死刑執行に抗議する会長声明

死刑執行に抗議する会長声明

 本年8月29日、東京拘置所と仙台拘置支所において、各1名(合計2名)の死刑が執行された。谷垣禎一法務大臣が就任してから今回も含めて既に6回(合計11名)もの死刑執行が行われたことになる。この死刑の執行は、本年9月3日には内閣改造による法務大臣の交代が予想される中での拙速なものであり、当会は、改めて死刑執行に強く抗議する。
 また、今回執行された仙台拘置支所の元死刑囚については、本年8月6日に第三次再審請求の特別抗告が棄却された直後で、かつ、第四次再審請求に向けて動いていた矢先の執行であった。したがって、再審請求が申立てられることによって死刑執行が行われなくなるという事態を回避するために、拙速に行われた可能性も否定できず、この点についての批判も免れない。他方、東京拘置所において執行された元死刑囚は、確定審の裁判で無罪を主張していたものの、2012年(平成24年)10月23日に最高裁で元死刑囚からの上告が棄却されて死刑判決が確定したものであり、上告棄却から執行までの間には2年も経過しておらず、前回、前々回の死刑の執行でもみられたように、これまでの例に比べて判決確定から死刑の執行までの期間が明らかに短くなってきている。
 さらに、本年3月27日には、袴田巖氏の第二次再審請求事件について、静岡地裁が、再審の開始の決定だけではなく、死刑及び拘置の執行を停止する決定も行った。かかる袴田事件に端を発し、現在では、捜査の在り方や死刑制度の問題点についての社会的な関心が高まっている時期でもあり、あえてこの時期に死刑を執行したことについても強く抗議するものである。
 当会は、会内に死刑廃止検討プロジェクトチームを設置し、死刑のない社会を目指してどのような活動をしていくべきかの議論を重ねてきた。そして、死刑の執行方法に関するDVDの作成、シンポジウムの開催などを通じて、市民とともに死刑制度の問題点を検討し、死刑制度に関する全社会的議論の必要性を訴えてきた。また、再三にわたり、政府に対しても、死刑執行の停止、死刑制度についての全社会的議論を行うように呼びかけてきた。しかし、この間、死刑囚の処遇についての情報が一部公開されたものの、十分な情報公開がなされたとはいえず、死刑制度について全社会的議論を行う場すら設けられていない。
 死刑廃止は国際的な趨勢であり、世界で死刑を廃止しまたは停止している国は140カ国となっており、全世界の3分の2以上の国において死刑の執行はなされていない。また、2013年(平成25年)5月31日に、国連拷問禁止委員会の総括所見が発表され、わが国に対して、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けている。さらに、本年7月24日には、国連人権(自由権)規約委員会は、日本政府に対して「死刑廃止を十分に考慮すること」との勧告を行っている。にもかかわらず、政府は、かかる勧告を無視するかたちで執行を断行したのである。
 当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、改めて死刑執行を停止し、死刑に関する情報を広く国民に公開することを要請するとともに、死刑制度についての全社会的議論を踏まえたうえで、その抜本的な検討および見直しを行うことを求めるものである。

2014年(平成26年)9月1日
大阪弁護士会
会長 石 田 法 子

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