弁護士会から
広報誌
オピニオンスライス 2月号
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芸人
ナ酒渚さん
Nasake,Nagisa
現在TBSラジオでパーソナリティを務められるナ酒渚さん(元尼神インター)。時代の変化とともに女性芸人に求められる「役割」が変化し、価値観が多様化している今、渚さん自身が考えておられる視聴者が求めているものや、女性芸人としての新たなフィールドでのご活躍について色々お聞きしました。
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地元尼崎の地について
渚さんのご出身は尼崎だとお伺いしています。渚さんにとって尼崎はどのような思い出がある土地でしょうか。
尼崎は、ダウンタウンさんの地元でもあり、どんな町かというのは何となく周知ができていて、それプラス、私のキャラクターに合っていて、結構名刺代わりになる便利な町やし、私の家族もいるので、大切な町です。初対面の人に「尼崎出身です」と言うと「ああ!」となるぐらい、一言で私を説明できる楽な存在の町です。
尼神インターは解散して終わったコンビなので元のコンビの名前を使うのがあまり好きじゃないので、改名をしましたが、「渚」という名前自体は結構広まってるし認知していただいていて。本名やし、好きというのもあるから「渚」は残しておきたいなというのはあったんです。でも、「渚です」と言うと、「どこの渚やねん」となるから、「尼崎のヤンキーの」と言ったら「ああ!」となるんです。あと、元大工とか、ビフォーアフターとか、元職人の、とか言っても通じるから、前のコンビ名を使わなくても認知してもらえていて、尼崎ということには随分助けてもらってるなと思います。
芸人としてのブランディングについて
渚さんといえばヤンキーキャラのイメージが強いのですが、幼少期からそうだったのでしょうか。
これも実は皆さんの勝手なイメージ、印象であって、特にヤンキーというのではないですよ。ただ、尼崎出身でちょっと口が荒いとか、ファッションとか印象的なヘアスタイルによって勝手にヤンキーっていうキャラクターとして認識してもらっているというだけで、私が何か昔やんちゃしてたということはないです。普通に高校を卒業してます。大学は行けてないですが、そういうふうに思ってくれるんやったら、その中でやんちゃエピソードがあったらより面白い、いいなと思って。相手を「おまえ」と言ったり、女性も「女」と言ったりというのが許されるキャラなら上手いこと使おうと思って使っています。ヤンキーというキャラがあるからそれに寄せて使っているというだけで、ヤンキーやから昔から人に挨拶せえへんというわけでもないですし、そっちがそうやって思ってるからこっちがやってるぞというぐらいです。
イメージに上手く便乗して自分のキャラクターにしているということですね
どちらかというとヤンキー寄りやから、分かりやすくヤンキーキャラを使っているということです。
何故そうしたかというと、上京したての頃、先輩の「とろサーモン」久保田さんが、「アニメのキャラクターになれるような人ってイメージしやすいから、そんなキャラになったほうがいいで」と言ってくださったんです。皆さん思い浮かべてほしいんですけど、今売れてはる人たちとか、可愛いなとか愛嬌があって人気がある方って、アニメのキャラになる人たちだと思うんですよ。例えば、女性お笑いコンビの「ガンバレルーヤ」って「アンパンマン」や「ちびまる子ちゃん」とか、「ディズニー」とかに出てきそうなキャラクターですよね。アニメのキャラクターとして描きやすい人がええぞ、ということを教えていただいたことが印象に残っていて、「確かにそうやな、つじつまが合うな」と。私も、ちょっと破天荒でやんちゃなやつというのがキャラクターとして描きやすいかなというのがあったから、それに寄せたというのもありますし、そのキャラクターに持っていけたらいいなという作業を今まだしている段階です。
芸人を目指したきっかけ
クラスでも目立つ存在だったんですか。
いや、人見知りで恥ずかしがり屋で、人前に出てパフォーマンスをするというのはなかったです。
2007年にNSC大阪に入られましたが、お笑いに目覚められてNSCに入られた経緯、きっかけをお伺いできますか。
