個人情報保護法改正案に対する会長声明

個人情報保護法改正案に対する会長声明

 現在、個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という。)の改正案(以下「本改正案」という。)が国会に提出され、審議中である。
 個人情報保護法の改正に関して、当会は、2014年(平成26年)7月23日付「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱に対する意見書」で、その問題点を指摘してきたが、本改正案には、なお、以下の問題がある。
 第一に、個人情報保護法が規制する範囲の拡大についてである。本改正案では、「個人情報」の定義として新たに「個人識別符号が含まれるもの」が加えられ、さらに、個人情報の取扱人数5000人以下の小規模事業者について個人情報取扱事業者としない規定を削除し、こうした小規模事業者についても個人情報保護法を適用することとしている。
 「個人識別符号が含まれるもの」を加えることに関しては、顔認識データ、指紋データが個人情報であることが明確化される方向で検討が進められており、携帯電話の個体識別番号のような端末識別性のある番号、継続的に収集される購買・貸出履歴、視聴履歴、位置情報等、従来それ自体では個人情報に含まれないがその取扱いによってはプライバシー上保護される必要のある情報について保護する道を開くこととなり、その点は評価に値する。
 しかしながら、「個人情報」の定義の追加も、小規模事業者の除外規定の削除も、個人情報保護法の規制範囲の拡大にほかならないところ、そもそも包括的な民間規制法により情報流通を規制することは問題と言わざるを得ない。すなわち、個人情報をプライバシー上の憂慮が生じる形で集中的に取り扱う個人情報取扱事業者は限られているにも関わらず、ごく断片的にしか当該情報を扱わない小規模事業者に対しても包括的民間規制法である個人情報保護法による規制を及ぼせば、情報の適切な流通に対する萎縮効果(いわゆる過剰反応)をもたらし、ひいては流通されるべき情報が得られないことで国民の知る権利(憲法第21条)に影響を及ぼすおそれがある。
 当会は、個人情報等の保護(規制)の範囲を広げる場合でも、包括的民間規制法である個人情報保護法ではなく、個別法の制定等によって、分野・情報類型に対応した適切な保護(規制)を図ることを検討すべきであることを従前から主張してきたが、あらためて提唱する次第である。
 第二に、個人情報保護委員会の権限の範囲についてである。本改正案では、第三者機関として個人情報保護委員会が設置され、指導、立入検査、勧告等の監督を行う権限が付与されることとなっている。第三者機関を設置することや、第三者機関に監督権限を与えることについては、当会もおおむね賛成である。
 しかしながら、本改正案における個人情報保護委員会の指導等の権能は、個人情報取扱事業者等、すなわち民間事業者に対するものに限られている。個人情報の利活用は、民間事業者のみならず、行政機関、独立行政法人及び地方公共団体も予定しているところであって、行政機関等に対しても適切な監督がなされる必要がある。
 したがって、個人情報保護委員会の監督権限を、行政機関等に対しても及ぼすべきである。
 以上のとおり、当会は、本改正案を見直すよう求める。

2015年(平成27年)4月21日
大阪弁護士会      
会長 松 葉 知 幸

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