弁護士会から
広報誌
オピニオンスライス 10月号
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アナウンサー
武田和歌子さん
TAKEDA, Wakako
朝日放送のアナウンサーとして、ラジオや「news おかえり」の水曜MC等で活躍中の武田和歌子さんにインタビューしました。プライベートでは、2児の母として、子育てと仕事に多忙な毎日を送っておられます。これまでのキャリアについて、そして仕事とプライベートの両立等について、伺いました。
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アナウンサーを目指したきっかけ
最初に、アナウンサーを目指されたきっかけと関西で働くことになった経緯を教えていただけますか。
当時はあまり深く物事を考えることもなく、自分の好きなことを仕事にしたいという思いで就職活動をしていました。好きな音楽業界に行きたいと思っていろいろ探したのですけれども、残念ながら募集をしている企業が一つもありませんでした。そこで、自分の好きなものって何かなと考えていったときに、私はスポーツが非常に好きなんです。自分がするのも見るのも好きですが、特に野球は、自分でも野球チームを作って野球をやっているぐらい好きだったので、野球が仕事にできるものは何だろうと思ったときに、出版社の編集者、ライターのような仕事、現場に行って取材して伝える記者になるということを考えました。そう思ったときに、放送局のアナウンサー試験があることを知って、物は試しに受けてみようか、というようなスタートでした。
関東のテレビ局は採用試験がほとんど終わっている中、テレビ朝日の採用試験がまだ残っていまして、テレビ朝日を受けに行って、特に何の仕事をしたいですかと聞かれ、熱闘甲子園に携わってみたいと答えたら、あれは大阪で作っていて大阪に行ったら高校野球の中継もやっているよ、と言われました。そこで大阪のテレビ局も受けてみたらとテレビ朝日の方に勧めてもらって、大阪に来たという流れです。
野球という存在について
野球関連番組も複数ご担当されたと伺いましたが、野球に興味を持たれたきっかけを教えていただけますか。
今、関西ではサンテレビさんが連日中継していますが、私たちの時代は、普通に巨人戦が地上波でやっていました。我が家ももちろんですけれども、各家庭のテレビでは当たり前のように野球中継が流れていました。母親、父親、一緒に住んでいるおじいちゃん、おばあちゃん、姉、全員がご飯を食べながら常に野球を見ているような家庭で育ちました。また、父は野球、姉はソフトボールをやっていて、父親と2人でどこかに行くと言ったら東京ドームに巨人戦を見に行くみたいな生活だったので、とても身近に野球があったというところですね。野球の解説者が何か言うよりも先にうちの父親が同じことを言うので、お父ちゃんかっこいいな、みたいなところから、結構しっかり野球を見聞きするようになりました。
結果、お遊び程度ではありますが、自分でも野球をやることになります。最初、大学のサークルで野球部があって、そこに入りました。でも、「女の子は、危ない」という理由で野球をやらせてもらえなくて、見ているだけでした。そういうのを求めているのではないのに、ということで、自分たちで野球チームを作るという流れになりました。それくらい身近に野球があったという感じです。
入社されてからも番組などで野球にずっと携わっておられたと思いますが、それは希望をされたからご担当に至ったのでしょうか。
もちろんその仕事だけではなく、ニュース、情報番組やスポーツ番組もやります。これは伝統ですけれども、ABCは若いうちからチャンスを結構しっかりくれる会社で、それは本当にありがたいことです。何も分からない状態から、行ってこいと言われて、その場でスタッフにいろいろ教えてもらいながら育ってきました。ABCが希望を聞く耳を持ってくれて、早くからチャンスをくれたことはありがたいです。
そういった社風は今でも変わっていないのでしょうか。
そうですね。そのスピードはもっと速くなっていると思います。特に若い社員たちには、本当に早くから、様々な現場に行ってこいということになっています。
関西で情報を伝えるということ
もともと関東のご出身ですが、関西で情報や野球を伝えることについて戸惑われた点や工夫された点はありましたか。