私は昔からお笑いを目指していたというわけではなくて、とにかく勉強が嫌いだったんです。でも、高校ぐらいは卒業しとかなあかんぞという時代の流れもあって、勉強はめっちゃ嫌いだけれど、取りあえず高校は行こうかと。それで、公立と、一応滑り止めで私立も受けたら、金のかからん公立に受かったんです!私の母親は、私が勉強せえへんし賢くないことを知ってたから、公立に合格したということを知った時に、「渚が受かった!金かからへんほうの高校行くぞ!」って泣きながら喜ぶぐらい、私、賢くなかったんです。
そして、高校を卒業するときに、「大学には行ってられへん、勉強はこれ以上でけへんで」と思い、じゃあ究極に何したいかと考えたときに、楽しく生きたい、楽しいことがしたいというのがあったんです。そこで唯一浮かんだのがお笑い芸人だったんです。じゃあ、芸人になるためにNSCの入学金が必要やとなって、それを貯めるために仕事をするにしても、事務的な作業は勉強みたいやから絶対やりたくないし、接客も、バイトでレジ打ちをしたことはあるけど、最終的にお金の収支計算が合わずに確認作業を何回もやったりしたこともあって、全然得意じゃないからあんまり向いてないと分かっていました。でも、一方図工とか物作りが好きで、体を動かすほうが好きやったから、大工職人になりました。それも大工職人になりたかったわけじゃなくて、NSCの入学金のためにお金を貯めなあかんということで職人になったのです。
机に向かって勉強するのは苦手かもしれないですが、大工職人も頭脳労働の部分があり、何かを追求するうえでは、工夫や情熱を持って取り組まれているのかなと思います。例えば、YouTubeで渚さんがビス止めをしているシーンを見ると、手際がなめらかで、ミスをしたところは、すぐにビスを外し手で受け止めて何事もなかったかのように次の作業に移られていました。
大工も計算したりするのである程度知識は要りますが、作業とか効率に関しては技術になるので、やっていって経験を積んでいくという感じですね。最初はもちろんできひんかったし、パワー面では男性より女性のほうが力がないので、じゃあどこでフォローするのか、どうやってちょっとでも近づくかというと、技術面を高めていくしかない。その1つとして、ビスを怪我なく早く打てるようにとか、ビスを取りやすい腰袋があるので、自分の体に合った腰袋を探して付けるとか、そんなちょっとずつの工夫という感じですね。
袋にはビスをそのまま入れてるから、むやみに取ると尖っているから怪我をするんですよ。でも、手袋をしていると取りにくいから、ビスを取るほうは手袋もしてないんです。じゃあ、早く取るためにどうするかというと、ちょっとジャンプするんです。そしたらビスが浮いて、その時に取ると怪我しにくいから、そうやって早く取って早く打つ、そういうちょっとずつの工夫で普通の職人さんに近づけるようにしました。
今、女性の大工職人も増えてきて、大工職人の世界もちょっとずつ環境が変わってきてます。私が大工職人をしていた時は、例えばトイレにしても、仮設便所は汚いから女性は行きにくいとか、建設中の高い建物の上の階に男性用の簡易的なトイレはあるんですが、女性用はないから下の階か近くのコンビニに行ったりしていました。今はちょっとずつ環境が変わってきて、女性の大工職人や現場監督の方も増えてきたから、男女問わず、やりやすい環境になってきていると思います。どこの世界でもそうだと思いますが。
男性社会といわれること
お笑いの世界が、男性社会だなと思われることはありますか。
単純に男性の人数が多いから、例えば昔なら男女同じ控室で、女性が着替えるときは女性はトイレに行くとかしてましたが、それは比率的に女性より男性のほうが多いから男女1つの部屋にくくられていただけです。女性1人のためにわざわざ控室を用意できなかったのだと思います。女性を差別しようという悪気があったとかなかったとかではなく、そういう感覚がなかったんだと思います。でも、今はちょっとずつ女性芸人さんも増えてるから、控室も女性・男性に分かれてますし、時代の流れだと思います。
