労働時間規制を大幅に緩和する労働基準法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明

労働時間規制を大幅に緩和する労働基準法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明

 現在、政府は、「労働基準法等の一部を改正する法律案」(以下「本法案」という。)を閣議決定し、第189回国会に提出しようとしている。
 本法案は、高度専門的知識を要する業務に従事し、年収が平均給与額の3倍の額を相当程度上回る等の要件を満たす労働者について、労働時間規制の適用を除外する「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)」を創設することや、企画業務型裁量労働制を拡大する等、労働時間規制を大きく緩和するものとなっている。
 現行の労働基準法では、1日8時間1週40時間の法定労働時間規制(同法32条)、6時間超で45分・8時間超で60分の休憩付与義務(同法34条)、4週4日以上の休日付与義務(同法35条)、時間外・休日・深夜労働に対する割増賃金支払義務(同法37条)といった労働時間規制が定められている。
 ところが、本法案が創設しようとする特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)は、その対象労働者について、これら労働時間規制をいずれも一切適用しないものとするものである。すなわち、対象となる労働者が休日・休憩を取らずにどれだけ時間外・深夜・休日労働をしたとしても、使用者は割増賃金の支払いを免れ、その結果、長時間労働に歯止めをかけることができなくなるおそれがある。
 また、本法案では、業務の遂行方法が大幅に労働者の裁量に委ねられる一定の業務に携わる労働者について、労働時間の計算を実労働時間ではなくみなし労働時間によって行うことを認める裁量労働制のうち、企画業務型裁量労働制の対象業務の範囲を拡大することや、制度導入のための手続の簡素化が予定されている。しかし、現状においても、みなし労働時間と実労働時間が大きく乖離し、裁量労働制下の労働者に長時間労働の傾向が見られるところ、対象範囲の拡大や手続の簡素化は、長時間労働にさらに拍車をかけることになる。
 長時間労働は労働者の健康に悪影響を及ぼす。我が国では、長時間労働を原因とする過労死・過労自殺が深刻な社会問題となっている。労働者の生命と健康を保持するためにも、労働者の家族的・社会的・文化的な生活(ワーク・ライフ・バランス)を確保するためにも、さらには、ワークシェアリングによる雇用創出のためにも、長時間労働を抑制することは喫緊の課題である。
 しかし、長時間労働を抑制する実効的な規制を欠いたまま、労働時間規制を大幅に緩和する本法案は、更なる長時間労働を助長しかねない危険性を有する。
よって、当会は、労働時間規制を大幅に緩和する本法案に反対する。

2015年(平成27年)3月27日 
大阪弁護士会
会長 石 田 法 子

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