自衛権)を行使することができ、わが国を防衛するための最小限度の実力を持つことは憲法9条の下でも許されるが、外国に対する武力攻撃を阻止することをその内容とする集団的自衛権については、①の要件を欠くため、その行使はできない、集団的自衛権の行使が認められるためには、憲法を改正するという手段をとらなければならないとの憲法解釈を採ってきました。
ところが、現在、政府に、憲法改正手続をとらないまま、憲法9条の解釈を変更することによって、集団的自衛権を行使できるようにしようという動きがあります。
しかしながら、これまでに集団的自衛権が行使された事例とされる1965年のアメリカのベトナム戦争や2001年のNATOのアフガニスタン攻撃等をみると、集団的自衛権は、大国が小国に軍事介入するための根拠として使われてきました。
わが国がもし集団的自衛権の行使ができることになると、外国の戦争に巻き込まれて、自衛隊員が外国で人を殺し、または自衛隊員が殺される危険性も高まります。国民はそのような状況を望んでいるのでしょうか。
当会は、2013年11月16日、「集団的自衛権について考える」とのテーマでシンポジウムを開き、集団的自衛権の問題点について議論をし、また2014年1月21日には、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に反対する意見書を採択して公表しています。
憲法前文と9条が規定している恒久平和主義と平和的生存権の保障は憲法の基本原理です。今、憲法改正の手続を経ないまま、集団的自衛権の行使は許されないとする確立した政府の憲法解釈を軽々に変更することは許されません。
当会は、憲法記念日にあたり、憲法の基本原理を尊重する立場から、政府が憲法解釈を変更することによって集団的自衛権の行使を認めることに対して、改めて強く反対します。
一緒に平和憲法を守っていきましょう。

2014年(平成26年)5月3日
大阪弁護士会
会長 石 田 法 子

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