男社会だというのは周りが勝手にそう思ってるだけで、芸人本人たちはあまり感じてないかもしれないです。今って男性芸人、女性芸人って分けるなよ、一緒やろと言われてる時代だと思うんですよ。でも、上の世代の人たちに聞いたら、女性芸人が少ない時やったから、女性芸人、男性芸人と分けられたときに嬉しかったそうです。今まで分けられてなかったから、女性芸人が増えてきて、女性芸人、男性芸人となって、女性芸人として1個ジャンルができたことが嬉しいと思ったと言われました。反対に、分けるなよという意見も出てきてますけど、どこを自分がオーケーとするか、どこを流すかは自分たちのルール次第かなとは思います。
ルックスいじりは悪か
女性芸人さんのルックスについて、昔からの風潮としていじられる ()のがおいしいというふうに思われる風潮もあったと思います。しかし、最近「3時のヒロイン」福田麻貴さんが、容姿いじりを私にはしてくれるなというような宣言をされていました。女性芸人に求められている役割が変わってきたなというようなことは感じられますか。
ほんまにいじってくれるなという人ももちろんいると思うんです。でも、福田麻貴ちゃんは自虐ネタで、「いじっていいよ」ということだと思います。というのも、麻貴ちゃんは、吉本興業発の女性アイドルグループ「つぼみ」のメンバーの1期生で、容姿いじりをされたときに、「私、元アイドルですよ」、「いや、そんなアイドル知らんで」、「どのグループやねん」、「これのどこがアイドルやねん」みたいなのをネタとしてやってるから、恐らく麻貴ちゃんが容姿いじりをしてくれるなという発言はネタで言ってると思うんです。
でも、容姿いじりをされたときに、そこのジャンルは得意じゃないから嫌やという人はいると思うんです。容姿いじり以外でも、そのいじりに上手く返されへんから断ったりというのはあると思います。私は、プロの芸人同士で愛情を持って何かしらいじってくださったら、お返しとして、ネタに敬意を持って愛情を持って返さなあかんというのが最低限のルールやと思うので、愛情を持っていじってくださっている人に対しては全力で返すのがマナーだと思います。
容姿以外の「いじり」について思われることはありますか。
一般の方がイメージでいじってきたりすることもあります。私はこういうキャラクターやから、一般のおじさんから「ほんまに柄悪いねんな」、「ほんまにがさつやねんな、自分」と、その距離感じゃないのにタメ口で雑にいじられたときも、「おっさん、黙っとけや」と言えるんですよ。私の場合は、それがお笑いになるからこのキャラってめっちゃラッキーやなと思うけど、愛情のない雑ないじりに対しては普通に腹立ててますよ。
同じ仕事をしているスタッフさんでも、こっちを馬鹿にしているような雑ないじり、こういうのがいいんやろみたいな感じでいじってくるのも、これって別にスタッフさんが芸人をちょっと馬鹿にしていること自体が面白いんじゃなくて、それを芸人がフォローするのが面白いと思うんです。例えば「相席食堂」という番組がそうです。「相席食堂」って千鳥さんがVTRを見て、それに対して突っ込んだり、たまにスタッフさんをいじるんです。例えば画面が急に暗くなったのを「いや、ごっそりカットしてるやん」、「何でやねん」と千鳥さんが突っ込むことによって面白くしてる。そこにはスタッフとの信頼関係があるからあれが成立してると思うんですよ。みんなの大事な時間を使って稼働したのにちょっとしか使われへんって誰が得してるねんと。撮れ高も結構あったのに何でここしか使えへんねん、みたいなことって、スタッフも一緒にあんなに稼働したのにごっそりカットした、その事実自体は面白くない。それをフォローする千鳥さんが面白いんです。もちろん、あれはそんな失礼なスタッフさんとも関係性があるからこそ面白いんです。
「月曜から夜ふかし」もそうだと思うんです。一般の方にインタビューして、ナレーションで「そんなことよりTシャツのロゴが気になる」、「さっきから何を言ってるんだ」とか言って、それだけだったらスタッフさんが悪者になって、ナレーションに悪意があったりするけど、そのVTRを見ているマツコさんと村上さんが、そうならないためにあえてスタッフさんを悪者にしたりします。あれはチームプレーというか、チームとしてああいう構成で成り立ってるからいいのです。だけど、そういう関係性ができてないのにいじる人たちはよくないですね。
愛情のない「いじり」だとコミュニケーションエラーになって、いじめやハラスメントみたいなことにもつながっていってしまう。皆さんの関係性の中でこそ、そのいじりが成り立っているんですね。番組を見る視点が増えてすごく面白くなりそうです。
法律・ルール・SNS利用上のマナーについて