誤解を恐れずに言えば、私は東京出身ではありません。東京出身の人は大阪にちょっと抵抗が、逆もまたしかり、とよく聞くのですけれども、私は茨城県の出身で、その抵抗が全くありませんでした。私の育った環境もいい意味でお節介な人が多いですし、田舎独特のものでしょうか、雨が降ってきたら洗濯物を取り込んでくれる隣のおばちゃんが普通にいて、小さい頃から、家の鍵が閉まっていたら隣のおばちゃんの家で待っているという生活が当たり前だったので、大阪独特の距離が近くなる、ということにそれほど抵抗もありませんでした。1人で大阪に来て、自転車をどこで買ったらいいのだろうと戸惑っていたときも、会社の先輩が、一緒に買いに行ったるからと連れていってくれて、生活の一からお節介を焼いてもらえる環境は本当にありがたかったです。
野球に関しては、阪神タイガースはそれほどよく分かっていませんでした。ここまで会社全体が縦縞一色か、というのはちょっと驚きました。ABCは今、虎バン主義を掲げています。もちろん、ほかの球団のファンの社員も山ほどいるのですが、基本的にみんな野球は好きです。プライベートでもよく見に行っています。
アナウンサーとしての転機
これまでのキャリアの中で、これが転機だったと思われるお仕事はありましたか。
ABCに入社して最初の1か月間は人事部の研修を全同期と受けて、その後、アナウンス部に配属されて、そこから1か月は徹底したアナウンス研修を受けます。そして、ラジオのニュースを読むというのが私たちの本当の意味のデビューでして、それを「初鳴き」と言います。初鳴きの日に向けて研修を重ね、私たちは、「おはよう朝日です」でまずご挨拶をします。今日、ラジオのニュースを担当しますというのを視聴者の方にお伝えする。その後、ABCの伝統的なラジオ番組の「おはようパーソナリティ」に行って、「この後、ラジオのニュースを担当します、よろしくお願いします」というご挨拶をリスナーの方にします。
そして、いよいよニュースを担当する、という時間に、大阪教育大学附属池田小学校で児童殺傷事件が発生しました。なので、私が初めて読んだニュースは、その時に被害に遭われた児童の名前を読むというものでした。ABCの報道フロアも罵声が飛び交い、誰をどこに配置するとか、今現場の状況はどうなっているとか、子どもたちが一体どういう状況なんだとか、そういった話が自分の頭の上を飛び交っていました。この日に新人の何もできない自分たちがデビューしていいのだろうかという怖さしかなかったですが、当時のアナウンス部の部長からは、「これがあなたたちの仕事だ」と言われました。デスクが手書きした亡くなった子どもたちの情報、そして病院に搬送された子どもたちの名前が書かれた原稿を渡されて、それを下読みで何回も読みますが、そのたびに、この子は大丈夫だったらしいとか、この子は病院に運ばれているらしいということで、原稿の内容が刻一刻と変わっていきました。そして、スタジオのブースに1人で入って、さあ読むぞとなった瞬間、その全部が亡くなった子どもたちの名前に変わったんです。とにかく目の前に書かれたことを丁寧に読むだけなのですけれども、それがこんなにも責任があることなのかという実感を持った瞬間でした。「伝え手」という仕事をする上で絶対に忘れてはいけないことで、今も一番大切にしています。
アナウンサーというのは華やかなステージにも立たせてもらえますし、皆さんに準備してもらった上で、最後に発信する立場ですけれども、こういう責任を持った仕事なんだなというのは自分の中にずしっと残っているので、その感覚は常にあります。
適切な言葉や表現の選択
関連した質問になりますが、災害のニュースを読まれる際に特に気をつけておられることや工夫されていることがあれば、教えていただけますか。
災害現場に行く際には、被災された方々の味方になることだけに徹するということを意識しています。私は2001年入社なので阪神・淡路大震災は経験していませんが、先輩たちのやってきたことを聞くと、本当にいろいろな取組みがされていました。例えば避難所から中継するときに「自分の後ろになるべく皆さん並んでください」と。今だったらなかなかできないですけれども、顔が映ることによって、誰か見ているかもしれないから、あの人、無事だったんだ、ということも伝えられる。そのように、被災された方々にとって一番いいことを現場で考えてやっています。
新聞だと、被災した家屋から出た家財道具を「災害ごみ」という表現をすることがあります。被災して壊れた家財が玄関から出てきているとか、あちらこちらに「災害ごみ」がいっぱい積まれているということで、「災害ごみ」という言葉自体はマスコミの中にあります。でも、その人にとってはごみではないのだから、そのあたりの表現の仕方は考えます。
