弁護士会から
広報誌
野中瑠衣さんインタビュー
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女子バレーボール選手
野中瑠衣さん
Nonaka, Rui
姫路を本拠地とするプロバレーボールチームのヴィクトリーナ姫路に所属する野中瑠衣選手にインタビュー。バレーボールに対して真摯で、実直なお人柄が伝わる素敵なインタビューで、プロフェッショナルとはどうあるべきか、非常に勉強になった日でした。姫路、そして日本のバレーボール界をどう盛り上げるかについてのお考えも伺いました。バレーボールファンの皆様、必見です。
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これまでのキャリアを振り返って
本日は、練習後の貴重なお時間を頂戴し、ありがとうございます。まず、野中選手がバレーボール選手を目指したきっかけを教えていただけますか。
小学3年生からバレーボールを始めまして、小学6年生の時に所属していたクラブチームが全国大会に出たんです。 全国大会も3会場で行われていたんですが、私はたまたま東京体育館でのトーナメントに当たって、そこでスカウトの方が見てくださっていて、その場で全国の有望な小学生の選手が集められるJVAエリートアカデミーオーディションという合宿に呼んでいただいたんです。
その合宿で「日本代表とは」みたいな話を聞いた時に初めて、バレーボール選手になりたいなということを意識し始めた感じですね。
そこからは順風満帆なキャリアだったのですか。
いえ、全然そんなことはないです。経歴だけ見たら、日本代表のアンダーカテゴリーに入っていたり、ユースにも入っていましたが、試合にスタメンで出ることはほとんどなかったです。
今、SVリーグ※1まで来ている選手は、中学校にしても私立の有名な学校を出ている選手もたくさんいますが、私は家から徒歩10分圏内の、秋田県の普通の公立中学校に通っていて、練習時間も冬場は雪があるので1時間ぐらいでした。バレーボールだけじゃなくて文武両道が当たり前という普通の中学生でしたし、高校もそのまま地元の秋田に残って、全国大会に出るのがやっとで、日本一になれるような学校ではなかったので、決してエリート街道を来たわけではないです。
※1 2024年10月に開幕した日本バレーボールのトップリーグ。小学6年生の時に日本代表を意識されたということでしたが、秋田県外の私立の高校に行かれるという選択肢もあったのですか。
もちろんありました。私の気持ち的には県外に出たかったんですが、JOCという各都道府県の中学生の選抜選手が戦う試合があって、その選抜チームに私は選ばれていたので、秋田県の選抜チームに選ばれたら秋田県の高校に進学しなきゃいけないという暗黙のルールみたいなものもありましたし、今だから言えますが、私の父が秋田県のスポーツを盛り上げようという体育連盟の仕事をしていたので、そういうこともあって秋田に進学する形になりました。
ポジションやプレースタイル
「月刊大阪弁護士会」の読者の中にはバレーボールに詳しくない方もいるかもしれませんので、改めて、野中選手のポジションやプレースタイルなどを教えていただけますか。
私は、アウトサイドヒッターという、スパイク、ブロック、サーブ、レシーブの全部をやるポジションです。プレースタイルとしては、ディフェンスやサーブを得意としているのですが、今年はオフェンスの部分を課題として取り組んでいて、そこが今成長してきている部分かなと思います。
もともと、ヴィクトリーナ姫路の前に所属されていたAstemoリヴァーレ茨城というチームでは、オポジットという、より攻撃的なポジションをされていたのですよね。
はい。基本的にはディフェンスをしない攻撃専門がオポジットと言われますが、私はレシーブもするオポジットをやっていたので、ディフェンスもオフェンスもやるような役割でした。
確かに、当時の映像を拝見すると、素人目には今のプレースタイルと似ている部分もあるのかなとお見受けするのですが、やはりポジションの変更によって、ギャップを感じられることはありますか。
今のポジションは、難しい状況や苦しい状況でトスが上がってくることが多いので、そういうのを点数につなげられるようにポジションを変更したというのもあります。そういった意味では、役割というか、難しさは昨年までとは変わっているなと思います。
ヴィクトリーナ姫路への移籍のきっかけ
そのポジションの変更が、ヴィクトリーナ姫路への移籍のきっかけの1つだったとお伺いしましたが、それ以外に、移籍を決められた理由はありますか。
ポジションについても、ヴィクトリーナ姫路だけが唯一アウトサイドヒッターとして使いたいと最初から言ってくれていたんです。私は移籍するときに挑戦したいと決めていました。そして、移籍の際、ほかのチームとも交渉する中で唯一ヴィクトリーナ姫路だけが、私がやっていなかったポジション、私自身も未知の部分を提案してまで来てほしいと言ってくれたんです。それはリスキーといえばリスキーなことですが、それでも私に来てほしいと言ってくれたことに対して、頑張りたい、貢献したいという気持ちがすごくありましたね。