ある取材で、渚さんは、大工時代に消防法なども学ばれたと拝見しました。法律って大事だなと思われたご経験はございますか。
ルールっていうことですよね。自分を守るために、守ってもらうために大事な事柄の1つだとは思います。今はSNSが流行っていますが、写真や動画を撮った際に一般の方が写ってたらSNSに上げるときはモザイクをかけるとか、ロケで誰かにインタビューをするとき、大人が近くにいない未成年の方には声をかけないとか、この仕事をして知ったことがあります。今は特にそこは気をつけて敏感にやるようにしています。
あと、一般の方は、知らない人の映り込みがあっても、モザイクをかけずにSNSにアップすることもあるかもしれません。でも、勝手に写真をアップするのは何かの法律に引っかかる可能性もあるじゃないですか。私もロケ先とかで勝手に写真を撮られることがあって、それ自体は腹は立つけど、仕事の時に写真を撮られるのは全然いいんです。でも、ただ普通に遊んでいる時に写真を撮られたりしたらやっぱり普通に気悪いです。それはこういう仕事をしてたからこそ気付くことやと思うんです。
それから、こういう仕事をしているからこそ、言葉とか発言はとにかく気をつけています。テレビとか仕事で使われへん言葉はもちろん普段から絶対に使わないし、仲間の中にも家族の名前とかお子さんの名前を公表していない人もいるから、基本的に家族の名前は聞かないです。お子さんがいるいないもあまりエピソードでは言わないです。言うにしても、ご本人が話してたかどうかで判断しています。
演者としての窮屈さ
私は昭和世代なので、小さい頃はやすきよ漫才とかああいうのを見て育った世代です。昔ってちょっとルールから外れたことをするのがすごく面白くて、世間もそれを別に問題視しない。ところが、今はどんどん厳しくなって、渚さんが芸人としてデビューされてから今に至るまででも、使う言葉やルールが厳しくなっていると思います。それは窮屈さを感じられるのかなと思いますが、もうちょっと寛容であってほしいなとか、そういうふうに思われることはないですか。
思いますけど、思っても仕方がないというか、もう狭いところでやるしかない。ただ、やり続けて認めてもらったらいける人っていると思うので、そこをやるしかない。私が今気をつけていることでいうと、例えば「奥さんですか」、「だんなさんですか」と声をかけると、一部の人は「おまえのだんなじゃない」「おまえの嫁じゃない」とか、言葉の一個一個が引っかかるんですよ。番組によっては、3歳以上のお子さんに対しては「何々ちゃん」ではなくて「何々さん」と言わなきゃいけないと。でも、それがその番組のルールなら仕方がない。私もスタッフさんに言いますよ、私が3歳の子どもに対して「何々さん」って変やろって。ただ、それで、支障も出てるならば、それをエピソードにして浄化させるしかない。例えば、前に3歳と5歳のお子さんとそのご家族とロケをした時に、私がお子さんにずっとさん付けをしてて、5歳の子が私に「何歳なの?」と聞いてきたから、「何歳やと思う?」と聞いたら、3歳の子が私に「2歳」と言ったんです。それは、私が子どもたちをさん付けで呼ぶから、3歳の子が私のことを自分より年下と思ったやんけ、これの何が正義やねんみたいにエピソード化して、言えるところでは言います。
だから、一応ルールはあるけど、私もあんまりルールには縛られたくないし、そういうキャラでもない。だけど、私は割と許されるキャラでもあるから、言えるような環境を作る作業をしています。この人やったら許されるというゾーン、例えば有吉さんですね。有吉さんは毒舌で色々言ったり自由にやってるけど、色々ご経験されてあそこまで行った有吉さんやからいいでしょうと世間が許容しているってことじゃないですか。だから、そこまで行けばいいだけのことなので、窮屈やなというよりは、この窮屈さやからこそどうやってやっていこうかと。窮屈やな、しょうもない世の中やなとか、パフォーマンスとしてやってるのに何で真に受けるねんって私は言えるんです。