「ポリティカル・コレクトネス」といって、従来使用されていたけれども、テレビなどで公にするには不適切な発言になりつつある言葉について、お話を伺う機会がありました。
今の時代、配偶者を「奥さん」と言ったり、「主人」と言ったりするのはどうなのかといったような、身近な例に例えるとそういうことなのですが、テレビの中で、失言には至らなくてもそれは適切なのかというような議論を巻き起こさないように、準備されていることはありますか。
生放送か収録かによってもそのあたりは変わってきまして、あらかじめ進行が決まっている収録番組などでは、専門の社員がいて、いわゆる考査部などを経験してきた人なのですが、そのあたりはしっかり見ています。
生放送に関しては、アナウンサーは、スターターとして発言を切ることが多いので、しっかりと教育を受けています。特に差別につながるような言葉がなかったかとか、この言葉をこういう言葉に変えたほうがいいんじゃないかという議論は常に行われていますね。
言葉だけが独り歩きしてはならないので、どこまでなら許容されるのか、この部分は本当はこうやって言いたいんだけれども、この言葉で通じるのか、でもこの言葉を通じるように変えていかなきゃいけないよねとか、正解のないところでもがくことは結構あります。言葉が社会を作ることも大いにあるので、どうやって言葉を守っていくかというのは皆で集まって常に話をしているところではあります。
法律関係のテーマや事件の報道について
テレビとかラジオは若い人に対して法律リテラシーを高めるために有用なメディアだと思いますが、メディアの果たせる役割や可能性についてはどう思われますか。
法律というのは難しいというイメージが市井の方々にはあると思いますが、それがいかに生活の中にあるのかということを分かりやすく伝えるのがメディアの仕事なのかなと。一番分かりやすいのはドラマでしょうか。入り口として皆さんがフラットに見られるのが一番ですが、私は今、夕方の「newsおかえり」という番組を担当していて、この中で、日々起きた事件の中に実はこんな法律があるんだよ、ということを言うのが自分に今できることなのかなと思います。
今は、選挙シーズンなので、公職選挙法に何が触れて何が触れないのかということを考える機会が増えます *1。マスコミは情勢調査を行いますけれども、これは公職選挙法に触れているのでは、といろいろな方から聞かれます。あれは皆さんからのそういった声を聞いて、報道の部署で情報分析をした上でお伝えしています。公職選挙法には触れていませんが、丁寧な作業が求められています。皆さんの生活の中に法律はありますよということをご紹介するのが一番近いのかなという気はします。ただ、今は、特に若い世代はテレビから離れている感覚もありますので、そこでどうするかというのは難しいとも感じています。
※1 インタビューは、令和7年7月7日に実施。
アナウンサーの方々がメディアで伝える前に、法律の知識を身につける機会として研修などはあるのですか。
最近は、SNSもありますし、私たちがまず身につけるのは著作権や肖像権についてですね。その点についてはライツマネジメント部からの教育の場はありまして、アナウンス部は特に徹底した研修を行っています。
事件の報道のときも、背景となる知識はご自身で勉強されるのですか。
そうですね。定期的に研修会は開かれていて、全体で勉強することもありますけれども、結構個々でやることは多いです。人を傷つけないための勉強という視点でやっています。傷つけないために学ぶというところが多いです。
知りたい気持ちを持ち続けることの大切さは、皆さんもそうだと思いますけれども、私たちもそうです。日々これだけ速い流れでどんどん変わっていく中でも変わらないものはあって、それをちゃんと押さえておく必要がある。法律は特にその一番手だと思います。アップデートしながら、大事な芯を持ち続けることは同じなのかなという気がします。
法律の研修などで我々弁護士がお手伝いできるようなことは何かありますか。
それは逆にご提案いただきたいところです。「newsおかえり」でも弁護士の方に出ていただいていますので、そこで一からお伺いすることもありますが、限られた時間の中でどこまで説明するかというのは難しい問題ではあると思います。ですが、日頃の事件に関して専門的な目線で語っていただくには、弁護士の先生方は本当に貴重な存在だと思いますので、そういう機会があるのであれば、ぜひレクチャーいただきたいという気持ちはあります。
ABCのアナウンサー40名のマネジメント業務
ご自身のアナウンサー業務のほかに、アナウンサー40名のマネジメントもなさっているというお話を伺いました。マネジメントで工夫されていることや心がけておられることがあれば、教えていただけますか。