あと、ヴィクトリーナ姫路は日本代表選手も多くいるチームだったので、そういう環境でやることが自分の成長にも絶対つながりますし、女子のSVリーグではヴィクトリーナ姫路が唯一全員がプロ契約しているチームで、それまで会社員をしながらバレーをしていた私にとっては、そういうプロ意識の差という部分でも、いい意味で自分にプレッシャーをかけられて、成長できるかなと思って移籍を決めました。
ヴィクトリーナ姫路に移籍される前の段階で、オポジットからアウトサイドヒッターにポジションを変えることを決められていたのには、何か理由はあるのですか。
SVリーグもどんどん進化していって、来シーズンからコートに立てる外国籍選手の人数も更に増えますので、そうなるとオポジットは外国籍のエース級の選手が各国から集まってきて、そこにボールを集めるようなバレースタイルにどうしてもなります。そこでディフェンスができるパスヒッター※2は絶対必要になると思うので、生き残るためというか、自分の活躍の場を広げるためにもアウトサイドヒッターで戦えるのは結構重要なのかなと思って、自分で決めました。
※2 アウトサイドヒッターの選手の中で、サーブレシーブとスパイクの両方を高水準でこなせる選手を指す通称のこと。野中選手は挑戦することにわくわくするタイプですか。
わくわくします。でも、高校は秋田に残ったり、前のチームのAstemoも、どちらかというと安定を選んでしまっていたので、私の人生の中ではこの移籍というのは、自分で決めた決断の中ではすごく大きい挑戦というか、やっと自分の意思で分からない未来に飛び込むことができた挑戦だったかなと思います。これまでは想像できるような進路に進んでいたけれども、ここには本当に知り合いもいなかったですし、どうなるのか分からなかったんですが、勇気を持って飛び込めたのは初めてだったかもしれないです。
大きな転換点ですね。
そうですね。
ヴィクトリーナ姫路の魅力と強さ
その挑戦の結果として来られたヴィクトリーナ姫路は、どういうところが魅力のチームですか。
全員がプロ選手なので、練習前後の取組や練習中の取組でももちろんプロ意識があるチームだなと思います。あと、お互いをリスペクトしてプレーしているので、そういう姿勢が、このチーム自体の成長もそうですし、自分の成長にもつながっていると思うので、すばらしいチームだと思います。
姫路や関西の街にはなじまれましたか。
姫路は、ちょっと行くと神戸に行けて、大阪も京都もすぐ行けますから、住みやすいですし、フレンドリーで明るい雰囲気の街ですね。姫路で買物すると店員さんと友達になっちゃいますもん(笑)。
あと、私は歴史的建築物が大好きなのですが、関西にはそういうものも結構多いので、その点も気に入っています。
関西のノリも合うというか、私、ツッコミ待ちなところがあるので、ツッコんでくれる人が多いなと思います(笑)。
さて、ヴィクトリーナ姫路の試合を拝見すると、野中選手の存在感が攻守において際立っていると思います。とはいえ、チームスポーツですから1人では勝てない中で、チームがどこかうまくいっていないときに意識されていることは何かありますか。
これは決して思い上がりではなくて、自分のパフォーマンスがいいときと悪いときでチームの勝敗を左右しているなというのは自分ながらに感じています。というのも、私がディフェンスだけをやったり、オフェンスだけをやっているんだったらまだしも、私がディフェンスを多く担うので、そこで崩れてしまうと周りの選手もうまく生かせないし、私のオフェンスが通らないときもチームが波に乗れないということを自分でも感じているので、毎試合、毎日の練習でもすごくプレッシャーを感じながらやっています。
それぐらい自分がこのチームで影響力がある存在になれてきているということは自信を持っていい部分でもあると思うので、自分にプレッシャーをかけ過ぎないようにはしていますが、そういう強い気持ちでやりたいなと思っています。
逆に自分が駄目だったときも、このチームは助けてくれる選手がたくさんいて、チームが勝つために全員が全力を尽くしています。私ももちろん悔しくて素直に喜べないときもありますが、それは自分に対してのすごく悔しい気持ちであって、ほかの誰かが出たら嫌だとかいう気持ちではないです。日頃のみんなの取組を見ているからこそ、みんなをリスペクトしています。
それぞれがリスペクトし合うことができて、私が駄目でもほかの選手が出て勝てるこのチームを誇りに思いますし、自分ももっと信頼してもらえるように取り組まなきゃなと毎日思います。
本当にすばらしいですね。さて、ポジション上、野中選手は後衛にいる場面が多いと思います。その点はご自身でどう感じておられますか。以前、オポジットをされていたこともあって、もっと前に行きたいというお気持ちも持たれていますか。