例えば、刑事ドラマで、逃げる強盗もそれを追う警察官もちゃんとシートベルトをするじゃないですか。そんなわけないやんと。でも、今のルール上、逃げる人もちゃんとシートベルトをするというのをネタにするしかないんです。そんなテレビのパフォーマンスに対してほんまに一部の人がごちゃごちゃ言ってるだけやと思います。そんなことよりも、私、政治はよく分かれへんけど、この国は大丈夫なんかと思います。もっと考えなあかんことあるやろうって。どんだけ余裕があるねん、平和過ぎるやろと思うんです。テレビでみんなが楽しむためにやろうとしていることに対して意見を言うって平和過ぎるなって思うんですよ。私はそう思うだけで、窮屈な中でやっていくしかないからもう仕方がないなと思ってるけど、よく見たら、反骨精神じゃないけど、この時代に歯向かってますよと。理由さえあれば何でもいけるので、例えば私と同世代の人に「おばはん」と言うとしても、「おばはんが言うのも何ですけど、結構おばはんですね」と、1個こっちが自虐を入れたら受け入れてくれるとか、表現の仕方は何ぼでもあるんですよ。
意見を言うのはいいけど、そんなことよりもっと他にやらなあかんことあるやろって思うし、人がやってることに対して否定する人たちって、否定するのは簡単なので、否定する人たちはほんまに余裕がなくて、多分楽しくない人生なんやろうなって思うしかないです。そういう人たちに言われてばっかりやったらこっちもしんどくなるからそう思うようにしています。
現在のYouTube活動について
YouTubeの「渚のいっぷくチャンネル」をされることになったきっかけや、動画で意識されていることについてお聞かせください。
YouTubeは1個の媒体としてやったということと、テレビの編集や、取材を受けてそれが記事になると、どうしても制作側のニュアンスが入ってくるので、私はもうちょっと自由にしたいな、ちょっと反抗できるものが欲しいなということもあって始めました。
そこに携わってくれる人たちも、何となく私の価値観を分かってくださる人、感性を分かってくださっている人にお願いしています。「いっぷく」は、編集なしで、飲んでるものか、あまりテロップも入れずに結構長めに企画の動画も上げています。というのも、それが自分の1個の良さかなと。自分のパフォーマンスを見せられるのがこの番組です。
今ショート動画が流行っていて、告知で使う分にはぱっと短く印象に残るからいいと思うんですけど、編集する時にばっさり切るじゃないですか。あれってその人の良さが出なくて、全部機械的というか、私には全部一緒に見えるんです。ばっさり切るとその人の良さが見えないと思うんです。
例えば、私ラジオでも、自分が知ってる人たちのチームでやっていて、そこでお願いしていることがあって、30分番組なので30分以上はあまり録らない、ようけ録って、その中からいいところを放送するというよりも、それが私なので、ということを伝えています。それがその人そのものだと思うんです。例えばしゃべるのが早くて何を言ってるか分かれへんとしても、それがその人の良さでもあるし、私の場合は、まとめ切れずにずっとだらだらしゃべって、最終的に浅いことを言って、結局何の話やねんというのが良さだったりすると思うんです。「えーっと」と言ったのもカットせずに、「えーっと」と言うのがその人のリズムで面白いということがあったりするので、それを分かってほしいから「いっぷく」もラジオも割とそのまま使ってくださいと言ってます。それ放送事故やん、という時間の間もそのまま使うことを意識しています。
私、人間らしい人が面白いと思っていて、計算してぼける人、計算して冗談を言う人だけがすごいわけではなく、いろんな面白さがあることを知ってほしいなと。自分がどこを伸ばせるかといったら「らしさ」しかないので、「らしさ」を出せるものが欲しくて「いっぷく」をしています。最近教えていただいて面白いと思ったのが「ザ・ノンフィクション」という番組です。この番組は人間そのものなんですよ。爆笑する面白さではないけど、人間やなという面白さがあって、「こいつ、ほんまにクズやな」とか「何でそんな考えなん?甘過ぎるやろ」という面白さがあるんですよね。だから、私も「らしさ」を伸ばしたい、「らしさ」を大事にしたいと思います。
目標にされている芸人さんがおられたら教えてください。
