行政書士法改正に反対する会長声明

行政書士法改正に反対する会長声明

 日本行政書士会連合会は、行政書士法を改正し、行政書士が作成することのできる官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求等の不服申立ての代理権を行政書士の業務範囲とすることを求めてきたが、日本弁護士連合会をはじめ、日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会、日本弁理士会、全国社会保険労務士会連合会等からも反対を受けたことから、平成26年3月、不服申立て代理権の対象を、「現に行政書士が作成した書類にかかる許認可等」に限定した修正案を作成し、これを今国会に議員立法として提出させようとしている。
 しかし、同年4月25日、前記各団体もこれに強く反対する意見を発表しているものであり、以下に指摘するとおり、このような修正をしたとしても、行政書士に不服申立代理権を与える本質的な問題は何ら克服されていない。

1 行政書士制度の趣旨に反すること
  行政書士制度の趣旨は、行政の補助機関として行政事務の円滑な実施に寄与することである。しかし、行政不服申立て制度は、行政庁との間で争いのある事実関係や法律関係について、行政庁に対して不服を申し立て、もって国民の権利利益を救済する制度であり、行政事務の円滑な実施という行政書士制度の趣旨と衝突し、行政書士制度とはその性質上本質的に反するものである。

2 行政争訟における国民の権利利益の救済が阻害されること
 (1)行政書士の業務は、一般法律常識的な知識に基づいて、依頼者の意思内容を整序して書類作成等をするというものであり、行政書士は行政法の専門家ではなく、その資格に求められる知識、能力に固有の専門性はない。
これに対し、行政不服申立てにおいて国民の権利利益を救済するためには、行政不服審査法のみならず、行政事件訴訟法や民事訴訟法にも精通し、かつ行政法の法解釈及び事実認定を行うことのできる知識、能力が不可欠である。
行政書士資格にはこのような行政不服申立てを代理する知識、能力は前提とされておらず、行政書士にその権限を認めることは、国民の権利利益を救済するどころか、かえってこれを阻害する危険がある。
 (2)しかも、行政不服申立ては、国民と行政庁との対立関係を前提とするものであるところ、行政書士の監督や懲戒は都道府県知事が行い、行政書士会に対する監督は都道府県知事が、日本行政書士会連合会に対する監督は総務大臣がそれぞれ行うものとされている。したがって、このような行政書士については、行政不服申立てにおいて、自己の監督機関等である国や都道府県に対して心理的に萎縮してしまうことが強く懸念され、果たして行政庁との対立関係に立って国民の権利利益の救済を図ることができるのか、大いに疑問がある。

3 弁護士・弁護士会の対応と決意
  そもそも行政手続業務について、近年多くの弁護士が活動しており、行政不服申立ての分野においても、今後弁護士が今まで以上に進出していくために各種研修の充実等の施策が進められている。
当会としても、あらためて行政不服申立てにおける国民の権利利益の救済に十全を尽くしていく決意である。

 以上の理由から、当会は行政書士に行政不服申立代理権を付与することに強く反対するものである。

2014年(平成26年)5月12日
大阪弁護士会
会長 石 田 法 子

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