「あれ?今日全然飛んでないな、全然スパイクを打ってないな」という試合も結構あって、それは自分のサーブで相手を崩せていたり、自分のディフェンスが安定しているからこそ、前の選手が気持ちよくできている証拠でもあると思います。
心配性で、早く1点決めないとうずうずしちゃうので(笑)、早く打ちたいなという気持ちもありつつ、自分が後ろにいること自体はチームとしてはいいことだと思っています。
やはり、野中選手のポジションは花形というか、攻守全般に関わることができて、やりがいのあるポジションだなとお見受けします。
ヴィクトリーナ姫路もアウトサイドが中心のチームですし、確かにぱっと見、一番目立ちやすいポジションだとは思いますが、その分、駄目だったときも目立ちやすいと思うので、責任はすごく感じています。
うまくいかないときに気持ちや感情をコントロールするには訓練あるのみ
お話を伺っていると、野中選手はすごくプロ意識がおありで、すごくしっかりされていて、真面目さと挑戦される気持ちのバランスがすごくいいなと思うのですが、日々の練習で疲れることや壁に当たることもないわけではないと思います。そういうときはどうやって気持ちを切り替えられていますか。
もう毎日壁ですよ。私は結構マイナス思考というかネガティブで、自分に自信がないんです。結果は昨年よりもよくなっているし、端から見たら十分やってるよと言ってくれる人もたくさんいるんですが、それでもどこか自信がない。完璧主義なところもあって、何か1個でもできなかったり、1個のミスでも引きずりがちです。でも、そういうときに誰かと比べるとか誰かの評価を気にするのではなくて、自分の成長にしっかり目を向けることは意識して訓練するようにしています。何かうまくいかなかったときに、何が駄目で今のミスにつながったのか、今のは自分はよかったけれども連携のミスだったのか、ちゃんと冷静に客観的に分析することが、落ち込んだり壁に当たったときでも、モチベーションやパフォーマンスを上げるために必要なことだと思っています。
そして、頭では分かっていても、リアルタイムでまた同じような状況、自分にとって苦しいような状況が来たときに、実際にそれを行動に移せるかというのは訓練しかないと思います。私は喜怒哀楽がちゃんとあるタイプで、ちゃんと感情が表にも出ます。ポジティブな感情が出るときは、チームにとってもいいエネルギーになると思いますが、そうじゃないときのコントロールもふだんから訓練していくことしかないと思います。例えばあの人は大人っぽく見えるなとか静かな人だなと思っていても、多分いろいろな訓練を経て感情のコントロールをしている人もいると思うんです。私は神経質だし、感情の起伏もすごくあるので、それは訓練していくしかないと思っています。
自分を客観的に見る中で自分の成長を肯定していくということでしょうね。
そうですね。あとは、選抜されるような世界にいるので人の評価ありきな場所だけれども、人に褒められたからオーケー、人に駄目と言われたから駄目じゃなくて、あくまでも基準を自分の中に持っておくことがすごく大事なことだと思います。頭では分かっていても、そういう基準を自分のものにするにはやっぱり訓練が必要です。
姫路でバレーボールを浸透させるために
姫路市内では、至るところでヴィクトリーナ姫路の広告を見かけますし、神姫バスではヴィクトリーナ姫路の選手がアナウンスもされていました。街にチームが根付いているなと思うのですが、野中選手ご自身が、姫路でバレーを浸透させるために意識されていることや、その魅力を伝えるために工夫されていることはございますか。
私はここに来てまだ1年も経っていませんが、それでも地域に根付いているチームだなということはすごく感じています。例えばお店で店員さんとお話ししても、ヴィクトリーナ姫路を知らないという人はあまりいなくて、名前を知ってくださっているだけでも大きいと思うので、そういった意味では街にすごく浸透しているチームだと思います。今年の10月には新アリーナもできて、たくさんの方に入っていただきたいので、私もメディアの仕事には誠実に対応していきたいと思っています。スポーツをやっている人間としてこうやって生きていけるのは、応援してくださる方たちがいてこそのことだと思うので、共存ではないですが、自分たちが頑張ることで地域が活気づけばいいなと思いますし、それが私たちが地域と密着してやっている意義だと思うので、姫路がバレーボールの街になるぐらい、活動できることはしていきたいと思っています。
スポーツチームにおいてやっぱり地域密着って大事ですよね。
そうですね。サポーターが多ければ多いほど勝った時の喜びも大きいですし、地域が活気づくかなと思います。
野中選手は、SNSでも積極的に発信をされていますが、SNSでの広報活動は結構得意なほうなのですか。