アナウンス部は、40人の中に、20代から60代半ばまでいるような部署なんです。弁護士の皆さんもいろんな世代の方がいらっしゃる業界なので、似ているかもしれませんが、この世代だとまずこの壁にぶつかったとか、この年代ぐらいになると本当はこういうことができるようになっておきたいけれどもうまくいっていないといった葛藤は、みんなが分かり合えるんです。ですので、そのあたりは、悩みを感じた人を孤独にさせないように意識しています。
女性アナウンサーの多くは今子育て中なんです。アナウンサーは早朝にも仕事があれば、深夜にも仕事があるんですが、ABCは育児に関しては制度が整ってきていまして、この7月からは、もう一歩先の働き方改革が行われて、働きやすい制度ができています。
一方で、仕事をしたい人がなかなかできないという現状もあって、マネジメントをしていく上で、限られた時間の中でしか働けない人たちが、やりがいを感じながらできることは何かというのは、本当に日々考えています。限られた時間で、充実して、スキルアップ、キャリアアップできるための仕事をするという選択肢を作るのが、これから自分がすべきことなのかなという気はします。
今自分の中では、自分の仕事というよりも、アナウンサーのマネジメントが本当に大きな部分を占めています。もちろんオンエアもやりますし、いろんな仕事をするんですけれども、マネジメント業務に関しては、今までお世話になった分、恩返しで何かできないかなと思っていて、若い世代が子育てや介護をしながらもやりがいを持って生活できるにはどうしたらいいか、というのは日々考えていますね。
いいものを作るためには、ちゃんと休みを取る
アナウンサーは、代替が難しいご職業だと思いますが、どのように緊急時のサポート体制を作っておられるのでしょうか。また、休むこと自体も非常に難しい業態だと思うんですけれども、お忙しい日々の中で、健康の維持やご家庭の事情との兼ね合いなどでどういうことに気をつけておられるのか、教えていただけますか。
休むのはあまり難しいことではない空気になってきました。ABC全体もアナウンス部も、休みたいときには休むという流れには今はなっているので、罪悪感を持って休むということはかなり少なくなってきたと思います。必ず誰かをバックアップで用意していますし、アナウンサーが1人という番組も少ないと思います。それには実は社会的な意味もあって、同じ番組に出ていると、このアナウンサーが休んでもあのアナウンサーでいけるということができやすいからです。
ですので、これからは、子どもの体調が急に悪くなってこのアナウンサーが出ていない、というのが当たり前になっていくと思います。子どもが入学式だから休みますというのは今ABCでも始まっていますし、仕事を休むことにできるだけ抵抗を持たないようにしています。私も勤務のマネジメントをするときには、他のアナウンサーから「この日は休みが欲しいんですけど…」と言われたら、基本的に休めるようにします。そのためには他の部署とのやり取りも必要になるんですけれども、理解してもらうように伝えます。きちんと休まないといいものはできないと私自身も実感していて、無理をすると本当に体調を崩す人もいますし、若くても大病を得られる方も結構見てきたので、私は、何と言われようと休みに関しては死守することを心がけています。
今後チャレンジしていきたいこと
これからアナウンサーや管理職の立場として、どんな仕事にチャレンジしていきたいですか。
アナウンサーは、多くのスタッフが用意してくれた内容を、最後に発信する仕事で、緊張感はありますが、こんなにありがたい仕事はないなとも思っています。電波に声を乗せるとか、電波を使って何かを言うとか、少しでも生きやすい社会を作るための発信ができるのであれば、これからも続けていきたいという気持ちはあります。
あとは、子どもが2人いますので、子どもたちが社会に出たときのことを考えることが最近は増えてきました。特に上の子は大学生になりまして、この子たちが働くときに、もう少し働きやすい社会にしておくのが今の自分の使命だと思っています。ABCは、働きやすい職場で、人事が様々な制度を考えてくれています。用事があったときとか、子どもに何かあって1回帰らなきゃいけないときも、一旦帰って、そこからまた戻って仕事をするための中抜け勤務を作ろうとか、細かなところまで制度を考えてくれていて、非常にありがたいです。