私は、爆笑問題の太田さんと鶴瓶師匠をお手本にしています。鶴瓶師匠は、ラジオで日常の経験をお話しされて、それは鶴瓶師匠だから面白いんです。鶴瓶師匠が子どもに馬鹿にされて、それを師匠が本気で怒って、「俺がこんなに頑張ってやってきたのに、何で5歳の子どもにこんな馬鹿にされなあかんねん」というのが面白かったりして、特別すごい事件が起こったわけじゃないのに、日常にあることが面白い。私はそれに憧れていて、日常にあることを自分のラジオでも話してます。私はトークが上手いわけでもないし、抑揚を付けてというのもできないので、できないから自分のルールでやるしかない。爆笑問題さんも、爆笑問題さんのラジオで最初の40分ぐらいは最近あったことを話すんですが、太田さんもひねくれててめっちゃ人間らしいので、お手本にしている方たちです。この状況でこの先輩やったら何て言うかなとか、この人ならどうするかと置き換えて考えたりします。
リフレッシュの方法について
例えば番組で、あの発言はちょっとまずかったかなと思って落ち込む日もあるかと思います。これから先、芸人さんを続けていくに当たって原動力となるもの、へこたれてもまた頑張ろうと思えるような支えにされているものはありますか。
いつまでも落ち込んでられへんというのと、お酒を飲みに行ったりはしますが、結果があんまり良くなかったときに飲むお酒は全然美味くなくて、「まずっ」と思います。でも、良かったときに一緒に仕事をした人や後輩と飲むときは、お互いをたたえ合って向上し合って、そこでストレスを発散してるのかもしれないです。何にもやりたくないぐらい落ち込むことはないです。あんまり上手くいかなかった番組は、見てまた落ち込むから見ないです。もう知ってるから。
私、観光大使をしている町があるので ()、休みの日はそこに遊びに行ったりして、「今日こんだけ遊んで自由にやったんやから、次は仕事を頑張らなバチ当たるで」と自分に言い聞かせてやっています。
実は、私が観光大使をしている町って全く縁が無かった町なんですが、その町が好きやからやってます。その中で、「PRしてくれてありがとう」と言ってくれる人もいれば、私みたいな関係ないやつが「何でおまえがPRするねん」と言う人もいます。でも、関係ないやつがおまえの町をPRしてるんやから、おまえの町いいと思えよみたいな、そんなん言いませんけど勝手に1人で喧嘩してます。縁のない町をPRすることで私は今ここで徳を積んでるからいいことが訪れると思ってます。かといって、こんないいことがありましたよというのもないけど、そうやってこの現状を受け入れるしかない。全部そうですね。窮屈やけど仕方がない。それに対してどうやって表現をしていくかという感じですね。何かあれば全部尼崎キャラクターで助けられてます。責められても、「時代と逆行してるんで」、「時代に歯向かってるから」、「おもんないやろ、この時代」と言えるキャラだからこそラッキーなことに、ぐっと落ち込むことはないです。
弁護士へのメッセージ
最後に、弁護士業務との関係で、弁護士会に対してこうあってほしいとか、弁護士としてこういう人がいたらいいなとか、求められているものがありましたらお聞かせいただけますか。
弁護士さんがどういうお仕事をされているかはそんなに細かくは分からないですが、例えば私にいろんなジャンルのオファーが来たとして、これはできませんというものはやらないんです。私はそうですが、ほかの芸人さんで自分のキャラじゃないというお仕事も全部引き受ける人もいて、それはそれでプロやなと思います。弁護士さんもお仕事が来たときに、これはちょっと自分の中で違うと思って断る人もいれば、やる人もいますよね。でも、人や事件を選んでいたら切りがないですよね。何でこんなんに弁護するねんって思うようなやつが来たらどうやって割り切るんですか。私は、自分ができないものはやらないというルールにしています。
率直なことを申しますと、私がこの人のために動きたいと思わない人の事件はやらないようにしています。
私は、世間に1人ぐらいその人の味方がいてもいいんじゃないかと思って引き受けるようにしています。世間を敵に回しても、世の中で誰かこの人の立場で寄り添う人がいないとと。
そういうふうに思わないと仕方がないですよね。
そうですね。そう思います。
私やったらそういう人がいても何で寄り添うねんと思いますけど、でも、仕事やからということですよね。
本日は渚さんらしさが良く伝わるお話をありがとうございました。実は大阪弁護士会の現会長森本宏弁護士が渚さんのファンで、今日もお会いしたかったと申していました。本日はお忙しい中ありがとうございました。
ありがとうございました。
インタビュアー:廣政純一郎
北野光平
国本聡子
豊島健司
吉村まどか