いえ、自分の投稿にいろいろ言われてしまうかもしれないことが得意なタイプではないのでSNSは得意ではなかったんですが、最近はそういうこともあまり気にならないというか、何なら注目してくださる方が増えれば増えるほどいいことだと思うので、そういった意味では自分ができることは頑張りたいなという気持ちです。
SNSで特に注意されていることはございますか。
例えば試合に負けた後の投稿もそうですし、投稿の時間帯も割と気にします。夜中の12時とか1時に投稿すると「あれ?」と思われる方もいるかと思うので。
2026年10月に開業予定の新アリーナ(大和工業アリーナ姫路)と今後のチームのビジョン
今年10月には新しいアリーナが開業します。今後どのようなチームにしていきたいとか、どのようなファン層に来ていただきたいなどは…これはご同席いただいている広報の堀池様に伺ったほうがよいでしょうか。
はい。今は40代から60代の男性ファンが多いので、ファミリー層を増やしていきたいと思います。小中学生の子たちへのアプローチは積極的にここ2~3年ぐらいはしています。他方で、パートナー(スポンサー)は合わせて400社ぐらいありますが、ここへのアプローチについては全社にはできていなかったので、今年10月に開業する大和工業アリーナ姫路は5000人収容ですから、キャパシティの利点を生かして更に集客に力を入れていこうと思っています。
日本を代表する選手として、日本代表での未来とSVリーグを牽引する責任
野中選手は2025年4月に初めて日本代表選手に選出されましたが、その時のご心境を教えていただけますか。
選ばれるかな、選ばれないかなという半々ぐらいの気持ちがありましたが、選手としてやっているからには目指したい場所なので、初めて日本代表に呼んでいただいてうれしかったです。
でも、私はまずヴィクトリーナ姫路の選手ですし、SVリーガー、バレーボール選手として、ヴィクトリーナ姫路に来たことで今すごく充実しているので、今は日本代表が全てという感じではないですね。
バレーボールの魅力を広めることも私の役割の1つなのかなとすごく感じています。例えば、バスケ、サッカー、野球といったスポーツは、日本代表戦もそうですが、リーグ戦自体がすごく人気で、私たちがよく知っている選手が日本代表選手であるとも限らないと思います。
私はSVリーグもそういう身近な存在になっていけばいいなと思いますし、そういうリーグになっていけば、今後ますます発展していくんじゃないかなと思います。
SVリーグのオールスター戦を観戦しましたが、あの雰囲気はなかなかないですよね。アメリカのスポーツかなというぐらいエンターテインメント性に溢れていて、バレーボールを知らない人でも楽しく観戦できるんじゃないかなと思いましたが、そういうことですよね。
そうですね。コアなファンの方たちは勝敗だったり、このプレーがいい悪いが分かるので、そういうふうに応援してくださる方もたくさんいて、それもすばらしいことだと思います。
一方で、例えば私がバスケや野球を見に行ったときに何が楽しいかというと、ルールに詳しくないところもあるけれども、雰囲気が楽しいんですね。そういったエンターテインメントの世界観を創るのは集客をするに当たってすごく大切で、でも、そうするにはきっと膨大な資金がかかると思います。だからこそたくさんの人に来てもらって、リピーターを増やして何回も来てもらえるようにするために、私たちが勝つことが重要だと思いますし、いろいろな面での取組を続けることも大事だと思います。
将来像やセカンドキャリアについて
野中選手は、将来像やセカンドキャリアについて何か描いておられるものはございますか。
もっと若かった時のほうが夢や目標をいろいろ描いていたように思いますが、今は今に必死過ぎて、逆に昔より描きにくくなっています。けれども、それは現実を見られるようになってきたからでもあると思います。こうなりたいとかこの仕事を絶対するというものは今は明確にはありませんが、私はバレーボールが本当に大好きだし、バレーボールがない生活は多分あまり向いていないと思うので、引退してからも自分が持っている知識を生かして、指導者やいろいろな立場で積極的に関わっていきたい気持ちでいます。そのためにも今頑張ることが何より大事です。
弁護士に対するイメージ・メッセージ
最後に、最近は、スポーツ法の分野が注目を浴びていて、大阪弁護士会にはスポーツ・エンターテインメント法実務研究会があったり、エージェントに弁護士をつけられるスポーツ選手の方もおられますが、弁護士に対するイメージやメッセージがあれば教えていただけますか。
現実の世界で弁護士の方と関わることがないので、私の中では弁護士というとドラマ、テレビの中での世界観しか知らないですが、頭のいい人たちなんだなというぐらいの印象しかなくて…。だから、まさかスポーツとも意外と接点があるとは思わなかったです。
貴重なご意見をありがとうございました。我々ももっと広報活動を頑張りたいと思います。本日は練習後にもかかわらず、長いお時間ありがとうございました。
ありがとうございました。
インタビュアー:豊島健司
松田七海