ただ、現場で働くことと、子育てをすることの両立が難しいのが現状で、両立できる選択肢を作ることを現在頑張っている最中です。私の同期には、女性が4人いますが、それぞれが子育てもしながら働いていて、子どもを産んでからやりたい仕事がなかなかできないというもやもやした気持ちをずっと抱えてきました。そのもやもやを少しでも少なくして働ける働き方を作るのが使命だと思っています。これまでは、子どもを産んだらいわゆる第一線から引くという選択をするしかなかったのですが、第一線から引いてもいいし、出続けたいという人は出続けられる選択肢はないかというのを考えているところです。テレビもラジオもチームでやる仕事です。チームの一員としてやりたいという気持ちを燃やし続けられる策を考えることが、これからの自分の使命かなと思っています。
弁護士について
昨今、企業内で働く弁護士がすごく増えてきています。社内、社外問わず弁護士に期待される役割はありますか。
それぞれの希望や、それぞれの生活が、ルールにフィットしなかったときに、真ん中に立ってくださっているのが社内弁護士の皆様なのかなと思っています。もっと広い視点でいうと、公平に守ってくださるお立場なのかなとも思っていますので、より従業員に近いところにいてくださると嬉しいです。企業によっては、最初から弁護士を企業内に組み込んでいて、たまたまその人に法曹資格があるというぐらいの位置づけで捉えているところもあったりするので、その辺がもっとシームレスになっていくといいのかもしれません。だから、皆さんがラジオ等を担当しておられるのは大変意義深いことなのかなとも思います。
大阪弁護士会の災害復興支援委員会では、大阪の北部地震の際に法律相談を行ったり、能登への訪問相談を行っています。能登での相談では、相談内容が専門的なことが多く、その分野に精通していない場合には、答えにくい相談も多いです。その中でメディアの方と災害の分野に関する知見を共有できればいいなと思うこともあります。メディアの立場から、防災・災害分野で弁護士に期待されることやご意見はありますか。
弁護士の方は、生活再建の手続の直接の窓口になる可能性もあるわけですから、被災された方、何もかもなくしてしまった方たちと向き合っていくことがなにより大切だと思います。専門分野に関しては、日頃から、ネットワークを広く持っておくことが大事かなと思います。自分は知らないけれど、あの人に聞いたら知っている、といったネットワークです。検索することができるだけでなく、実際に相談できる、より体温の感じられるネットワークを日頃から構築しておくことが大事だと思います。
私は今、アナウンス部の副部長という立場ですけれども、各局の担当者とは常にコミュニケーションを取っています。担当番組も地域も違うんですけれど、抱えている問題は意外と一緒なことも多く、こまめに連携を取っています。災害というのは、いつどこで何があるか分かりませんので、人ごとにしないためにも、ネットワークやつながりを大切にする。自分たちがやっているのはそういうところかなという気がしました。
番組中、弁護士による法律解説や、VTRによるコメントが起用されることもあるかと思います。現場でのニーズや課題はありますか。
弁護士と言えば、「強く論破できる人」というイメージが強いと思います。でも全員が強く論破する弁護士を求めているわけではなくて、優しい目線で「お助けの入口」にいるような、生活感を持った弁護士を求めている視聴者もたくさんいます。私たちは、今まさに苦しんでいる方を守るというスタンスでやっているので、浮世離れした説明をしていても、全く視聴者には響きません。「分かりやすく教えて下さい」とアナウンサーから振られることもあると思いますが、法律を、いかに生活に落とし込んでいただくかということが必要なのかなと思います。
弁護士に対するメッセージ
最後に、弁護士に対して一言お言葉をいただけますか。
弁護士の方は、とても人間味のあるお仕事だなと感じます。誰も取り残さない生活をしてもらうために、皆さんはいらっしゃって、尊いお仕事をされているなと改めて思いました。より近い存在として、私も改めて皆さんのことを知りたいなとも思いましたし、皆さんの背景にもいろいろなストーリーもあると思いますので、それぞれの人間味もお仕事に活きていらっしゃるんだろうなと思いました。歯を見せて笑うことは難しいかもしれませんけれども、できるだけ笑顔の人を増やせるような務めをしていただけたらと思います。人間の大変なところを見ていらっしゃる案件もあるかとは思いますが、どうか心健やかにがんばっていただきたいです。
お忙しい中、ありがとうございました。
2025年(令和7年)7月7日(月)インタビュアー:渋谷 元宏
山本 和人
北野 光平
国本 聡子
豊島 健司
吉村まどか